新聞各紙派遣法社説読み較べ

久々の企画です(笑)。労働者派遣法改正法案が成立ということで、主要各紙が一斉に社説で取り上げています。それぞれにカラーが出ていてなかなか興味深いものがありますので読み較べてみたいと思います。
まずは日経新聞から。

 多様な働き方を広げて成長戦略の一つにしようという安倍政権の方針にも逆行するのではないか。与党などの賛成多数で成立した改正労働者派遣法についてだ。
 派遣で働く人の立場にたつと、続けたい仕事でも3年たつと変わらなくてはならない場合が出てくる。改正法の大きな問題である。
 かねて私たちはこの問題を指摘してきたが、改善されず成立したのは残念だ。働き方の選択肢を広げるために、今後も労働者派遣法は見直していく必要がある。
 今回の改正内容に評価すべき点はある。派遣で働く人たちの職業能力の向上を後押しすることだ。派遣会社に対し、派遣社員への計画的な教育訓練や、希望があれば能力開発の相談に乗るなどのキャリア形成支援を義務づけた。派遣で働く人の生産性の向上を通じた待遇改善が期待できるだろう。
 しかし、ソフト開発や研究開発、通訳など期限を切らずに派遣で働けるいわゆる「専門26業務」の区分が廃止され、これらの仕事に就いていた人は派遣会社の正社員にならないと、同じ職場で働ける期間が3年までに制限されることになった。
 派遣制度をわかりやすくしようと業務区分をなくし、同じ職場で働ける期間を一律に最長3年としたわけだが、派遣で働く人の雇用に悪影響が及んでは本末転倒だ。
 同じ仕事を続けながら技能を高めたいと思う人は少なくない。IT(情報技術)関連など成長分野の企業が専門性を持った人材を確保するうえでも、派遣制度は本来役立つ。そうした働く人と企業双方のニーズに応えるため、労働者派遣制度の重ねての見直しが求められる。
 今回の改正では、期間が30日以内の短期派遣で働くことを原則禁止のままとしたことも問題だ。
 この禁止規定は2012年の派遣法改正で入った。だが、短期でもいいから派遣で働いて収入を得たいと思う人もいるだろう。労働力不足のなか、企業にとっても短期派遣は人を確保する手立てになる。解禁を考えるべきだ。
 仕事が同じなら正社員と非正規社員の賃金を同じにする施策を進めるとした「同一労働同一賃金推進法」も成立した。
 しかし、正社員の職務の範囲が曖昧なままでは、「同一賃金」の実現は難しい。国が先走って施策を講じても混乱するだけだろう。この法律も見直しが必要になる。
平成27年9月13日付日本経済新聞社説)

大筋は同感なのですが気になる点もなくはなく、私は派遣については当初から(このブログでもかなり早い段階で書いていますhttp://d.hatena.ne.jp/roumuya/20070720)登録型から常用型へのシフトを政策的に誘導することが望ましいと考えていますので、「「専門26業務」の区分が廃止され、これらの仕事に就いていた人は派遣会社の正社員にならないと、同じ職場で働ける期間が3年までに制限される」ことについては日経新聞のように否定的ではありません。「同じ仕事を続けながら技能を高めたいと思う人は少なくない」ことは事実だろうと思いますが、いっぽうで派遣先には派遣労働者の技能向上を促すインセンティブは(少なくとも派遣先の正社員に較べれば)乏しいので、同じ仕事を続けていても技能が伸びにくいという実態もあるのではないかと思います。となると、派遣労働者の技能向上のためには派遣先を変えることでより高度な業務に従事できるようにしていくことが望ましいという考え方もあるでしょう。逆にいえば「同じ仕事を続けながら技能を高め」ることができるような高度な専門性のある人であれば常用型(派遣元の正社員)にすればいいわけで、そうなると今度は派遣元にも派遣労働者の技能向上をはかるインセンティブも出てくるというわけです。
登録型に戻りますと、したがって今回改正で派遣元に求められる雇用安定措置においては、なにより「新たな就業機会(派遣先)の提供」が重要だろうと思います。これはもちろん仕事のない期間をなるべくなくしていくという趣旨もあるでしょうが、わざわざ「能力、経験等に照らして合理的なものに限る」という但し書きがついていることからは、能力向上・キャリア形成を重視していることを読み取るべきではないかと思います。考えてみれば、正社員にしても数年に一度くらいのペースで人事異動しながらキャリア形成していくわけですから、まあ3年は少し短いような気はしますが、同じ仕事を続けることがいいと一律に言うことは難しいだろうと思います。一方でもちろん能力向上やキャリア形成より慣れた仕事を続けることを望む派遣労働者もいるだろうと思いますので、そういった人たちには余計な法改正ということになるでしょうが。
もう一つ、これも繰り返し書いていますが私は今回の法改正で最重要なのは派遣業をすべて許可制して監督指導を強化することだろうと考えており、社説がこれに言及していないのはかなり不満です。雇用安定措置にしても教育訓練にしてもキャリア支援にしてもそれなりに経営体制のしっかりした派遣会社でなければできないわけで、結局は派遣業者の質保証が最大の政策的課題だろうと思うからです。したがって、改正法は「小規模事業主への暫定的な配慮措置」とか「現在の特定労働者派遣事業の許可制への移行に際しての経過措置」とか言っていますが、ここは極力厳格にやってほしいと思います。
ここのところを最初にしっかり書いているのが実は朝日です。

 改正労働者派遣法が成立した。悪質な派遣会社を排除するため、全て許可制にするなど、派遣会社への規制を強化したことが特徴で、派遣社員として働く人たちにとって、有益な点も含まれている。しかし、派遣社員の権利をどう守り、強化するか、という視点からの改正ではなかったために、積み残された課題が多い。さらなる法改正が必要だ。
 これまでは、派遣社員を受け入れられる期間が業務によって規制されていた。専門的とされる「26業務」には制限がなく、それ以外は原則1年・最長3年だった。今回の改正では、業務によって違う期間にすることをやめて、派遣可能な期間は一律「原則3年」となった。
 これまでの規制のもとでは、26業務であるかのように装ってそれ以外の仕事に就かせて期間の規制をすり抜ける不正も起きてきた。その余地がなくなる点も、評価できる点ではある。
 しかし、改正によって、労働組合などの意見を聴いたうえで人を代えれば、同じ仕事を派遣社員に任せ続けることも可能になる。この点が国会での論議の焦点となり、野党は「不安定な派遣労働を広げる」「生涯派遣で低賃金の人が増える」と反対してきた。
 そうした危惧が生じるのは、派遣社員の権利が強化されていないことに原因がある。
 確かに、派遣会社には様々な義務が課せられ、派遣社員の能力を向上させ、雇用を安定させる仕組みが改正法には盛り込まれてはいる。しかし、派遣社員の処遇を改善するには、「均等待遇原則」を明示して、法律で裏打ちする必要がある。
 派遣法と同時に成立した議員立法では、同じ価値のある労働の賃金を同じにする「同一労働・同一賃金」を進めるために調査・研究を進めることになった。こうした調査・研究を生かして、派遣社員が派遣先の企業で働く人たちと同等の待遇を求められるよう法改正をすることが、次の課題だろう。
 派遣社員が派遣先と団体交渉をする権利を法制化することも検討するべきだ。
 派遣先は「雇用主ではない」として、団交を拒むことが多く、その結果、派遣社員が低い労働条件に甘んじることにつながっていた。労働条件に大きく影響しているのは派遣先の判断だ。派遣社員の正当な主張が通る道筋を整えるべきだ。
 派遣労働者の権利を拡大することで、派遣労働の乱用を防ぐ。そうした視点で、早急に次の法改正を目指すべきだ。
平成27年9月12日付朝日新聞社説)

うーん最初はいいんですけどねえ(笑)。続けてすぐに「派遣社員の権利をどう守り、強化するか、という視点からの改正ではなかった」といわれてしまうと、まあ力は抜けますね。上でも書いたように今回の法改正の考え方は「能力向上やキャリア形成の進展を通じて派遣労働者の雇用の安定や処遇の改善をはかる」といういたって正攻法なものであると思われますが、朝日はどうやら正社員並の賃金を法律で強制しなければ権利の強化ではないとお考えのようで、まあ能天気な社会主義というところでしょうかね。もちろん現実には派遣労働者が派遣先の正社員のように辞令一枚で地球の裏側に単身赴任する(これ自体の善し悪しは別として)なんてことは起こらないわけで、働き方がまったく異なる上に10年程度のスパンでみれば仕事もまったく違っている正社員と派遣社員を比較すること自体がほとんどの場合はナンセンスでしょう(意味がある場合もあるとは思いますが)。このあたり、hamachan先生の本で顔を洗って出直してこいという感じですね。
もちろん社説のいうとおり「同じ価値のある労働の賃金を同じにする「同一労働・同一賃金」を進めるために調査・研究を進め」ることはすでに法律になっていますし、改正派遣法の附帯決議にも類似のことが書いてありますが、しかし現実を踏まえた調査研究を進めれば進めるほどにこうした実態が明らかになるだろうと思います(が中小企業だとそうでもないのかなあ)。何度でも書きますがやはり改正法が考えるような「能力向上やキャリア形成の進展を通じて派遣労働者の雇用の安定や処遇の改善をはかる」ことが正論ではないでしょうか。
派遣社員が派遣先と団体交渉をする権利を法制化する」も類似のものが附帯決議に入っていますが、これも繰り返し書いているように基本的には筋の悪い話だと思います。「労働条件に大きく影響しているのは派遣先の判断」というのは要するに派遣労働者の賃金が上がるように派遣料金を上げたいという話だと思われますが、だとすると古くからある「下請け労働者の賃金を上げるために納入単価を上げさせる」という話と同じ構造で、まあやはり不出来な社会主義という感は否めません。資本主義経済では取引価格を上げたいのであればそれなりの稀少性あるクオリティを提供するというのが基本であり、そのために労使で協議して努力しましょうというのが生産性運動の考え方だろうと思います。派遣業においても同じことで、派遣会社が派遣先から高い料金を受け取れるようにするためにはどうしたらいいかを派遣会社の労使で考えるのが基本であり、実際技術者派遣の会社では労使のこうした取り組みが実績を上げている例もあるわけです。逆にいえば派遣先にしても高い料金を払ってなお利益が上がるのであれば料金の引き上げに応じるでしょう*1
いっぽうで職場レベルの就労環境といった個別案件に関しては派遣先と派遣労働者が直接協議したほうが手っ取り早いということはありそうなのですが、でこれは(特に団体交渉となると)やり方が非常に難しいなという感はあり、要するに当事者となる労働組合をどうするのかという問題です。まああれかな、しっかりした派遣会社であれば、同一派遣元の派遣労働者が一種の企業別労組を作って、まずは派遣元と協議交渉し、必要となればそれぞれの派遣先に出かけていく(派遣元もオブザーブする)というのがひとつの現実的なアイデアかもしれません。あるいは派遣先企業に労組があれば派遣労働者も組織するなり、組織しないまでも相談を受けて協議を申し入れるというのも現実的な対応と思われますが、これは現行法制下でも十分に可能な話ではありますが…。
しかしまあこういった個別案件についてはやはり派遣元がなんとかすべきものではないかとも思うわけで、そういったことをきちんとやれない業者は淘汰されていくというのが望ましいシナリオであるようにも思われます。
次に毎日の社説ですが、

 改正労働者派遣法が成立した。企業は一定の手続きを取れば派遣労働者を期間の制限なしで使えるようになる。派遣会社には「雇用安定措置」を義務付けたが、企業の努力に任せるだけでは実効性は上がらないだろう。厚生労働省派遣労働者の正社員化や雇用条件の改善に向けてガイドラインを整備し、企業に対する指導や監視に万全を期すべきだ。
 政府が成立を急いだのは、違法な派遣と知りながら労働者を受け入れている企業がその労働者に労働契約の申し込みをしたとみなす現行法の規定が10月から発効するためだ。直接雇用を迫られる企業の窮状に配慮し、今回の改正法でこの規定は事実上骨抜きにされた。
 改正法はすべての派遣会社を許可制にし、キャリア支援制度があることを許可要件に加え、計画的な教育訓練と報告を義務付けた。また、派遣会社には同じ職場での勤務が3年に達した労働者の雇用を受け入れ先の企業に要請するか、派遣会社自らが無期雇用するなどの雇用安定措置を義務付けた。
 ただ、受け入れ企業にとっては3年ごとに派遣社員を入れ替え、労働組合の意見を聞く手続きを取れば派遣労働者を使い続けることができるようになる。これまで期限の制限がなかった専門26業務も原則3年が上限となるため、改正法施行に伴って雇い止めにされる人が続出する恐れが指摘されている。
 雇用安定措置が名目だけに終われば、低賃金で不安定な派遣労働者の状況を固定し、企業はコストの低い派遣労働者を今以上に求めるようになるだろう。これでは雇用の不安定化を増幅するだけだ。
 今回の法改正には日本の雇用制度の根幹を変える面があることも指摘したい。労働者派遣法は1985年、職業安定法で禁止されていた「労働者供給」を専門業務に限定して認める制度として始まった。99年の改正で一般業務に対象を広げたが、期間は1年(後に3年)に限定した。業務や期間の限定は派遣先企業の正社員を保護する観点からである。
 どんな業務も派遣労働者を使い続けることができれば、企業はコストの高い正社員の採用を手控えるだろう。今回の法改正は正社員中心の雇用制度にも影響することが避けられず、安倍政権が進めようとしている残業代ゼロの成果主義賃金や解雇の金銭解決などと同一線上にある。労働規制を緩和し企業の競争力向上を優先する路線だ。
 働く人の生活が犠牲にならないよう、政府は厳格な雇用安定措置を行い、労組も監視機能を十分に発揮すべきだ。派遣労働者だけでなく正社員も含めた雇用全体の問題なのだ。
平成27年9月12日付毎日新聞社説)

いや「厚生労働省派遣労働者の正社員化や雇用条件の改善に向けてガイドラインを整備」とか、まあそうすべきだと言って悪いわけではありませんがそれにしても改正法の内容を完全に無視していてすごいなあとは思うかな。改正法は3年を超えて同じ仕事に従事したい・させたいのであれば派遣元で無期雇用して派遣を継続するか(これはまあ正社員化と言ってもよさそう)派遣先で直接雇用するか(これは無期であることも正社員であることも要しない)してください、と言っているわけで、後者については厚労省は正社員化のガイドラインとか言われてもとりあえず困るでしょうし(まあやってできないこともなかろうが)、前者についてはガイドラインなんか作るまでもない話でしょう。
「直接雇用を迫られる企業の窮状に配慮し」というのもずいぶん一方的な言い分で、厚生労働省が懸念していたのは主に26業種への該当をめぐる労使紛争およびそれを回避するための雇い止めの多発であり、これは派遣先企業というよりは派遣労働者により大きい負担となることが容易に想定できたわけです。
続く雇い止めの話や低賃金で不安定が固定とかいう話は、繰り返しになりますが改正法の「能力向上やキャリア形成の進展を通じて派遣労働者の雇用の安定や処遇の改善をはかる」という趣旨をまったく無視していて、まあ朝日と同じ箱ということでしょう。しかもこちらは朝日がしっかり押さえていた派遣業者の質保障の話も無視なんだからなあ。
後半の「今回の法改正には日本の雇用制度の根幹を変える面がある」以下はもはや噴飯ものの域であり、いやまあ派遣法改正が「労働規制を緩和し企業の競争力向上を優先する路線」であって「安倍政権が進めようとしている残業代ゼロの成果主義賃金や解雇の金銭解決などと同一線上」とかいうのはそう見たい人にはそう見えるんでしょうが、しかし今回の改正派遣法も常用代替防止の考え方は堅持しているわけなので「正社員中心の雇用制度」が前提とされていることはまあ自明ですし、ましてや「日本の雇用制度の根幹を変える」なんてシロモノではないでしょう。むしろ「正社員中心の雇用制度」をなんとか維持するために非正規労働が拡大したわけですし。
さて最後に読売を見てみましょう。

 今国会の焦点の一つだった改正労働者派遣法が自民、公明両党などの賛成多数で成立した。30日に施行される。
 派遣労働者の雇用安定と処遇改善に着実につなげることが大切だ。
 改正法は、企業が派遣労働者を受け入れられる期間の制限を事実上なくすことが柱である。
 従来は、正社員の仕事を守るため、受け入れ期間を最長3年に制限してきた。秘書など26の専門業務は例外だったが、改正法では、この区分を廃止し、全業務で労働組合などの意見を聞けば、企業は期間を延ばせるようにした。
 一方、個々の派遣労働者については、様々な仕事を経験して技能向上を図る観点から、同じ職場で働く期間を原則3年までとする新たな制限を設ける。
 派遣会社に対しては、計画的な教育訓練など派遣労働者のキャリアアップ支援や、派遣先への直接雇用の依頼といった雇用安定措置を義務づけた。
 働き方の多様化を踏まえ、手薄だった派遣労働者の保護を強化する改正案は、妥当な内容である。企業が派遣労働者を活用しやすくなる利点もある。
 これまで長く働けた専門業務の人も、3年で職場を変わることになる。「雇い止め」の不安を抱く人は多い。政府は、派遣先や派遣会社の動向を注視し、雇用安定への努力を促すべきだ。
 国会審議では、政府・与党が「正社員への道を開き、処遇改善を図るもの」と強調したのに対し、民主など野党は「一生派遣」が増える、と強く反発した。
 改正法には、野党の主張を取り入れた39項目に上る付帯決議が参院で採択された。その結果、衆院厚生労働委員会で、採決前に委員長の入室を妨害するなど「実力行使」に出た野党も矛を収めた。
 付帯決議は、派遣会社が得る「マージン」に関する規制や、派遣労働者の直接雇用に消極的な派遣先への指導などを求めている。検討すべき課題だ。
 改正法では、一部で認めていた派遣会社の届け出制を廃止し、全てを許可制とした。
 教育訓練などを怠った業者に対し、許可取り消しも含めて厳しく指導監督する。厚生労働省にその能力があるかどうかが、改正法の実効性を確保するカギを握る。
 許可制が有効に機能すれば、低コストのみが売り物の業者は淘汰されよう。良質な業者を育てることで、派遣労働をキャリアアップの機会として定着させたい。
平成27年9月12日付読売新聞社説)

改正法の趣旨をふまえた内容で、朝日や毎日の論調が好きな人には不満でしょうが(笑)、しかしこれが普通の議論というものではないかと思います。労働政策審議会で公労使の代表が議論し、一応の合意をみた案なのですから、ハナからうまくいくわけがないと決めつけて、うまくいかない場合の問題点を言い募るというのは、やはりあまりバランスのいい議論ではなかろうと思うわけで。
さて社説に戻りますと最初の「派遣労働者の雇用安定と処遇改善に着実につなげることが大切だ」というのはまったくそのとおりと思いますし、最後の方で「教育訓練などを怠った業者に対し、許可取り消しも含めて厳しく指導監督する。厚生労働省にその能力があるかどうかが、改正法の実効性を確保するカギを握る」と言うのにも同感です。だから最初に書いたとおりあまり配慮措置とか経過措置とか言わずに厳格にやってほしいと思います。また、これも繰り返しですが雇用安定措置においては現実的には「能力、経験等に照らして合理的な」「新たな就業機会(派遣先)の提供」が最重要になってくるでしょう。各紙ともどうも教育訓練とかキャリア支援とか直接雇用の依頼とか、目新しいのかなんだか知りませんがそちらに目が行ってしまうようで…。
あと附帯決議に関しては、「「マージン」に関する規制」というのも社会主義国みたいでどうかなあと直観的には思うのですが、しかし労働者供給事業であまりに利益を上げるのはいかがなものかというのも健全な発想のようにも思われます。検討すべき課題ではあるでしょう。いっぽうで「直接雇用に消極的な派遣先への指導」については、私はわが国の雇用慣行下においては採用の自由は最大限確保されるべきという立場なのであまり感心しません。ただまあそれはきわめて長期的なコミットをともなう正社員についての話ではあるので、労働者が就労継続を希望し、企業も特に実際上の問題がないのであれば、有期雇用でもいいんですから直接雇用しましょうよ、という指導はあり得るのかもしれません。
ということで4紙4様、それぞれに個性が出ていて私には面白い読み較べでした。以前よく春闘社説の読み較べをやっていましたが、それ以上に違いが出ていたように思います。新聞が独自のカラーを出すのは悪いわけでもなんでもありませんので、まあ読む方がそういうもんだと気を付けて読まなければならないのだろうなといつもながらの感想を述べて終わります。

*1:下請けの納入単価については、つい最近の話として、政府が経済団体首脳に対して下げるな・上げろという要請をして、かなりの程度そうなったという例もあります。