今週したこと、思ったこと

東日本大震災

地震がありました。多くの人が亡くなりました。
私は千葉で揺れをうけて、14日には実家の静岡に逃げ帰りました。
日本中を、大きな感情がうねり、燻っています。
しかし。こういう時こそ思うのです。
健康体な自分こそ、生を有り難がり、明るく生きようではないかと。
信念だけが力です。私は日本の底力を信じています。
最後に。買い溜めだけは止めましょう。非日常の振舞いが社会を非日常に導きます。

今週読んだ本

今週読んだ2冊の本を紹介します。

ハーモニー 伊藤計劃

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)

ジャンル:SF
深くは語りませんが、おもしろいです。同氏の「虐殺器官」も近いうちに読んでいろんな妄想に耽りたいと思います。
この本で一番気になったのは、むしろ解説に載せられている作者のインタビューでした。

社会と自己の対立みたいなのは昔からあるテーマではあるんですけど、最近ゼロ年代の話とかでよく出てくる「小さい共同体」とか、そういう話がありますけど、共同体を論じる以前に、動物としての人間っていう部分が議論からすっぽり抜けているような気がするっていうか。ドゥルーズとかはデータベース化して管理する世界っていうのを『記号と事件』かなにかで書いていましたけど、人間が動物である部分と社会的な存在である部分の折り合いをどうやってつけるのかっていうことに対して、あまり議論がないのが不思議な気がしていて。そこを書いてみたいなっていうのいうのはありましたね。共同体を立ち上げる前に、まず「人間」を把握するのが先じゃないか、と。

この思想自体がどうこうだ、ということは置いて、作者がこういった思想の上で執筆していることを知れば、読み手としても随分と身が入るものです。

それにしてもハーモニーはどこまでも冷たい作品であるように感じました。
それも、佐々木敦氏による解説にある、

「動物としての人間」を冷静に見据えること

が徹底されているからなのでしょう。

孤の増殖 夜刀浦鬼譚 朝松健

弧の増殖 夜刀浦鬼譚

弧の増殖 夜刀浦鬼譚

ジャンル:クトゥルー
いい加減にオカルトだとか、クトゥルーだとか、そう言った想像性が要求されそうな手の物にも手を出していきたいと思いまして、戸田書店の新刊コーナーで帯の「クトゥルーとサイコの甘やかな融合」の文句に釣られてついつい購入。
朝松健という名もその方面では大変有名なようで、霊長流離オクルトゥム(仮)の発表に先立って魔術だとかを予習するのに、同氏の作品は読んでおかなければと思っていたところでした。

クトゥルー初心者の私でも先が気になって頁は進むし、非常に丁寧で読みやすいつくりでした。読み手のことをよく配慮した、エンターテイメントとしても成功している作品だと思います。
クトゥルー入門として良いはたらきをしてくれました。

それにしても、とにかく怖い。私はホラー映画とかお化け屋敷とかが大の苦手な、女性であったればこその残念な野郎なのですが、この作品も非常に恐い。でも気持ちいい。
いやー。これだから本って素晴らしい。

すばひび 素晴らしき日々ENDを考える

紹介

それは、素晴らしき日々を探し求める少年少女の物語。
ウィトゲンシュタイン入門としてのエロゲ」と形容できる、すかぢ氏の意欲作。ケロQさんの6年振りの新作であり、処女作「終ノ空」からさらに大きく一歩踏み出した作品です。*1
シナリオ自体は2010年に出た作品ではトップレベルの水準であることを保証します。鬱でだうーんな話も大丈夫な方はぜひプレイしてみては?(未プレイの方に多くの情報を与えない方が良いと思いますので紹介になってないかもです)

素晴らしき日々 ~不連続存在~ 特装初回版

素晴らしき日々 ~不連続存在~ 特装初回版

「幸福に生きよ!」を語り尽くした作品(ネタばれ注意)

私が気にいった作品をプレイし終えるといつもすることは、そのレビューや批評をひたすらに読み漁ることなのですが、今回はそれをしませんでした。それはこの作品がひとつのテーマを、これでもかと言うほどに語り尽くしており、そこに新たな見解を加えるまでもなくスマートに完成、完結しているからなのだと思います。
自分の存在に焦燥、葛藤し、生を苦しみ、そしてただひとつへの真理へと辿りつかせる。
「幸福に生きよ!」この作品はただこの一言に集約できます。
そしてウィトゲンシュタインが最終的に哲学を投げることになる「幸福に生きよ!」に到達するその思想が、高島ざくろの自殺をきっかけに起こる一連の事件を、様々な視点からのモノローグによって描かれているのです。
音無の存在についてなど考察できることはあるのでしょうが、テーマそれ自体は実にシンプルに提示されており、クリア後の爽快感は今までで一番気持ち良いものでした。難しいことを言っているようでいて、丁寧にその思考をなぞっていますし、能動的に読もうとすれば18歳以上のすべての方に読める内容だと思います。ただ公式アーカイヴで、すかぢさんも言うとおり「幸福に生きよ!」だなんて当たり前のことで、それを受け入れられている人には普通の作品なのかもしれませんね。
幸福のあり方についてですが、例えば卓司はその内面世界で幸せに生き、救世主として信者たちに幸せを与え、そして死へと導きました。救世主の与えたものはドラッグであったり、乱交であったり、そういった世間一般では幸福とは対照的に語られるものですが、確かに当事者たちの主観ではそれは幸福なことでした。
幸福は主観によってでしか量ることができません。*2
そこでもう一度「幸福に生きろ!」という言葉を考えてみると、その言葉の難しさや深さと言ったものが感じられますね。

ただひとつ言えることは「幸福に生きよ」と言う言葉には先があり、その先も決して平坦ではないという事です。
すかぢが語る素晴らしき日々END 素晴らしき日々〜不連続存在〜公式ビジュアルアーカイヴ

まさにウィトゲンシュタインゲー。楽しませてもらいました。

素晴らしき日々?不連続存在?公式ビジュアルアーカイヴ

素晴らしき日々?不連続存在?公式ビジュアルアーカイヴ

シナリオ全体に対しての雑感

高島ざくろから始まる集団自殺の事件をいくつかの視点から巡るこのお話ですが、最後には大きなイベント(事件)もなく、過去との対峙を軸として対話をメインに物語は緩やかに収束していきます。
やはり多重人格ゲーは基本的に過去の大きな事件でのトラウマを起点として、主人公がそれを乗り越えるといった構造がデフォルメなのでしょうか。*3
ラスボス的な(?)展開としての分かりやすい盛り上がりが見えない以上、なんとなく作るのが大変そうに思えるのですが、よくここまで読めるテキストが書けたものだと思います。(なんだか偉そうだぞ、こいつ)
これからはループ物に代わって多重人格ゲーが増えたりするんでしょうかねー?(安易すぎる妄想)
……締まらなくてすいません。思うがままに書いているとこうなるんです。というか、いつもこうですね。
 


 

*1:私は終ノ空は未プレイなのですけれど。

*2:勿論、ドラッグなどを肯定する旨の言葉ではありません。

*3:とあるゲームの記憶と相まってそんな考えが。

2011年消化予定作品一覧

3/25 更新しました。
タイトル通りです。随時更新します。
大二病の私が2011年で読破、クリア、解説のエントリなどをしたいなーと目論んでいる作品一覧。

ゲーム

・現在進めているもの
素晴らしき日々 〜不連続存在〜 クリア→レビュー
 俺たちに翼はない
・これから始めるもの
 腐り姫 (購入済み)
 家族計画 (購入済み)
 CROSS†CHANNEL〜In memory of all people〜 (3/31発売)(4/14発売)
 Rewrite (4/28発売)(6/24発売)
・プレイ済みレビュー予定作品
 沙耶の唄:どこが純愛なのか   
 最果てのイマ:未定
 神樹の館:麻子√について   
 CROSS†CHANNEL:未定

アニメ

・過去作品
 NHKにようこそ! 視聴済み:岬ちゃんについての考察
 serial experiments lain 購入済み
 灰羽連盟 未視聴
 巌窟王 未視聴
 エヴァンゲリオン 未視聴(←これはいかんでしょ)
・今期視聴中のアニメ
 魔法少女まどかまぎか(放映休止ェ…)
 フラクタル(展開によってはレビュー)
☆レベルE 視聴中断
 STAR DRIVER 輝きのタクト
 GOSICK -ゴシック- 
みつどもえ増量中! 視聴終了
這いよる!ニャルアニ 視聴終了

書籍

人類は衰退しました⑥ 田中ロミオ ガガガ文庫 読了
☆ハーモニー 伊藤計劃作 ハヤカワ文庫 読了
☆孤の増殖 朝松健作 エンターブレイン 読了
・現在読み進めているもの
 モンテクリスト伯(全7巻) アレクサンドル・デュマ山内義雄岩波文庫                  
 草迷宮 泉鏡花岩波文庫
 富嶽百景走れメロス―他8篇 太宰治岩波文庫
 ぬばたま一休 朝松健作 朝日文庫
・これから読むもの
 虐殺器官 伊藤計劃作 ハヤカワ文庫
 舞姫うたかたの記―他3篇 森鴎外岩波文庫
 宇宙消失 グレッグ・イーガン山岸真訳 創元SF文庫
 鏡の国のアリス(誰の訳が良いでしょうか?)
 イリヤの空、UFOの夏 秋山瑞人電撃文庫
 火の鳥(漫画) 手塚治虫
・他に。太宰治宮沢賢治夏目漱石あたりは読もう 

2010年 私的アニメランキング ベスト10

今更感が漂いますが、2010年私的アニメランキング ベスト10を紹介します。
今年、全話視聴したアニメは10作品だったので、私が見たアニメは全て紹介することになります。眠たい頭で書いているので、内容が薄いのには勘弁ください(寝ろよ)
ネタばれは極力配慮してあるはず。



10位 WORKING!!

WORKING!! 1 【完全生産限定版】 [DVD]

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制作:A-1 Pictures 原作:高津カリノ(コミック)
個人的にアスミス(阿澄佳奈)分補給アニメでした。力を抜いて見られる、楽しい日常系アニメです。

9位 みつどもえ

制作:ブリッジ 原作:桜井のりお(コミック)
はちゃめちゃ小学生アニメ。↑の画像がだいたい物語ってくれています。2期が2011年冬に放送。

8位 世紀末オカルト学院

制作:A-1 Pictures(アニメオリジナル)
オカルト要素満載。最終回は賛否両論。よく作りこまれた世界観には脱帽でした。

7位 探偵オペラ ミルキィホームズ

制作:J.C.STAFF 原作:ブシロード、クロノギアクリエイティヴ(ゲーム発売に先駆けアニメ発表)
個人的にひたすらシャロたんが可愛かったアニメ。個性的なキャラクター勢でした。また、新人とは思えない声優陣がメインを張っています。ストーリーで見ても良作でした。

6位 そらのおとしものf

制作:AIC ASTA 原作:水無月すう(コミック)
アニメ2期。欲望に忠実な主人公の超下ネタなギャグパートと、主人公がひたすら格好良いシリアスパートのメリハリが溜まらないアニメでした。8話のイカロス(早見沙織)の演技は感涙モノ。また、エンディングの名曲カバーは心にくるものがあります。

5位 HEROMAN

HEROMAN Vol.1 (初回限定版) [Blu-ray]

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制作:ボンズ 原作:スタン・リー
いじめられっ子の主人公がHEROMANと地球外生命体に立ち向かうロボットアニメ。ボンズだけあって、戦闘の作画は素晴らしい出来。ストーリーは王道のベタベタですが、そこがいい!細かい描写も丁寧に作りこまれています。2クール作品。

4位 STAR DRIVER 輝きのタクト

制作:ボンズ(アニメオリジナル)
巨大な力を秘めた人型の像「サバディ」をめぐる、南十島の物語。このアニメの良いところは、人間関係が上手く描かれているところです。敵が絶対悪なのではなく、あくまで巨大な力の使用法で島民が対立関係になります。敵役や巫女の葛藤、人間ドラマが素晴らしい。ボンズ安定の戦闘シーン。年を跨いでの2クールで、まだ完結していませんが、2010年分だけで4位の評価です。

3位 はなまる幼稚園

はなまる幼稚園1 [Blu-ray]

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制作:GAINAX 原作:勇人(コミック)
かわいらしい園児たちの織りなす癒されエピソード満載(公式より) 癒されます。それは現代アニメに見られる萌えによってではなく、園児たちの心の純粋さに癒されます。コミックもそうですが、このアニメのエピソードは本当に綺麗な話ばかりです。そして土田先生の妹の健気さに惚れます。また、歌も素晴らしいクオリティです。OP,EDともにCDを購入した2010年唯一のアニメ。2期やってほしいなぁ……

2位 四畳半神話大系

四畳半神話大系 第1巻 [Blu-ray]

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制作:マッドハウス 原作:森見登美彦(小説)
平行世界モノ(ストーリー上重要なネタばれではないよね?) 独特の世界観を作り出し、演出がピカイチだったアニメ。悪友である小津がどういう立ち回りをしているかが見所。そして、なんといっても最終回が素晴らしかった。平行世界ものをどう締めるか、と期待と不安半々で見ていましたが、やられました。何が良かったかというと魅せ方、演出だと思います。主人公の独白とともに、ここぞとばかりに疾走感あふれる動きには一つの、あるべきアニメの姿というものが見えた気がします。

1位 Panty & Stocking with Garterbelt

Panty&Stocking with Garterbelt 特装版 第1巻 [Blu-ray]

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制作:GAINAX(アニメオリジナル)
超前衛的カートゥーン・アニメ風問題作。下ネタ満載ではあるけれど、エロスというよりは中学生ノリのようなスタンスで、でもそれでいてスタイリッシュで格好良い。(意味不明) 毎回違った魅せ方をしながら、作画が凄い!ビッチ(ピー)でどうしようもない天使なのに憧れる。言うなればロックな生き様。そして衝撃の最終回!果たして2期はあるのか!?
音楽も超センセーショナルでおファッキンな素晴らしさ。第22話の「HELP!二人はエンジェル」のPVを、2010年に制作したということには強いメッセージ性を感じられずにはいられませんでした。

以上、2010年私的アニメランキング ベスト10でした。

お話として読むSWAN SONG

紹介

エロゲ界で名を馳せた瀬戸口廉也のCarnival、キラ☆キラに並ぶ3部作の中の一つ。かつてないほどの大災害に建造物だけでなく人々の良心までも崩壊した被災地。主人公、尼子司は自閉症の少女を連れて、美しく生をまっとうしようとする。

SWAN SONG

SWAN SONG

お話として読むSWAN SONG(ネタばれ注意)

瀬戸口さんのテキストは、細やかで味のあるものでしたが、私はプレイ序盤、登場人物から人間らしさを感じられず違和感を覚えていました。その違和感は時間経過とともに薄れて行きましたが、今再考してみるとやはりSWAN SONGの登場人物は人間らしくないと言っていいように思います。
これは瀬戸口さんがSWAN SONGの登場人物に、それぞれ「役割」を持たせているからではないでしょうか。尼子は「どうしようもないもの」に戦う勇者。柚香は「どうしようもないもの」に屈し諦念した者。田能村は力を持っていながら「どうしようもないもの」から逃げる者(ちょっと違う気もします)鍬形はマイ正義によってではありましたが、「どうしようもないもの」に立ち向かった者。(だから瀬戸口さんは彼が好きなのでしょう)あ、雲雀はタノさんの嫁。まおまおかわいいよまおまお!
ですから、SWAN SONGがリアルじゃないという批判は意味を為さないように思います。この作品はお話(フィクション)として書かれているのです。だって尼子さんのように、あそこまでクールに世の不条理と戦えませんもん。ほとんどの人間が柚香のように、どこかで妥協しちゃうんです。
だから、こんな世の中だからこそ、瀬戸口さんは尼子司という非現実的な“人間の理想像”を書いたのではないか。人の生き方の理想像としての尼子司の提示。そして主人公の戦い続ける生き方はこんなにも美しいんだと、それを伝えたかったのではないか。尼子司の「どうしようもないもの」に対して抗う生き様は負け組なんかじゃない。尼子司の生き様(=あろえの組み立てたキリスト像)はこんなにも美しいんだと。極論がその思想を維持する上で必要とされるように、彼の真っ直ぐすぎた生き様が私たちの琴線に触れ、少しだけ彼を見習うようになるのです。
 

不条理と戦い続けることへの称賛×惰性にして得る快楽の肯定

前者が瀬戸口氏のSWAN SONGであることは言うまでもありません。ここにテキスト力の秀でた後者の内容を書くライターを紹介します。レイルソフトで活躍する、希(まれに)さんです。彼の書く主人公の堕落ぶりはまさに対極です。(というか、瀬戸口さんが惰性というものを嫌いすぎるのかも)

どうせ死んじゃうのなら 楽しい事ばっかり考えて過ごせばいいと思いませんか?
争ったり傷つけあったり、そういうのは 何だか余計な事みたいです
SWAN SONG 柚香の言葉

人の一生は、ずっと迷い続けているようなものではありませんか?
それならば、どうせ迷い続けているのなら。
本当に好きなところで迷い続けていたいと願うのは、いけないことなのでしょうか
神樹の館 紫織編(おそらく希氏による)

2人とも同様の内容をヒロインに吐かせますが、瀬戸口氏は主人公にそれを否定させるのに対し、希氏はそれを受け入れるストーリー展開を書いています。

ちなみに

神樹の館田中ロミオさんが手懸けたことになっていますが、ロミオさんはロミオさんでこんなカコイイこと言ってます。

行き先が分からないのと道に迷うのは違う
神樹の館(おそらくロミオ氏による)

 

プリンセスチュチュ

紹介文

2002年の名作アニメ、プリンセスチュチュ。バレエとクラシック音楽を主軸に置いた、セーラームーンを手掛けた伊藤郁子×佐藤順一によるアニメ。芸術性の高いその物語は、ストーリーから見ても大変素晴らしい出来となっています。物語の扱うテーマも、愛や心について哲学的アプローチを仕掛けながら、バレエやクラシックの音楽的、物語的意味も深く関わっており、子どもから大人まで視聴者それぞれ多面的な楽しみ方ができるアニメです。物語終盤の盛り上がりは圧巻。
 

考察的な何か(ネタばれ注意)

このエントリーでは、雛の章からフィナーレにかけてのメタ構造について少し考えて、このアニメが何を伝えたかったのか(=私が何を受け取ったのか)を書きまs・・・書けたらいいなぁ。
後半の雛の章では物語と現実が混じり合い、物語に引っ張られていく現実、そのドロッセルマイヤーに定められた「運命」に登場人物が抗おうとする、といった興味深い物語構造を取っています。金冠町がドロッセルマイヤーの物語に支配されていることを登場人物たちが知ってしまうと、彼らは自分が操られているのではないか、自分は自身の意思によって行動できているのかと疑念や不安を抱きます。そして彼の描く物語の悲劇的な終焉を知った主人公たちは、その運命に抗うことで、自身の自由意思を回復します。つまり、登場人物の自由意思が危ぶまれるのは、神(ドロッセルマイヤー)の存在を知ってしまったからで、それが神(絶対的運命)と戦うことによって回復されるということです。戦った結果(エンディング)はそれ自体ではHAPPY ENDと断言しづらいものですが*1、本当の自分の姿にもどることの意義を見つけ、決められた運命に抗うという過程がそれをHAPPY ENDにしているのだと思います。

 全てを受け入れる者に幸いあれ 全てにあらがう者に栄光を
  21.AKT 「紡ぐ者たち」

物語内では、あらがうべき運命は悲劇的終焉という形で表現されていました。では、アニメは私たちに一体、何に対して抗えと伝えているのか。それは多くの物語で何度もテーマとなってきたもの。猫先生があひるに何度も言っていたことではないでしょうか。

 自分には何もできない。そう決めてしまって、前に進もうとしていないのではありませんか。
  21.AKT 「紡ぐ者たち」
 夢に手が届きそうにないと感じることは、誰しもあるものです。ですが、自分には絶対にできないと決めてしまうのは、やる気のない自分を慰めることでしかありませんよ。自分の気持ちを誤魔化してはいませんか。
  22.AKT 「石の冠」

アニメの中でも、あひる、みゅうと、るぅ、ふぁきあ皆が自分の本当の気持ちについて苦悩する場面が多々見られ、それによって3人があひると協力したり対立したりする体を取っていました。*2また、チュチュのバレエは王子にまどわされた女性の本当の気持ちを導くものでした。 
プリンセスチュチュは私たちに誤魔化された気持ち、勝手に決めた限界やつまらない未来と戦って、本当にしたいことをする勇気を与えてくれます。*3

余談 Rewrite-リライト-との関連性

話が変わりますが、2011年4月28日発売のRewrite*4を全力で応援中!!Rewriteとは「書きかえる」ことですが、公式ホームページにも「――書き換えることが出来るだろうか。彼女の、その運命を。」とあります。
物語構成上、チュチュと関連性があるかもしれんぞ……!!

*1:あひるは鳥のあひるに戻り、王子には告白もできず結ばれることもありません。最終話で美しい白鳥になって王子を助ける想像をしていました(笑)

*2:愛することと愛されること、王子の心を戻すかどうか、物語を書くのかどうかなど

*3:と思えば、物語自体が多少難しくてもやっぱりチュチュは少女アニメなのかもしれません

*4:Keyより発売のゲーム

はじめに

このブログについて

「ピーナッツ入り柿の種を手にピーナッツがイヤなどという弱音は、
 ピーナッツ入り柿の種の尊厳を損なうものだからだ」
                                CROSS†CHANNEL


 このブログは、様々な作品について批評を試みるものです。その際、かの桜庭の名言(↑)を心に留めたいと思います。