労務屋ブログ(旧「吐息の日々」) このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-10-30 キャリア辞典「テレワーク」(3)

「キャリアデザインマガジン」第67号のために書いたエッセイです。


「テレワーク」(3)

 現在、ワーク・ライフ・バランスをめぐる議論が活発になっているが、その充実のためにテレワークに期待される役割は、思われている以上に非常に大きいものがありそうだ。ワーク・ライフ・バランスの議論では、ともすれば労働時間の長さばかりが注目されがちだが、充実した「ライフ」を実現するための時間を十分に確保していくためには、通勤時間の存在を無視することはできないはずだからだ。まあ、行政の立場からすれば通勤は「ワーク」ではない、と言ってしまえばそれまでのことかもしれないが、働く人にとってみれば通勤はせいぜい新聞や雑誌を読むか、英会話のテープを聞くくらいの付加価値しかあるまい。そして、現実をみると、東京都の「第4回東京都市圏交通実態調査」(1999年)によると、東京23区に勤務する人の平均通勤時間は片道56分で、片道90分以上を要する人も16%にのぼるという。また、総務省「平成13年社会生活基本調査」によると、男性雇用者の平日の平均通勤時間は68分となっている。一日平均で2時間前後を通勤に費やしていたのでは、労働時間を多少短縮したところで「ライフ」が充実するかどうかは心許ない。となると、通勤時間を解消、もしくは大幅に短縮できるテレワークへの期待は大きくならざるを得ない。本来、通勤時間の短縮に対しては都市政策や交通政策、さらには国土政策なども含めた総合的な対策の検討が望まれるところだが、現在の行政の状況を考えれば、テレワークに対してむしろ過大なくらいの期待がかからざるを得ないのが実情ではあるまいか。

 もともとワーク・ライフ・バランスには時間の問題と空間の問題があるのであり、この両者にはトレードオフがある。特に育児や介護、あるいは家事一般と仕事の両立という面でも、テレワーク、とりわけ在宅勤務の効果には大きいものがあり、空間の問題で対処すれば必ずしも労働時間を犠牲にする必要のない場面は多数考えられるだろう。たとえば、在宅勤務であれば子どもから目をはなさずに仕事をすることが可能だし、乳児が昼寝している間に集中して働き、目をさましたらすぐに授乳する、といったこともできるだろう。もちろん、生産性がある程度低下することは避けられないだろうし、短期間の納期を厳守することにも無理はあるに違いないだろうが、業務量やスケジュールにある程度の柔軟性を持たせたり、情報通信技術の活用で支援したりすることで、在宅であってもかなり付加価値の高い仕事も可能となるのではないか。さらに、通勤時間の短縮の程度によっては、通勤時間まで含めた生産性はむしろ向上する可能性もあるかもしれない。

 そういう意味では、この9月に発表された経済財政諮問会議の労働市場改革専門委員会の第2次報告が、テレワークを外国人労働者とともに取り上げた上で「ワーク・ライフ・バランス実現を図る手段としての雇用者の在宅勤務の重要性」を訴えたことは、まことに時宜にかなったことといえよう。課題は多いようだが、効果の大きさを考えると前進が期待される。

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