ああ困った。ひっかかってとれなくなってしまった。
何故、こうなのだろう。
それがひっかかりとしていつまでも頭蓋を占拠する。
自分のなかで、コンビは早くも解消の危機かもしれない。
一歩踏み出そうとしたところなのに。
なんて言い出そうか。
止ん事無き理由をこしらえようか。
彼氏が相手なら本当の事を言うのだろうけれど。
こんな女に誰がした。
些細な事でも
ひっかかりができると途端に絡めなくなる。
誰とも何もできっこないのかもしれない。
ごめんなさい。
言えないという癖は
幼少期からのもので
元ダンはよく外堀から徐々に守ってくれた。
話を遮ったり
言い終わらないうちから言い返したり、そんなことはしなかった。
個別懇談の前には上司にさえかけあってくれた。
言えなくなったのはママの猪突猛進な生き方からか。
米子店の店長だった頃、電話で「ママのせいだ」と泣いたら、しばらく口もきいてくれなかった。
そんなママは
兄が逝ってからなのか
私を育て直そうとしているのか
不憫にも
普通なら歳を取ったらデフォルメされちまうであろう嫌なところを、あの歳になって、改めようとしている。
かわいそうに。
自分を責めている証拠だ。
私のせいだな。
私の業とは強烈だな。
誰あろう愛するママにさえ猛威を振るう。
MCなのに。
MCのくせに。
自分の事は言えない。
言わないのじゃない。
その場では思いもつかないのだ。
リアルタイムではフリーズしてその直後にそのショックを見破られないように振る舞ううちに時が経ち、
後にひとりになってから、「言いたい事」という発想とともに、思いが言葉という形に、徐に、徐に、かわっていくのだ。
徐に。
寝耳に水になるのなら、言わないで消えるのがいい。
そんな風にも思う。
親兄弟でも恋人でもない女性に、そのまんま「ショックだった」だなんて、責める事など出来ない。
一事が万事。
誰が相手だって、
こうなるんだ。
たくさんの方々に支えられて今日まで生きているってのに。
MCなのに。
ダメ人間。