青もみじ巡り(10) 西塔。

家で飲んでいると、時として酷く酔ってしまうこととなる。
昨日もそう。途中で眠ってしまった。よくぞ椅子から落ちなかったもの。書くべきことが抜け落ちている。
横川で出家した吉田兼好、元三大師堂へも行っている、ということのからみで出てきた『徒然草』第238段、とても面白いんだ、とは記した。兼好法師、自慢話をするんだ。7つも。漢詩や書についての自慢話を、と。他にも、『論語』や『古今和歌集』などについても。
インテリ中のインテリである吉田兼好、他の者を唸らせるこれらの知識を持っていて、それは当然である。それを自慢する、というのは、まあ、可愛げがある、といえば可愛げがある、と言っていい。
問題は、7番目の自慢話のことである。
昨日、酔っぱらってしまい、ころっと抜け落ちてしまった、兼好法師最後の自慢話である。これが面白いんだ。
こういう自慢話。
<二月十五日、月明かき夜、・・・・・、千本の寺に詣でて、・・・・・、一人、顔深く隠して聴聞し侍りしに、優なる女の、姿・匂ひ、人より殊なるが、分け入りて、膝に居懸かれば、匂ひなども移るばかりなれば、便悪しと思ひて、擦り退きたるに、猶、居寄りて、同じ様なれば、立ちぬ。その後、・・・・・>、と続いていく。
満月が明るい夜のことである。吉田兼好、千本釈迦堂で、妖艶な女性にしなだれかかってこられるんだ。薫きこめたお香の香りが、兼好法師の体に移るほどに。これはまずい、と体を避けるが、それでもその妖艶な美人はすり寄ってくる。で、仕方なく立ち去った、と兼好法師は記しているんだ。
兼好法師、可愛いらしくも、このことを自慢しているんだ。
オレは、凄く妖艶な美人に言い寄られたんだ、と。
次には、オレは、自制心を取り戻し、その誘惑を撥ねつけたんだ、と。
さらに、この後、ある御所の女房から、「あなたのことを、無粋な人だと恨んでいる女人がいますよ」、と聞いたことが記される。
これも兼好法師の自慢話である。いわば、振った女の恨み節なんだから。
さらに、あとひとつあるが、とびきりの知識人、教養人である吉田兼好といえど、自慢話の誘惑には勝てなかった、ということである、な。面白い。
このこと、昨日、酔っぱらって眠ってしまい抜け落ちてしまった。
横川からシャトルバスで約10分、西塔へ行く。

西塔エリアも青もみじ。
でも、眠くなった。
眠ってしまわない内に、今日は、寝よう。