吐息の日々 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-11-18

[]就活短縮、大学「賛成」学生「不安」

日本貿易会が採用活動の「適正化」を求めている件についてはこのブログでも以前に取り上げましたが、同会はきのう経団連に提言する見直し案を記者発表したそうです。今朝の日経から。

…貿易会の案では、現在大学3年生の10月に始めている会社説明会など広報活動を翌年の2〜3月に、大学4年生の4月ごろ始める採用試験も同8月以降に遅らせる。学生の就職活動期間を短くすることで、年々減っている海外留学生の増加や、学業に専念できる環境を整備する狙いがある。

 企業の採用活動の指針となっている経団連の「倫理憲章」を見直すことで、経済界の足並みがそろうよう働きかける。経団連は「今後どういう仕組みでやっていくのか議論していく」(幹部)と話すが実現は微妙だ。

 商社と並ぶ人気業種である銀行界は、採用活動の開始時期見直し案について様子見の姿勢だ。…大学3年の早い時期に内々定を出す外資系金融機関など、外資系企業は倫理憲章の対象外。…貿易会は経済界全体の賛同が得られない場合は導入を見合わせる方針だ。

 貿易会はまた、卒業後3年以内で就職していない人材も新卒枠として採用対象とすることも決めた。対象を広げ幅広い人材を確保する狙い。既卒者の就職浪人が減る一方で、新卒者の採用枠が減る側面もあり、今後も議論となりそうだ。

(平成22年11月17日付日本経済新聞朝刊から)

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819696E3E5E2EB948DE3E5E3E3E0E2E3E29C9CEAE2E2E2;at=DGXZZO0195164008122009000000

これについては過去のエントリ(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20100924#p2)で書きましたが、採用力の強い大手が多数同調することで効果が大きくなることは間違いなさそうなので、経団連に要請するというのはたしかに合理的ではあります。ただまあ、歯切れが悪くないかといえばそうでもなく、総合商社は経団連各社の中でも最強レベルの採用力を有していますので、ヨソがどうあれ自分たちはやるんだという意気込みを見せてもよろしいのではないかとも思うわけです。経団連(に限りませんが)各社が4月、5月に先行して内定を出した学生さんたちを総合商社が8月に集めて選考し、内定した人には他社の内定を辞退させますよ、それでもいいですね、と(言葉は悪いですが)開き直ってみてもいいのではないかと。それで仮にある年次の採用が不十分な結果に終わっても、総合商社は中途採用市場での採用力も強力でしょうから、経営に即座に大きな影響はないでしょう。まあ、さすがに踏み切って一年でやめるわけにもいかないでしょうから、やはり怖いことは怖いのか…。

また、総合商社さんの思惑として、学生さんには大学4年夏までは勉強に集中してほしい、できれば海外留学とかしてほしい、というのがあるらしいので、となると他社が早期から採用活動を行うと海外留学ができなくなってしまうから困る、というのはあるかもしれません。もちろん海外留学経験者優遇、というメッセージを出して募集すれば、それをめざして海外留学する学生は出てくるでしょう。とはいえ、経験者は必ず採用しますとかいう約束は当然できないに決まっていますので、となると学生さんとしてみれば商社に就職するつもりで海外留学したものの不合格でした、となった段階で他社の採用は大方終わってましたということになりかねず、さすがにそんな冒険はできないという学生さんが多いかもしれません。ただ、この理屈では別にわが社は海外留学の経験なんて求めないよ、という企業を説得することは困難で、それほど海外留学経験者が必要なら採用してから留学させたら、という話になるでしょう。実際、そうしている企業も多いわけですし。

さてそれはそれとして、この記事で面白かったのは大学と学生さんの反応です。

 「大賛成だ」。日本貿易会が採用開始時期を遅らせる提言を決めたことに対し、大学の就職担当者からは歓迎の声があがった。就職難への不安から、学生が学業よりも就職活動を優先する傾向を強めているからだ。見直しが実現すれば、今より学業に身が入るとの意見が大勢を占める。

 来春卒業予定の大学生の就職内定率(10月1日時点)は過去最低の57.6%。「就職氷河期の再来」といわれるなかで、大学生からは「今の方が就活にじっくり取り組めるので変えてほしくない」「選考期間が短縮されると就職のチャンスが少なくなるのでは」と不安視する声も出ている。

(平成22年11月17日付日本経済新聞朝刊から)

http://www.nikkei.com/news/category/related-article/g=96958A9C93819696E3E5E296E28DE3E5E3E3E0E2E3E29C9CEAE2E2E2;at=DGXZZO0195164008122009000000

大学が「大賛成」というのはよくわかる話で、今時分だと大学の就職部・キャリアセンターなどは内定の得られない4年生と就活をスタートさせた3年生の指導に忙殺されているはずで、とりわけ就職情勢の厳しい昨今、そのご苦労は想像に余りあります。3年の春休みから初めて4年の正月までには終わるくらいの年単位の業務になれば負担も相当軽減されるでしょう。

いっぽうで、学生さんたちの不安の声も切実なように思われます。現状では外資系などが3年生のうちに内定を出し、経団連各社など大手は4年生の4〜5月までにほぼ大方の選考を終わり、中堅各社中心にシフトしていく…というスケジュール感になっているわけですが、経団連各社が選考を開始した4月から6か月経過した10月1日時点での内定率は記事にもあるように57.6%にとどまっています。それでもまあ残り6か月ありますので、方針・志望を見直しながら就活を続けるなり、留年・進学して就職情勢の改善を待つなり、大変ではありますがまだまだ取り組む時間はあります。

これが8月開始となると、まあ9月中旬くらいには大手があらかた終わってそこから中堅メインに移り、もちろん現状よりペースは上がるのでしょうが、仮に同一ペースで進むとすると2月1日時点でこの数字にとどまるということになります。学生さんが不安に感じるのも当然と申せましょう。

となると、現実問題としては、多くの大学では学生さんに対して「大手はあきらめて、8月から中堅を回らないと卒業までに内定決まらないよ」という指導をせざるを得なくなってくるのではないでしょうか(特に現在のような就職情勢が厳しい時期には)。しかし、学生さんやご両親などが大手就職を希望するのも無理からぬ話でしょう。そこで内定を得られないまま卒業した既卒者も3年までは新卒扱い、という話になるのでしょうが、しかし記事にもあるように「既卒者の就職浪人が減る一方で、新卒者の採用枠が減る」わけです。これに関しても過去のエントリで書いてきました(直近ではhttp://d.hatena.ne.jp/roumuya/20101115#p1)ので繰り返しませんが、あまり大きな効果が期待できるものではなさそうです。

たしかに現状の採用・就職活動は大学・学生・企業のそれぞれにとってさまざまな問題があります。貿易会のいう「3年春休みに企業研究・4年夏休みに就活」というのはきれいな絵であって一つの目指すべき姿かなとも思うわけで、これまた過去書いてきたように一度見直してみる時期ではないかとも思います。いっぽう、大学も学生も企業も多様ですし、それぞれさまざまな影響があるでしょうから、十分な検討の上にそれなりに歩調を合わせ、状況に応じて柔軟に見直しつつ取り組むことが必要と思われます。

やまだやまだ 2010/11/19 05:15 大卒の就職率が60%というのは大学や学部の新設を認めすぎ、ニーズもないのに大量の大学生を世に大量生産してきた文部行政の責任です。
でもここで冷静に考えて欲しいのは、Aさんという大学生が株式会社Bという会社の採用試験に落ちたり通ったりするのはそもそもAさんの責任だということです。マクロの問題とミクロの問題は異なります。ダメな学生ほど自分のことを棚に上げてマクロの問題にすり替えます。
そもそも企業は生き残りに必死です。民間企業はボランティアでもケア施設でもありません。本当に欲しい人材しか採用しませんし、できないのです。実社会、とりわけ大都会で生きるということは競争です。今、企業は生き残り競争に必死です。企業は今?正社員?その他(派遣、AR)を明確に使い分けています。?は給料が高く、生活が安定しています。?は薄給で使い捨てです。時間的な無理が頼めて、成績がついてまわる成果主義的な仕事のみ?社員に、そういうことが無理な仕事は?非正規雇用にさせています。まず、?を選ぶか?を選ぶか、が今の就活の入り口部分なんです。そこをわかって無い学生が漫然とやりたい仕事で正社員...といって就活するとまず落ちます。馬鹿な学生がやりたい仕事で正社員にしろといいますがそもそもありえないのです。
今の大学生の選択肢は以下の3つのいずれかです。
(1)都会で正社員になって死に物狂いで働き、安定した生活をする、(2)都会で非正規雇用で年収200万以下の貧乏生活をしながら時間にゆとりのある生活をする。ただし老後はまともに年金も医療も受けられない (3)地方で若手後継者の足りない農林水産業に従事する。
やりたい仕事で正社員で休みもあって給料もよくて都会生活をおくれて…などということはありえないのです。(1)〜(3)のいずれかだということを親、大学の就職指導担当教員などが厳しく教えないから結果的にみんな自動的に(2)になっていくのです。

労務屋@保守おやじ労務屋@保守おやじ 2011/01/17 12:30 1月17日のエントリhttp://d.hatena.ne.jp/roumuya/20110117#p2でコメントさせていただきました。よろしければごらんください。

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