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Rosa8719の今日もご機嫌

2012-01-31

監察医の涙〜上野正彦〜

乳がんになってから、“人の死”についてよく考えるようになった。以前より“死”が自分の近くにあるように感じる。(もしかしたら自分で思っていたより、命短いかも知れないし。)なんてことがいつも心の片隅にある。
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監察医の上野正彦氏といえば、テレビのワイドショーなどでお馴染みの先生で、著書「死体は語る」は大ベストセラーになった。以前から読みたいとずっと思っていて、今回ようやくそのタイミングに恵まれた。

上野氏は医学部を卒業し国家試験に合格して、さて何科の医師になろうか?と思った時に非常に悩んだそうだ。父親は北海道の無医村地区で何でも診ていたなんでも屋。貧しい人から無理に診療代を取るようなことはせず、「医者は金儲けではない」というのが口癖だったそうだ。

人間にとって死とは何なのか、死をつきつめていけば、生きるとはどういうことなのかがわかるのではないか。そう考えて、二、三年死の医学である法医学をやろうと思い、大学の法医学教室に入ったそうだ。そこで監察医務院に入り監察医となった。

生きている人が喋ることには嘘があるが、死体は嘘をつかない。死体を診ているうちに、「なぜ死んでここにいるのか」「死ぬ間際はどんなだったか」を、死体が語り始める。嘘のない真実の世界なのだ。

この本で紹介されるエピソードは、涙なしには読めないものばかりで、切なかった。

ある交通事故の現場で、顔がつぶれて無残な姿になった子供を抱いて泣き叫ぶ母親の姿。子供に先立たれた母親の嘆きには壮絶な母性を感じることが多く、耐え難く胸がいっぱいになるそうだ。

自殺、心中、虐待・・・。死体を診ることで浮かび上がってくる壮絶なドラマ。子供がらみの話がやはり切ない。母親目線で読んでしまって、いたたまれない気分になる。夫の浮気を疑って精神的に不安定になって・・・というものも多かった。

私が一番意外だったのは、老人の自殺について書かれた、「お世話になりました」というタイトルの文章である。

1人暮らしの老人と、3世代同居の老人と、どちらが幸せであろうか?実は、1人暮らしの老人より、3世代同居の老人の方が自殺率が高いのだそうだ!同居老人の自殺率は独居老人の1.6倍。(昭和51〜54年)

老人が自殺すると、「病気を苦にして」という理由で片付けられることが多いが、あの大変な戦争を体験し、戦乱をくぐり抜けてきた老人がそんなことで自殺するのか?と上野氏は疑問に感じていたそうである。

家庭の中で冷たく疎外されていて、温かい言葉も掛けられず、孤独を感じている老人が多いのではないか?老人が自殺した家庭を訪問すると、若い夫婦のほっとした様子が見て取れることが多くて、何か淡々とした印象を受けるとのこと。

老人の遺書は立派で、冷たくされた身内に不平不満を書いている事例は少なく、「みなさん、大変お世話になりました」とだけ書かれているのだそうだ。上野氏は無念の思いを抱いて亡くなっていった老人の代弁者になろうと考えて、現役時代には思い切り書けなかったことを、辞めてから世に訴えようと思ったのだそうだ。

老後は孫たちに囲まれて楽しく心豊かに暮らしたい、というイメージは幻想なのかも。1人で暮らしている老人の方が寂しくても気楽なのかも知れない。この本を読むまで、そんなことは考えたこともなかった。

tomotantomotan 2012/01/31 11:01 これ、読みたいです。 この方の死体は語る、確か読んだことあります。 病気をしてから本当に死について考えますよね。私は御巣鷹の飛行機事故の{墜落死体}を読みました。 病気前だったら絶対に読めなかった本だと思います。 でもすごく感動しました。 命の現場、死の現場色んな物語があるんですよね。 千葉敦子さんの本も好きです。

rosa8719rosa8719 2012/01/31 11:19 さらりとした文章なのでスッと読めますが、切なくて涙が出てしまいます。
「死者の真実の叫びを届けたい」という、上野氏の思いの強さが伝わってきます。
私も、乳がんになってからです。死体についての本なども読んでみたくなったのは。病気前より関心ありますよね!
“命の尊さ”を感じるからなのかなと思います。どうしてこんなことに・・・と悔しくなるような死に方もあるわけで。男女の愛憎とか葛藤とか、いろんな背景があり、“母子心中”なども日本では多いけれど、アメリカでは理解されない概念なんですよね。
アメリカ滞在中の日本人が母子心中で亡くなり、アメリカ人の弁護士が上野氏の所に勉強に来たそうです。
そこに至る前に夫婦関係を改善する手立てはなかったのかな、と思います。
すごく感動する本ですよ!

hirohiro 2012/01/31 11:56 若かりし頃、、、「死体は語る」を読みました。同じ頃、「検死」を受けたご近所さんがいて、地方には殆ど監察医がいないことや(地元の大学病院等の医師が受け持つらしい)、大抵の場合は訓練を受けた警察官による「検視」で終わるという事を、知った覚えがあります。遺族が家族の死の本当の理由や原因を知りたくても、皆が皆知ることはできないのでしょうね。
また以前、家族が亡くなった際に、主治医から病巣の取り出し(献体)をお願いされたことがあります。希有な癌であったため、研究対象として残したい・・と。亡くなって直ぐに言われ、戸惑う暇もなく直ぐに返答しなければならず、ぼんやりとした頭で考えること自体が苦痛でした。
結局、生前の本人の意志もあり、まだ暖かい体にメスを入れました。死んでるのに血が出るんですよね、、、きれいに繕われた縫合部分から。一部の親族からは、何で献体を許可した?と叱責されたことも、今は遠い思い出みたいなものですが。
監察医からは話が外れましたが(すみません)。あのときの執刀医や病理医の方が、遺体や我々遺族に対して随分と丁寧な対応をして下さり、救われた思いも抱いたような。。。お医者さんの言動の一つ一つに一喜一憂しがちな患者としては、出会う医師次第で生も死も印象の違うものになりそうですね。
rosaさんの記事を読み、何であれ監察医のお世話になることなくフツーに逝きたいなぁ・・と、その昔(上野医師の著書を読んだ頃)感じたことを思い出した次第です。

rosa8719rosa8719 2012/01/31 21:18 hiroさんも読まれていたんですね。
ドラマでもよく取り上げられていて、「きらきらひかる」とか「ヴォイス」(だったっけ?)などよく見てました。

献体の件、昨年の11月になくなったおばの時もそんな話をされた、と父が言ってました。珍しい心臓腫瘍だったので。遺族の気持ちは同じようなものでしょうね。おじは断ったようです。

上野氏は亡くなった人と会話しているような、心が通じるような感じがするのだそうです。天職だと思っていたというのですから、すごいですよね。

奥様はがんで亡くなったのですが、最後はとても穏やかな最期だったとのこと。ちょっとほっとしました。

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