サザンオールスターズ「KILLER STREET」全曲レビュー①

前作「さくら」以来、実に7年振りの待望のオリジナルアルバム「KILLER STREET」をリリースしたサザンオールスターズ。早速店頭に並んだ10月4日に購入し、試聴してみました。この「KILLER STREET」っていうのは、サザンがアルバムのレコーディングを行った青山のスタジオ前の通りが「キラー通り(だったと思う)」と呼ばれたことから付けたそうです。ジャケットはどことなく、THE BEATLESの「ABBEY ROAD」のイメージが漂うものになっていました。で、肝心なアルバムの内容ですが、今回は7年分のストックが多くなり過ぎた為か、何と2枚組計30曲というかなりのボリュームとなりました!ファンとしてはたまらない内容ですが、もともとサザンのアルバムはリリースする周期が長い為、曲数も多いのです。今回の7年というのは特に長く、その間に桑田佳祐がソロ活動を精力的にこなす等、新しい世界観を身に付けてきたと思います。それが今作品にどう反映されたかという点も含めて、レビューを書いてみようと思います。今日はDisc1から。
  
1.からっぽのブルース
久々のアルバムのオープニングチューンは、ちょっと重めのロックナンバーから始まります。どこか60年代風のサイケデリックな曲に仕上がりました。歌詞の内容は、何となく命果てる間際の老人が一生を振り返るような感じでしょうか?
2.セイシェル〜海の聖者〜
ちょっとジャズっぽいキーボードの音色や、ギターサウンドや打ち込み音などによる、音の層が分厚く深みがある曲に仕上がっています。ここに来て、今までと変わらない、サザンならではの音楽が聴けたような気がして、何となくホッとしました。
3.彩〜Aja〜
サザンにしては珍しい、春を意識した2004年春のシングル。僕はこの曲をGW中の京都・嵐山から帰る車の中で聴いたのですが、5月の穏やかな夕暮れ時に実によく合っているのです!歌詞的には、ちょっと前の恋人との日々を懐かしむような、「あの日に帰りたい」といった哀愁漂う曲なんですけどね。
4.JUMP
この辺りから、桑田佳祐のソロ活動での成果が反映されたロックチューンが続きます。どことなくERIC CRAPTONのギタープレイを連想してしまいました。人間の欲望をテーマにした歌詞ですが、このファンク調の曲にカッコよくハマっています!
5.夢と魔法の国
この曲のタイトルが何を意味しているのかは分からないが、あたかも「やっとのことで手に入れた楽しい時間に水を差すようなささいな行為に腹を立てる人の唄」ってとこでしょうか?そして、このアルバムから増えてきた、多重録音したギターサウンドを全面に押出した音作りがここでも生かされています。
6.神の島遥か国
2005年7月リリースの「BOHBO No5」とのダブルAサイドシングルなのですが、どうもサザンのダブルAサイドシングルというのは、2曲目以降の存在が薄く、この曲はこのアルバムを通して初めて聴きました。沖縄音楽をフィーチャーした曲もこの数年で増えてきており、そこに加わる原由子のコーラスが、実にいい味出しているのです!その辺を気に留めて聴いてみるのもいいでしょう。
7.涙の海で抱かれたい〜SEA OF LOVE〜
21世紀に入ってから一切の活動がなかったサザンが久々に放った、活動再開を告げる2003年夏のシングル。とはいえ、最初にこの曲を聴いた時は、「典型的なサザンの曲だ。無難にまとめ過ぎたかな」と、肯定とも否定とも言えない解釈をしていましたが、今となっては安心感さえ感じられる、サザンの王道的サマーソングです。やはり海沿いをドライブする時に聴きたい!
8.山はありし日のまま
前の曲が海なら、次は山・・・。この曲は、サザンのアルバム恒例、必ず1曲は用意されている原由子の歌です。確かにサザンといえば桑田佳祐なのですが、この人の存在を忘れてはいけません!本当にきれいな歌声で、しかも丁寧に歌っています!文学的な歌詞も、彼女の歌声にピッタリだと思います。そういえば、僕の母親も「サザンの原由子ソング」を楽しみにしてたっけ?
9.ロックンロール・スーパーマン
アルバムがリリースされる前、もしくはされた後、そのアルバムの代表曲としてラジオ等でよくオンエアされているのがこの曲。今までのサザンサウンドとはちょっと違う、ロック色が強まったこの曲を選んだということが意味するものは・・・このアルバムから、サザンは新たな方向性を模索し始めていることの意思表示のようにも思えます。ちょっと桑田ソロ作品の「祭りの後」に曲調が似ていると思ったのは僕だけでしょうか?
10.BOHBO No5
「夏といえばサザン!」を全面的に押出した超アッパーチューン。今年の夏は大阪や名古屋の高速道路走行中によくこの曲を聴きました。これ位ノリのいい曲、僕は大好きです!ホーンセクションの音色もいいアクセントとして効いています。ちなみに「BOHBO」っていう言葉、1文字抜いたら、福岡ではとても不適切な意味の言葉になってしまうそうです。桑田さんはその辺も狙ってこのタイトルをつけたのでしょうか?
11.殺しの接吻〜Kiss Me Good-bye〜
どことなく昭和の歌謡曲のムードが漂うスローなナンバーです。年輪を重ねて円熟味を増した桑田さんだからこそ歌い上げることができる、大人の曲といったところでしょうか?恋の終わりに残した未練と恨みみたいなものが感じ取れる曲になっています。
12.LONELY WOMAN
2004年暮れのシングル「愛と欲望の日々」とのダブルAサイドシングルであり、たいがいその2曲目は地味なのですが、こればかりは、天下のトヨタのCM曲とあってよく耳にしました。この曲は「典型的サザンサウンド」に分類される曲調で、聴いていて安心感が増してきます。幅広い年代のファンに受け入れられる曲だと思います。だからこそトヨタがこの曲をタイアップ曲に指定したのかな?
13.キラーストリート
サザンのアルバムとしては久々のインストゥルメンタル(曲のみの演奏)だと思います。この曲を聴いて、なぜか僕は「いいちこ」のCMを連想してしまいました。自然やノスタルジックな景色が似合う曲ですが、この曲のテーマ「キラーストリート」があるのは東京・青山。どうにも結びつかない・・・。
14.夢に消えたジュリア
2004年7月のシングル「君こそスターだ」とのダブルAサイドシングルであり、やはり2曲目ということで地味な存在だった曲です。この曲も、どことなく昭和の香りがするのですが、歌詞にある「ジュリア」「シャンデリア」「ロザリオ」「ジルバ」という言葉を最近になって聞かないから、なのかもしれません。さらに連想するのはドラキュラの住む屋敷。どことなくオリエンタルな雰囲気がしてくる曲です。
15.限りなき永遠の夢
サザンのアルバムのラストナンバーは、とても丁寧に歌い上げられているスローな曲が必ず用意されています。この曲もとても丁寧で、そして力強いヴォーカルの曲であり、胸が熱くなるようなラブソングです。しかし・・・2枚組のうちの1枚目のラストということもあって、本当のラストナンバーではないのです。ということは、本当のラストナンバーは、僕の期待どおりに全体をきっちり締める曲になっているのでしょうか?
  
ふー。これだけ曲数があるとレビュー書くのが大変だ。次回は、懲りずにDisc2のレビューを書いてみたいと思います。では、次号乞うご期待!