もっと姉、ちゃんとしようよっ! レビュー

もっと姉、ちゃんとしようよっ! 限定版もっと姉、ちゃんとしようよっ! 限定版

キャンディソフト 2010-07-30
売り上げランキング :
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

タカヒロが抜けて以降、どうもパッとしないキャンディソフトですが、今回の作品で一応の復活を果たしたといってもいいのではないかなと。
友人から勧められて、気が乗らないまま、プレイしましたが、当初の予想に反し、良作でした。

主人公が非常にネガティブな性格で、そこをユーザーが受け入れられるかが評価の分かれ目なのですが、ヒロイン達に限ってはどのキャラも嫌味がなく、個性も豊かで面白い姉ちゃんズになっています。公式ページを見て、『姉属性を持つ登場人物多すぎじゃね?』と心配しているそこの貴方。心配ご無用です(前シリーズもこれくらいいたと思いますが、とあるレビューでその意見を読んだもので・・)今回のライターさんは私自身は名前は知りませんが、テンポの良いテキストで、話の構成も無駄がなく、非常にうまくまとめてくれています。ヒロイン以外の、サブキャラも素晴らしい程の存在感で、特に主人公の男友達である千鳥の絶妙なツッコミは私達を爆笑の渦へと巻き込んでくれるでしょう。タカヒロがパロを駆使した笑いで攻めるのに対し、こちらは正統派漫才といった所でボケツッコミのひたすら応酬です。

前述した主人公がネガティブな性格というのは、ヒロイン達を映えさせるための演出とも取れるシーンがあります。いつも優しいというだけではなく、主人公が間違った事をした場合は厳しく対応し、諭したりもします。この時、お姉ちゃん達は各自が持っている役割というのをきちんと理解しており、それぞれの役割にのっとって、主人公に接します。前作以上に主人公の駄目っぷりが目立つ事もありますが、以前にも増して、姉ちゃん達の魅力が最大限まで発揮されているようにも思います。散々主人公が駄目とも書きましたが、勿論見せ場がないわけではなく、決めるときはきちんと決めますので、駄目主人公の烙印を安易に押される事もないかと。もっと世の中には駄目駄目な主人公いますから。

序盤からいくつか伏線が張られており、その伏線は各ヒロインルートでそれぞれ解き明かされる事になります。先が読めてしまうものもありますが、伏線の回収の仕方が先を気にさせる作りになっており、原因としても各ヒロインの心情に基づいた納得のいくものになってはいます。しかしどうしてもあるひとつのルートだけがその定義を覆すほどのトンデモ伏線になっており、ライターのせいなのか、会社の方針だったのか、そこは分かりませんが、日常と非日常の棲み分けを上手く理解していない節があり、そこが作品全体の評価にやや影を落としています。タカヒロが手がけた姉しよシリーズでも同様の展開はあるにはありましたが、だからといってこの作品で最も重要だと思われる伏線に関連付けるのは少し頂けません。

攻略出来るヒロインは、主人公走馬の姉5人とお隣さんの姉3人と通っている学校の先輩1人。全部で9人(双子がいるので、実質は8ルート)と大所帯。全員がメイン級の扱いを受けているわけではないですが、サブだからと蔑ろにされているヒロインはいません。この点で私は作品に高い評価をしています。ルート選択も非常に簡単で、煩わしい選択肢やフラグ管理等は一切なし。ボリュームもそこまで大きいわけではないので、人によっては敬遠されるかもしれませんが、元々攻略キャラが多いのと、私みたいに不必要に長く日常シーンをダラダラと読まされるのが嫌という人にとってはかなり利点と感じるかと思います。

なるべくネタバレを排して、簡潔に書いてきましたが、キャンディソフト復活!と言ってもいい作品なのは間違いないです。つよきす2学期で信頼を地の底まで落としたこのメーカーも、この作品を糧として、今まで以上にファンに向けて、次々と良作を作って欲しいと思います。(メーカーの場所が神奈川県にあるので、神奈川県民としてはどうも応援したくなるんですよね。)タカヒロカラーから完全に抜け出て、素晴らしいオリジナル作品を世に出した時が本当にこのメーカーを評価してもいいのではないか?とも実は思っちゃいますが。