つづきの図書館

つづきの図書館
 本の登場人物が、自分を読んでくれた人の「つづき」が知りたくて現実世界に飛び出してきて、しかも彼らがけっこう自由奔放に動き回って主人公を振りまわす様子が、にぎやかに、楽しそうに描かれています。
 でもそれだけじゃなく、人の「つづき」の人生のほろにがさと、その中で人とつながりあうことの温かさが描かれていて、切ないような、爽やかなような不思議な読後感でした。
 主人公が離婚歴にある中年女性で、挿絵を山本容子さんが描いているので、対象年齢が不明ですが、私にはとても面白かった。

黒い本 ついてくる怪談

ついてくる怪談 黒い本 (ポプラポケット文庫 児童文学・上級?)
 (「文学少女」→竹岡美穂)+(「晴れた日は図書館へいこう」→緑川聖司)=「黒い本」という流れです。シリーズに登場する怪談は、どれもオーソドックスなんだけど、「本」を軸に上手くつなげていると思います。作者は本当に本が好きなんだなあ。

赤い本 終わらない怪談

終わらない怪談 赤い本  (ポプラポケット文庫 児童文学・上級?)
 「黒い本」とセットのはずなのに、利用している3つの図書館すべてで、「赤い本」だけに大量の予約が付いていて、読む時期が大幅にずれてしまいました。最近出たはずの「白い本」の方が先に用意されたのは、なぜなんだろう。

白い本 待っている怪談

待っている怪談 白い本 (ポプラポケット文庫 児童文学・上級?)
 怪談シリーズ(?)の最新作で、これが一番好き。「白」「雪」をモチーフに切ない初恋のお話になっていて、女子好みだと思います。竹岡美穂さんの絵はあいかわらずお話によく合わせていますね。

ピーターラビット全おはなし集 愛蔵版 改訂版

愛蔵版 ピーターラビット全おはなし集(改訂版) (ピーターラビットの絵本)
 ピーターのお父さんが、肉のぱいにされてしまったくだりは有名だと思いますが、改めて全話を読むと、実に「食うか食われるか」の世界であることに気づかされます。ほのぼのとした美しい田園風景を舞台に繰り広げられる弱肉強食の世界(笑)。
「ひげのサムエルのおはなし」は、子猫のトムがねずみのサムエルに「ねこまきだんご」にされて食べられそうになる話で、窮鼠猫を噛むってレベルじゃねえ…! と震撼しました。ピーターの妹フロプシーの子ども達も、干し草の中で眠っているところをマクレガーさんにつれていかれたり(「フロプシーのこどもたち」)、アナグマにさらわれたり(「きつねどんのおはなし」)して油断も隙もないです。
それでも全く陰惨な感じじゃないのは、それが生命にとって「当たり前」であるという著者の冷静な観察眼と、可愛らしい美しい絵によるところが大きい。私は特に「2ひきのわるいねずみのはなし」で、ハンカ・マンカに抱かれたゆりかごの赤ちゃんの図がとても好きです。これはお話自体も大好き。ねずみたちに人形の家を荒された女中は「ねずみとりをかけますよ!」というのですが、その台詞の横には、ねずみ取りを前に、幼い子供たちにねずみとりの仕組みを教えているトム・サムの図が描かれていて、微笑ましいというかなんというか。

日本SF精神史 幕末・明治から戦後まで

日本SF精神史----幕末・明治から戦後まで (河出ブックス)
日本SFはタブーを設けずに、あらゆるものに懐疑のまなざしを向け、宗教にも思想にも歴史にも絶対的に身を委ねない徹底した批評精神を、ニヒリズムに陥ることなく抱き続けるという不断の努力を通じて、独自の発展を推し進めつつあった。