吐息の日々 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2017-05-02

[]玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』

社研の玄田有史先生から、『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』をご恵投いただきました。ありがとうございます。

実際、これだけ人手不足と言われていて、春闘でも4年連続で有額のベースアップが実現しているのに、マクロの数字を見るかぎり賃金上昇がはかばかしくないのは、常識的(なのか?)に考えて不思議な感はあります。この本は、この難問に対して、22人の専門家が16の回答をよせた論文集です。

「実はミクロでは総じて賃金は上がっている(非正規比率の上昇や内転効果で上がっていないだけ)」「実は人手不足ではない(不足しているのは低賃金の人手/高年齢者や女性にはまだ供給余力がある」「所定賃金は人員過剰時に下げにくい分人手不足にも上げにくい」「国際競争部門の動向が非国際競争部門にも波及」「非正規比率上昇などにより人的資本形成に遅れ」「賃金の調整は時間がかかるもの」などなど、さまざまな観点からさまざまな分析が提示されていて非常に面白く読みごたえがあります。多数の執筆者・多数の論文数にもかかわらず各章の連携が行き届いているのは編者ががんばったのでしょう。

現実にはおそらくこれらの要因が複合的に絡み合って現状があるのでしょうが、とりあえず私個人の当面の感想としては経験的に賃金に限らず雇用関連の調整には時間がかかるという実感はあり、(留保賃金が比較的高い)団塊ジュニアのボリュームゾーンにまだ供給余力が若干残っているのではないかと思っている(すみません思っているだけで確認してません)ので賃金が大きく上げるにはもう少し時間がかかるかな、などと思っています。もう一度しっかり読んで、あらためて感想をまとめてみたいと思います。

高原正之高原正之 2017/05/02 15:52 団塊ジュニアに限らず、男性の25歳から34歳、35歳から44歳、45歳から54歳の労働力率は2015年に過去50年間の最低を記録し、2016年に少し回復しただけです。供給余力は十分に残っていると思います。

元労務屋@保守おやじ元労務屋@保守おやじ 2017/05/03 10:13 高原さん、ご教示感謝です。若干ではなく、十分余力があるとなると、賃金はまだしばらくは上がりにくいのかもしれませんね。技能ミスマッチがあるなら職業訓練も有効かもしれませんが、IT系エンジニアとか福祉医療関連とか、あまり賃金の高くない分野が多いような気がしますし…

高原正之高原正之 2017/05/04 09:05 十分余力はありますが、労働市場に一気に戻ってくるわけではないので効果は限定的だろうと思います。高生産性・高賃金部門では新卒・中途採油とも採用基準の緩和で確保できるので、賃金の上がり方は低く、中生産性・中賃金部門は採用基準を緩和しつつ、賃金上昇、低賃金のパートタイム部門は、時給を上げつつ女性や高齢者などこれまでより短時間しか働かない人も目をつむって採用する。という流れだと見ています。中小の賃上げが大企業を上回る背景はこれだと思います。なお、時給は上がっても時間が短縮されるので月当たりの賃金は増えにくいでしょう。

元労務屋@保守おやじ元労務屋@保守おやじ 2017/05/06 12:17 賃金はまだ上がりにくい構造が続くとしても、人手不足と最賃引上げで低賃金分野で効率化投資が進んで人材が高生産性部門にシフトするということは起こりそうですね。ここは民間労使の知恵の出しどころと思います。

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