吐息の日々 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-09-27

[]もはや日本の最賃は低くない…。

東京新聞ニュースから。現在、各都道府県の東京都の最低賃金が30円引き上げられて821円となるとのことです。神奈川県の29円を1円上回る上げ幅となりました。

 厚生労働省東京労働局は、都内の最低賃金を三十円引き上げ八百二十一円(時間額)にすることを決めた。来月二十四日から実施される。

 過去十年間で三十円の引き上げは最大。地域別で、最低賃金は神奈川八百十八円、埼玉七百五十円、千葉七百四十四円などとなり、それぞれ来月中に発効する予定。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20100926/CK2010092602000026.html

東京労働局のリリースはここにあります。

http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2010/20100823-chingin/20100823-chingin.pdf

厚生労働省のサイトをみると、本日現在でまだ17県で決着していないようで、中央最低賃金審議会の議論と同様、かなりの難航ぶりのようです。都道府県の最低賃金審議会は労使の合意ができないままに最後は多数決、という事態も起きるようで、聞くところによると昨年でも16の審議会は使用者代表委員が全員反対する中、公益代表と労働者代表の賛成多数で可決されたとのこと。東京ではおそらく審議会会長の安西先生が使用者代表を説得されたのだろうと想像するわけですが、他の審議会では今年もすでに同様の事態が多発しているそうです(聞いた話なので根拠なし。ご存知の方、ご教示ください)。

  • (10月15日追記)東京も、安西先生のお力をもってしても使用者全員反対の多数決だったとのことです。お詫びの上訂正いたします。

もちろん生産性向上などの結果として最低賃金が上がることは好ましいことですし、就労促進の観点から最低賃金との逆転は解消されることが望ましいとの考え方もよくわかるものです。ただ、今年これだけ難航するのは、要するに雇用戦略対話で合意した目標である800円、1,000円という数字が「名目3%・実質2%成長」とか、中小企業の生産性向上支援策の実施といった前提が満たされないままに一人歩きしてしまっている点が問題なのでしょう。

それはそれとしても、この金額をみると本当に大丈夫かという印象は禁じえないわけで、いやなにが心配かというと円高なんですね。

労働政策研究・研修機構(2010)『データブック国際労働比較2010』に掲載されている2009年の各国の最低賃金(p.192、http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2010/05/p192_t5-19.pdf)をみると、アメリカは7.25ドル、イギリスが5.80ポンド、フランスが8.82ユーロ、カナダは7.75〜10.00カナダドルなどという数字が並んでいます。日本は全国平均の713円ですね。

これを試しに、この9月の円の最高値で円換算してみると…

最低賃金額円換算換算レート記録日
アメリカ7.25ドル600円1ドル=82.8円2010/9/15
イギリス5.80ポンド739円1ポンド=127.4円2010/9/14
フランス8.82ユーロ936円1ユーロ=106.1円2010/9/9
カナダ10.00カナダドル806円1カナダドル=80.6円2010/9/14
日本713円713円  

これをみると、これまで広く主張されてきた「日本の最低賃金は国際比較上著しく低い」という批判が当たらなくなっていることがわかります。もちろん、これは為替レートの変動による変化であって、国際比較においても購買力平価/物価水準や国内での相対的な位置(平均時間あたり賃金額の何%かとか)などを考慮する必要があるわけですが、しかし大丈夫だろうかという懸念を持つことも理解していただけるのではないでしょうか。実際、このレートだと日本の最賃はアメリカよりかなり高いですし、英国も21歳以下の若年層については一段低い最賃が適用される(たとえば18-22歳は4.83ポンド=615円など)ので平均すればほとんど差はないでしょう。フランスはさすがに高いなあと思う一方で、でもいずれ1,000円にまで上げるって言ってるのはどこの国だっけなあと思い出してしまうわけです。カナダの806円は州別最賃の最高値なので、参照するとしたら日本の首都圏でしょうか(ちなみに2009年の首都圏4県の最低賃金額は¥728-¥791で、これが今回大幅に引き上げられるわけですね)。

ということで、まあ最賃引き上げが雇用に与える影響には諸説あるとはいえ、この状況で最賃を上げれば雇用が失われることは明白なように思われます。というか、これを放置すれば最賃を上げても上げなくても雇用は失われるでしょう。最賃引き上げも慎重に考えてほしいわけですが、雇用が大事だというならなによりこの円高をなんとかしろということになるのではないかなあと考えるわけです。

[]牛越博文『これだけは知っておきたいドラッカー』

牛越博文先生から『これだけは知っておきたいドラッカー』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

これだけは知っておきたいドラッカー

これだけは知っておきたいドラッカー

著者はドラッカーゆかりの地であるウィーン、フランクフルトの双方に駐在し、いわば「本場」でドラッカーの著作に学んだといいます。膨大で多岐にわたるドラッカーの業績から、その「核心」ともいうべき議論を抽出して解説しており、たいへんわかりやすい入門書になっているように思われます。

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