小俣龍の「龍の言い分」

2017-08-09 AI(人工知能)が産業と仕事を変える![ 2017年8月9日 ]

今年の5月、世界中を驚かせるニュースが飛び込んできた。

Google(グーグル)傘下の企業・ディープマインド社が開発したAI(人工知能)の囲碁ソフト「アルファ碁」が、世界NO1棋士である中国の柯潔(カケツ)名人に圧勝したというのだ。

試合の始まる前は、「アルファ碁に負ける気がしない」、と自信満々の柯潔であったが、この敗戦には相当のショックを受けているという。3戦して1勝も出来なかったのだから、ショックを受けるのも当然であろう。下の写真は初戦の対局風景である。



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アルファ碁と対決する柯潔(カケツ)(GIMODO HPより)



この写真には、アルファ碁のもの凄い実力を示すヒントが隠されている。それは、画面右上の「残り時間」である。この対戦は考えるための「持ち時間」が、各3時間以内で争われた。

人間の方の残り時間が13分ちょっとに対して、アルファ碁は1時間29分も残っている。

アルファ碁が迅速に次の手を打ったのに対して、人間は苦悩に苦悩を重ねたことが分かる。

実は、ゲームの世界におけるAIと人間の対決の歴史は古い。

チェスや将棋、囲碁などのボードゲームの世界で、真っ先にコンピュータが人間を負かすようになったのはチェスであった。1988年、AI(IBM)がチェスの世界チャンピオンを破ったのだ。

次いで将棋である。2013年の「将棋電王戦」で、AIが人間を上回った。

一方、その当時、囲碁の世界だけは別で、AIが人間のトップクラスの棋士に勝つのは相当先になると考えられていた。それは、囲碁の盤面は無限のように広く、チェスの指し手のシナリオが10の60乗程度なのに対し、囲碁の指し手は10の700乗にも上るとの理由からであった。

そのような予測をあっけなく覆し、AI囲碁は世界最高レベルの棋力を獲得するに至っている。AIのこのような急速な発達は、コンピュータが、?深層学習(ディープラーニング)“、と呼ばれる人間の頭脳と同じような自己学習能力を獲得することによって成し遂げられたという。

AIは、古今東西に残されている膨大な囲碁の棋譜(指し手の順序と勝敗の結果)を覚え込み、自己学習を重ねながら最善の指し手を覚え込んでいく。それを猛烈なスピードでこなすのだ。

そのAIが、ゲームの世界のみならず、様々な産業と多様な人間の仕事を変えようとしている。



IBMの人口知能「ワトソン」



まず、下の写真をご覧になって頂きたい。米・バージニア州のヒルトン・ホテルで働くAIロボットのコニー君である。ヒルトン・ホテルは、IBMの開発したAI(人工知能)コンピュータ・ワトソンを使って、このロボットを開発したのである。コニー君の役割はコンシェルジェ(お客対応係)である。



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ヒルトンホテルが開発したAIロボット( “Revolution 4” HPより)



YouTubeによって、コニー君の見事な接客ぶりを確認することが出来る。

お客の挨拶に答え、お客の要望をすぐさま理解して、近所のレストランの案内をしてくれるし、空港までの最適ルートを選んで、所要時間等を回答をしてくれるのである。実に自然な会話である。

IBMがワトソンを開発したのは2013年のことであるが、IBMのこのコンピュータに寄せる期待の大きさは、そのネーミングに表れている。「ワトソン」という名前は、名探偵シャーロック・ホームズの相棒ではなく、IBMの実質的な創業者であるトーマス・J・ワトソンから採ったというのだ。

ワトソンは、自然言語を理解し、あらゆる質問に対して、大量の情報の中から最適な回答を選び出すことが出来るという。情報は文書系のテキストだけなく、画像や音声、動画の外に、MRIやレントゲンなどの医療データも対象として加えられるという。

このため、ワトソンの活用分野は、企業のコールセンターやホテルのコンセルジェなどの顧客サービスだけでなく、医療データの解析による自動診断分野への利用などに拡大しているという。

日本での利用は2015年から始まっているが、色々な分野で興味深い実践例が相次いでいる。

このワトソンの凄さを手軽にインターネットで確認することが出来るというので、早速、試してみた。

なるべく長文の文章を入力すると、その人間の特徴を言い当ててくれるというのだ。

筆者は自分のエッセイ1ページ分を入れてみた。その結果示された筆者の人物像はこうであった。


分析好きなタイプであり、内部志向型なタイプであり、また冒険的なタイプです: 新しい経験をすることを熱望しています. 哲学的なタイプです: 新しいアイディアに興味をそそられ、進んで受け入れ、探求することを好みます. また、几帳面なタイプです: 規則正しい生活を強く望んでいます. 最高の成果が得られるよう、自分自身で目標を設定する傾向があります.


仕事仲間や女房は、「ドンピシャじゃない!」、と言っている。“ワトソン、恐るべし”、である。



完全自動運転車時代の到来



このAI(人工知能)の能力を最高度に発揮した究極の乗り物が完全自動運転車である。自動運転車は、運転機能のレベルによって、レベル1〜レベル5まである。現在は、レベル1〜レベル3程度のクルマが実現しているが、レベル5になると、クルマの運転に人間は一切かかわらなくなる。

クルマに搭載されているミリ波レーダー、レーザースキャナーやカメラなどから集められた膨大な量の周辺状況を瞬時に読み取り、人間なしで安全な運転操作を行うのがレベル5の完全自動運転車である。このクルマは、自らの責任による交通事故を絶対に起こさない究極の安全車である。

かつては完全自動運転車時代の到来は、2025年〜2030年頃と想定されていたが、その到来が2020年代初頭へと早まりそうである(「週刊 エコノミスト 2017年6月27日号」、特集記事より)。一方、この「エコノミスト」の特集記事によれば、完全自動運転車は、通常のオーナーズカーの外に、「小型ポッド」と「コミュータ」の3種類に集約されていく見通しだという。

「小型ポッド」は上の写真、「コミュータ」は下のクルマである。

実は、この両者とも、国家戦略特区などで、実際に実証実験が進められているクルマである。



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自動運転車「小型ポッド」(「EPC」HPより) 

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 自動運転車「コミュータ」(「オートックワン」HPより )



「小型ポッド」は、1〜2人乗りの比較的簡素な乗り物であり、市街地や郊外での、駅〜目的地といった短距離移動に使われるという。主婦や学生たちの下駄代わりの移動手段ということができる。

これに対し、「コミュータ」は、別名「ロボットシャトル」である。4人以上の相乗りタイプであり、大きな収納スペースを持ち、郊外や市街地における中距離移動を主用途とすることになるという。

決まった路線を時間通りに走るバスと違って、乗りたい人と行き先をAI(人工知能)が適切に組み合わせて、最短で人々を目的地まで届けてくれるという。

大事なことは、「小型ポッド」も「コミュータ」も個々人が保有するのではなく、相乗りに変わっていくということである。AIの発達は、この“相乗り”(シェアリング)を大幅に促進することになるという。この移動手段の大変革が、2020年の東京オリンピックを契機として一気に開花しそうなのである。

移動の大変革はバスや鉄道、タクシーといった既存の産業の根幹を揺るがすことは間違いない。

さらに、AIやロボットなどの技術革新は、多くの産業や職業に大きな変革をもたらすことになる。



AI(人工知能)などで消える産業と職業



7月27日の日本経済新聞(朝刊)は、1面トップで主要企業の本年度研究開発費が、近年では最大の伸びに達する見込みだと伝えていた。調査した大企業のうち、4割の企業が過去最高の投資額に達する見込みだという。主要企業の研究開発費の総額は前年比で5.7%増だという。

上位10社の投資額とその目的を眺めてみると、共通する傾向が浮かび上がってくる。

1位:トヨタ自動車(1兆500億円、自動運転)、2位:ホンダ(7、500億円、AIと自動運転)、3位:日産自動車(5、250億円、AI、大容量電池)、6位:デンソー(4、250億円、自動運転)となっている。自動車や自動車部品メーカーは、自動運転とAIに死にもの狂いで取り組んでいるのである。

また、4位:ソニー(4、500億円、クルマ向け画像センサー、AI)、5位:パナソニック(4、500億円、AI、運転支援システム)、7位:日立(3、500億円、AI、ロボット)などとなっており、電気機器メーカーも、自動車メーカーなどと明らかに同じ方向を向いている。

実は、日本企業はAIやロボット、自動運転など第四次産業革命への取組で、欧米企業に大きく後れを取っており、これを猛烈な勢いでキャッチアップしようとしている。追いつき、追い越そうとする時の日本企業の集中力と突進力は、世界の中でも群を抜いている。AIやロボット、自動運転などの急激な進展によって、今後の日本の産業構造は大きく変貌を遂げようとしている。

一方、先に紹介した「週刊 エコノミスト」は、同じ号で、「AIで無くなる仕事、残る仕事」、という興味深い調査結果を公表している。この調査は、野村総合研究所が英オックスフォード大学と共同で行ったものである。30の業種を対象として、その中の200の業務が、2030年頃における技術によって、どの程度自動化されそうなのかを予測したのだ。自動化率の上位を並べてみよう。



(業種)  (個別の職業)   自動化率(%)

会計事務   ・経理事務員    99.8

      ・銀行窓口係    99.4

運輸・郵便 ・郵便事務員     99.5

      ・駅務員       97.8

営業・販売  ・保険事務員     99.4

商品販売   ・スーパー店員    99.2

      ・レジ係        99.7

運輸・輸送 ・電車運転士      99.8

      ・タクシー運転者    95.4

      ・トラック運転者    94.7



自動運転によって運転手の仕事が、AIによって単純事務作業が消えてなくなるというのである。

ショッキングな結果ではあるが、付加価値の小さい単純労働から人間が開放され、より高度で“人間的な”業務へのシフトが猛烈な勢いで進むと考えると、それは決して悪いことではない。


≪ 結論 ≫


自動運転自動車は、これまでの自動車に依存をしてきた産業に多大な影響を与える筈である。

多分、運転免許証は不要となるため、自動車教習所という産業の存続が危うくなる。

また、自動車事故というリスクを補償する自動車保険や自賠責保険市場も縮小する筈である。

そうなると、自動車保険や自賠責に売上の6割を頼っている損保会社への影響は必至である。

これからの10年間は、産業や仕事のあり方が大きく変貌する時代になりそうである。

TAKEI SUGURUTAKEI SUGURU 2017/08/28 16:47 はじめまして。
東京で番組制作に携わっているTAKEIと申します。
小俣さまがアップしておられる画像を使用させていただけないかと思いご連絡いたしました。
よろしければ、直接メールでやりとりさせていただきたいのですが、いかがでしょうか?

suguru.takei@hiho.tv


2015-05-11 戦国時代の超巨大プロジェクト!  
[2015年5月10日]
http://d.hatena.ne.jp/ryu-omata/20150511

上記URLにアップしておられる安土城 巨石運搬の模型図
の画像をお借りしたいと思っております。
「旅の空」ブログを運営しておられる方にもご連絡しております。