ミスリード。

ミスリードってことは恐ろしい。
トランプ陣営お得意のフェイクニュースもミスリードを狙ってのものであるが、それは目的があってのもの。思いは解る。しかし、ご本人がミスリードという考えなどまるでなく結果としてミスリードしていく、というのは始末が悪い。
今しがた、村田諒太はWBA世界ミドル級王座決定戦でアッサン・エンダムに判定で敗れた。それも、2対1のスプリット。帝拳の会長が怒っているが、それは理解できる。
しかし、フジのライブ中継での解説者ばかりでなく何人もの元世界チャンプが、この判定はおかしい、明らかに村田諒太が勝っていた、と言っている。誰も村田諒太は負けていた、と言わない。
おかしい。そのような専門家連中が、一般のボクシングフアンをミスリードする。
先ほどの試合、私は村田は負けたな、と思った。あれじゃ勝てない、と。
実は、勝てた試合であった。だから、負けたことはとても残念だ。
それ以上に、今日の村田諒太の戦いぶりで勝った、と言っている元チャンプや専門家のミスリードが腹立たしい。ボクシングが好きなフアンの目を曇らせる。そのミスリードで。

アッサン・エンダムはカメルーン生まれのフランス人。37戦35勝21KO。世界ランク1位。
村田諒太はご存じロンドン五輪のゴールドメダリスト。12戦12勝9KO。世界ランク2位。
で、両者で決定戦。

1ラウンド、村田諒太はガードを固めまったく手を出さない。
エンダムはジャブからフックとパンチをくりだす。
1Rが終わった後のインターバル時、レポートが入る。村田サイドは、「1Rは100パーセントと言っている」、と。私は驚いた。そして思った。この試合は村田は負ける、勝てない、と。
だってボクシングでガードを固めるのみでパンチを出さないなんて、勝てるワケがない。それが100パーセントなんて、セコンドは何考えてんだ。
実は、村田のセコンドも村田をミスリードしていた。残念でならない。

2ラウンドに入っても村田はガードを固め手を出さない。エンダムは数多くのパンチをくりだす。村田はガードを固め、エンダムのパンチをブロックしている。エンダム、有効打は入らないが、手数は多い。
村田諒太というより村田陣営、帝拳は何考えてんだ。

4ラウンド、村田の右ストレートでエンダムがダウン。一瞬のストレートであった。

5R、村田のパンチでエンダムの腰が砕けるも立ち直る。

その後も村田のパンチでエンダムがふらつくことがある。しかし、エンダムは倒れない。むしろ村田のパンチの数倍のパンチをくりだしてくる。
中盤以降、エンダムは足を使ってくる。中継のアナウンサー、「エンダムは逃げている」なんてことも言っている。が、私には「チョウのように舞い、ハチのように刺す」ムハメド・アリを思い起こさせた。
パンチ力は村田の方が強い。しかし、くりだすパンチは圧倒的にエンダムの方が多い。判定になれば村田の勝ちはない。ボクシングを少しでも知る者には解る。
が、フジの中継アナウンサーや解説者は村田の世界王者が近づいている、なんてノーテンキなことを言っている。

11Rと最終の12Rとのインターバルでの村田諒太。
大きなパンチは貰っていない。しかし、村田陣営の思考、戦略、状況判断、村田諒太をミスリードしていた。

最終ラウンド前のインターバルでのエンダム。そのダメージは村田より大きい。

12ラウンドを戦った両者、ジャッジペーパーの発表を待つ。両者共手をあげている。

勝者は、2対1のスプリットでアッサン・エンダム。
当然である。今のボクシングの流れを見ると、それが当然。
ジャッジペーパーを子細に見ると、パナマとカナダのジャッジが3から5ポイント差でエンダム。それに対しアメリカのジャッジは7ポイント差で村田諒太の勝ち、としている。
もし、この試合、ラスヴェガスで行われていたら、村田諒太の圧勝というジャッジが出たのかもしれない。しかし、ラスヴェガス以外では今日のジャッジが本流、妥当。それに反する専門家の意見はミスリードとなる。

判定が発表された後の村田諒太、こういう顔をした。
勝てたのに、という思いがあったのであろう。
そうなんだ。打ち合いにもっていけば、確実に村田諒太が勝ったであろう。
幾重にもそれを惜しむ。