大勝負

井上梅次監督、東映作品(1965)。NHK-BSの録画。
江戸後期の上州真岡の宿。土地の顔役が御上から十手を預かり、権力をかさに街を仕切っていた。新しく赴任して来た代官もこれには手を出せない。ちょうどそのとき、越後訛りの小汚い下級武士を片岡千恵蔵。相変わらずの気障な渡世人大川橋蔵。旅の一座の女座長で高千穂ひづるが街に現われる。はてさて彼らの正体は何か。目的は何か、そして街に平和は戻るのか。
娯楽映画のプロットをいくつもぶち込んだ派手な展開に大満足。これを90分にしているんだよね。これって枝葉を広げれば、2時間の大作に簡単になるし、それでも飽きないと思う。それを端折って贅沢に急いでまとめているんだよね。勿体ない。
モブシーンがいくつもあるのですが、ワンカットごとに100人ほど出て芝居をしている。きちんと画面が豪華になるように上手く立ち位置が計算されている。そういえば東映東京で撮った『暗黒街最後の日』も大部屋、エキストラが山ほど出ていたなあ。わかりやすいスペクタクルの効果ですね。監督はモブシーンの仕切りに自信があるのだろう。前提として早撮りだからできるのだろう。
東映時代劇でもあまり見たことのない、街外れの小山の上にある神社のシーンなど収まりがいい。階段の高さが見事にアクセントになっている。
たぶん京都のスタッフの発想やしがらみだと、どうしても昔の時代劇のリメイク(大御所のシナリオライターに力があったり、製作部も昔のヒットよもう一度)を題材にしてしまい、外国映画や小説の換骨堕胎の発想にはならなかったのではないか。そういう東京と京都の温度差があったんじゃないか。まあこの映画がどれだけ受けたのかわからないけど、いまの眼から観ても面白いからね。モダンだと思うよ。
でもさ、そもそも(時代劇)映画の初期は、パクリだらけだったわけで、それが血となり骨になって面白い日本映画が出来てきたのだと思う。それがお手盛りになってしまうと、日本人のクセでこじんまりとまとまっちゃうんだよね。
逆に言うとだから井上梅次はフリーで渡り歩けたと思うし、フリーにならざるを得なかったのだろう。