SpringはエンタープライズJava開発者に夢と希望を与えている

Spring Frameworkというと、Seasar2と共にDIとAOPの軽量コンテナーとして知られており、オープンソースJavaフレームワークであるというというのがいまだに多くのJava開発者の間では常識かもしれません。しかし、SpringSource社が2009年の夏にVMWare社に買収されてから、クラウド上の標準Javaアプリケーション開発プラットフォームとしての色彩を急激に濃くしているようです。残念ながらJavaEE標準が現時点では明確なクラウド対応の標準プラットフォームにはなっていないこともあり、クラウドの時代になってJava開発者は今後どうすればよいのだろうとちょっと不安になってしまうところもあったのですが、デファクトスタンダードであるSpringベースのアプリケーションが今後クラウド環境上で動作するようになるのであれば、現在のフレームワークの知識も生かせるし、将来に対してちょっと希望を持てますね。Springのクラウド対応については、現在いろいろなものが存在していてちょっと理解が難しいのですが、以下にまとめます。
まず、買収直後に発表されたCloud Foundryというのがあります。

Spring のCEO のRod Johnson氏が、強調したのは、SpringSourceは、開発者がクラウド技術を無意識に利用できるようにして、彼らの日々の開発業務や作っているアーキテクチャにおける混乱をできるだけ小さくしたい、ということであった。

つまり、IaaS(Amazon EC2)上にSpringベースのアプリケーション実行環境をPaaSとして提供することで、独自言語や独自APIに制約されるForce.comやGAEのようなPaaS環境と違ってベンダーロックインしないし、開発者も既存のスキルを活用できるという考え方のようです。現時点ではベータ版で、実行環境もEC2に限られるようですが、SpringはOpen PaaSという考え方を提唱しているため、今後はプライベートクラウドなどを含めてより広いターゲットへの配置が可能になるかもしれません。
それから、昨年の春ごろにはForce.comとの提携が発表され、VMforceという製品が発表されました。現時点ではまだ開発途中で、一般には公開されていませんが、早ければ今年中には利用できるようになるかもしれません。ダウンロードできないため中身の詳細は不明なのですが、発表されているデモの内容からは、VMWareの仮想環境であるvSphere環境上にデプロイした普通のSpringアプリケーションをSalesforceのデータベースやサービスと連携させるAPIがセットになったもののようです。

VMforce は、POJOJSPサーブレットなどの標準的なJavaコードを、人気の高い Spring フレームワークとあわせてサポートします。VMforce では、既存のエンタープライズ Java アプリケーションをクラウドへ移行するのも簡単に行え、クラウドのロックインを回避することができます。

だから、Force.comのApex言語がJavaで置き換わるというイメージではなく、あくまでもForce.com環境とは切り離されたJavaアプリケーションとして配置されるため、GAEなどと違い普通のRDBを使ったSpringアプリケーションを配置できるし、おそらく、オンプレミスの環境やプライベートクラウドへの配置も可能になるのではないかと想像しています。発想はMicrosoftのAzureに近いかもしれません。
それから、SpringはGoogleとの連携も行っています。
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この連携により、Spring Tool Suite上で開発したSpringアプリケーションをGAE上に配置することが可能になるようです。また、最近ではSpring RooアプリもGAE上への配置をサポートしているみたいですね。
最近は、SI業界の不人気からか

java業務アプリなんか書いてるのはとっくの昔に負け組。

SI業界からはさっさと抜けだしたほうがいい。
サービスを作る側に回ったほうがいい。

などという極端な意見がよく聞かれるようになりましたが、このような発言がまことしやかに語られるのは世界の中でも日本くらいなのではないでしょうか。むしろ、世界ではクラウドの登場により、本当の意味でのSIというものが必要とされる時代になってきていると私は思いますし、エンタープライズアプリケーション開発者もプロフェッショナルな本物の仕事のできる人は引き続き多くの需要があると考えています。
(追記)
AmazonもついにJavaエンタープライズPaaSのビジネスに参入してきたようです。VMWareGoogleとの対決はどうなるのでしょうか。いずれにしても、従来のJava EE開発のスキルをクラウド上で活用できそうです。
Amazon、BeanstalkでPaaSに参入