稲葉振一郎『「資本」論−取引する身体/取引される身体』

「資本」論―取引する身体/取引される身体 (ちくま新書)

「資本」論―取引する身体/取引される身体 (ちくま新書)

社会思想史の文脈を通じて「財産としての労働力=人的資本」の概念を提示し、これを現代における国家・社会の理念の軸とすべきだと論じるとともに、その未来に空想的な問題提起をした本、ということになるのでしょうか?ひとまず、「従業員が幸福でなければ、会社がいくら儲かっても意味がない」と思っている多くの人事担当者(私もそうです)、それにもかかわらず「株主の利益のためには雇用や労働条件を犠牲にすべきだ」とか、「企業は資本家の利益のために労働者を搾取するものであり、人事はその手先だ」とか、左右(右左か)双方からの批判にさらされて悲しんでいる多くの人事担当者(私もそうです)のみなさんには大いにおすすめしたい本だと思います。あなたの右の頬を打たれたら、左の頬をも向けなさい、そしてこの本を読みましょう(笑)。
さて、まことに深く広い知見と思索をふくむ本なので、評を書くことは到底私の手におえそうもありません。十分読みきれているとも思えませんから、繰り返し読むことで新しい発見もありそうです。というわけで、ここではいくつかの雑駁な感想を書いておこうと思います。

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