変分法 その3

"その2"に引き続き,変分法の計算例のお話です


【最速降下曲線】
重力のみが作用する仮定で,任意の2点A, B(ポテンシャルはA>B)を考えます
物体がA点を速度0で出発してからB点に達するまでの所要時間が最短となるのはどんな曲線か?という有名な問題です
答えは直線や円弧ではありません('A`)
実際に変分法を使って計算してみましょう
brachistochrone curve.wxm

y : 曲線
y' : dy/dx
ds : 線素(line element)の長さ
g, m : 重力加速度と物体の質量
T : 所要時間
%o2にてyとy'がxに依存することを宣言します(画面出力は省略)
曲線yの線素dsの長さを%o3式に示します
dsを走過する時間dtの定義を%o4式に示します
運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの関係を%o5式に示します
上式を速度vについて解いた結果でdtを書き直したものを被積分関数Fとして%o6式に示します
形式的に書きますが,所要時間TはFの作用(区間A-Bの積分)として%o7式で与えられます
この汎関数Tを最小化する(Tの第一変分δT = 0 を満足する)yを求める問題ということになります



Fの作用を最小化する問題かつFがxに陽(explicit)に依存しないのでベルトラミの公式(Beltrami identity)が使えます(%o8)
Fを%o8式に代入して偏微分を計算し,ついでにy'も書き直した結果を%o10式に示します
aとgを書き換える新しい定数Aの定義を%o11式に示します
%o10式を%o11式の関係を使って%o12式に書き換えます
上式をdy/dxについて解いた結果%o13式を得ます


この1階の常微分方程式の解はサイクロイド曲線(cycloid)を与えます
これが求める最速降下曲線(Brachistochrone curve)となります



実際にグラフに描いて確認してみましょう('A`)
A = -1 としたときのサイクロイド曲線の媒介変数表示を%o15, 16式に示します
サイクロイド曲線をxが0からπの範囲で%t17にプロットします


youtube"Brachistochrone curve"を検索すると,実験動画がいくつか見れます
サイクロイド曲線は最速降下を与える以外にも等時性(isochronous)という重要な性質もあります
空気抵抗や摩擦がある場合,最速降下曲線はサイクロイド曲線から外れたものになります