労務屋ブログ(旧「吐息の日々」) このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-08-29 日本政治の末期症状

今朝の毎日新聞から。

 自民、公明両党は28日、現行は一律25%の時間外労働の賃金割増率について、月に60時間を超える部分は50%とすることなどで大筋合意した。長時間労働を強いる企業に負担増を求め、労働時間短縮を図るのが狙いで、日本経団連も容認する構え。与党は野党とも協議したうえで、国会で継続審議となっている労働基準法改正案を超党派の議員立法で修正、9月12日召集予定の臨時国会で成立させる方針だ。

 労基法改正をめぐる調整では、賃金の割増率50%の基準が焦点になってきた。政府は07年の通常国会に「月に80時間を超えた部分」などとする改正案を提出。だが、月80時間超という基準が「月80時間を超える残業が3カ月続く」と定めた過労死の認定基準と同じであるため与野党から批判が続出。与党は今年6月、政府案の修正では合意していた。

 しかし、具体的な基準については「月60時間超」を主張する公明党に対し、経団連が反発したほか、連合はより厳しい規制を求めた。このため、自民党の川崎二郎元厚生労働相らが労使双方と水面下の調整を進め、月60時間超で合意する見通しがついた。施行は来年10月となる方向だ。

(平成20年8月29日付毎日新聞朝刊から)

この国の政治も末期症状という感じがしてきましたね。理屈もなにもなくて、ただただ感覚論で選挙民に受けがよさそうな(そして財源不要の)法改正をやろう、しかも与野党がこぞってそれをやろうというのですから。まあ、こうしてしまったのは多分ここ2回の国政選挙における選挙民の行動なのですから、それが民意だといえば民意なのでしょうが…。

で、これまでも何度も書いてきましたが、時間外労働月80時間が過労死の基準だからそれ以上時間外労働をさせるのはけしからん、という一方で、80時間を超えたら割増率を50%にしますと。ということは、50%割増の賃金を時間割で払えば、80時間以上残業させてもいいですよ、ということになってしまうのではないですか。80時間を60時間に変えても同じこと、カネさえ払えばたくさん残業させてもいいですよと、これはそういう法案ですよね。まあ、おカネのほしい労働者は(不適切な表現ですがご容赦を)過労死覚悟で?これまで以上に残業をしようとするかもしれず、そういう人にはうれしい法改正かもしれませんが…。

長時間労働による健康被害を心配するのであれば、すでに安衛法に規定があるように、時間外労働が一定以上になったら医学的なフォロー(産業医による面談指導など)を実施することが効果的であり、現状不足だというのであれば、この規定を強化するのが正論でしょう。どうしても長時間労働をやめさせたいというのであれば、カネで時間を買うような制度ではなく、時間外労働そのものの上限規制が筋の通った施策でしょう(それがいいかどうかは別として)。月60時間以上の時間外労働を禁止する、という法案を作れば、月70時間分の残業代を生活に織り込んでいる人は困るでしょうが…。

しかも、中小企業には猶予期間を置くというのですから、実際に割増賃金率引き上げの恩恵?を受ける人は少数にとどまりそうで、果たしてどれほどの実効性があるやら。そもそも中小企業には適用を猶予するということ自体の正当性も疑わしいわけですが…。

結局のところ、長時間労働はなくなる、割増率引き上げで収入は増える、そして中小企業は困らないと、いいことづくめですよと、バラ色のウソを振りまいて国民を欺こうというわけですな。そうすれば次の選挙で選挙民は自分たちに投票するであろうと。まあ、割増率が上がるのは労働条件の改善には違いないので、国民にとっては悪くはないし、多少なりともけっこうな話だから、理屈なんかあってなくてもいいよ、ということかもしれません。企業にしてみれば、人件費は実際にはさほどではなくても、就業規則の改定や賃金計算システムの変更など、けっこうな手間がかかるわけですが、まあそれも大企業なら対応する余力があるだろうということでしょうか。そう考えると、選挙目当ての人気取りとしてはかなりよく考えられているのかもしれません。

願わくば、「給油」のような重要法案や、事務所費やら矢野氏やら(実際、こっちのほうがよほど選挙への影響が大きいと思うんですけどね)の問題に明け暮れて、労基法改正のほうは成立しないままに衆院解散、廃案…というシナリオになってほしいものです。労働時間法制については、割増率や時間外労働規制の在り方なども含め、それなりに時間をかけてあらためて総合的に検討してみる必要があるのではないでしょうか。

aiaisun8aiaisun8 2009/01/10 16:34 2008-8-29 基調は概ねそういうことなんですが。自身の体験からいうともう少し複雑です。小さな会社では役員として処遇されていましたが、上場会社の現場の職制でいえば非組合員にはとてもとてもなれないレベルの下級管理監督職に相当します。労働時間や時間外労働扱いにすべきとおもいつつも立場上一切なし。16時から深夜の現場監督進捗状況と調整手配、安全管理、客先への挨拶(営業業務)・・・朝が来てその日のまとめをやって帰宅して床に就くのは11時。起きて出かけるまでの時間は5時間、真夏のあるとき10日間これがつづきました。作業員(正規とか非正規関係なく)には割り増し賃金対象として計算しますが、総監督の方は一切割増なし。月給30万のみ。一般作業員の方が60〜80万円という実態もあるのですがなかなかそういうことは口外しないというのがこの世界の「おきて」です。杓子定規には世の中行かないです。それらを正すのが世の中の発展というものなのでしょうが。最低賃金が法律にあっても、労働時間が定められたり、それらの恩恵に浴するようになるには労働組合のある大企業に採用されて働くしかないのが現実です。
 首切りの不条理に関しては、昔になりますが、いやがらせをうけても返事(退職意思表明退職届)をするなといっても本人はいたたまれずに泣いて辞めて行きました。
 炭労の合理化当時のような。世の中そういうもんなんですか。

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