白鵬の張り差し。

このところの白鵬、張り差しを多用している。昨日で優勝を決めた後の今日の豪栄道との一番でも、左から張って組みとめた。
そればかりではない。
表彰式での優勝インタビューでも、白鵬、張り差しを決めた。その張り差しは、日本相撲協会への、いやそれ以上に日本社会全体へのものであり、いわば、白鵬の先制攻撃と言ってもいいものであった。理事長の八角ごときに対応できるものではない。

一年納めの九州場所千秋楽、今日の白鵬土俵入り。
決まっている。
大鵬や千代の富士を遥かに凌駕する優勝回数も。

納めの場所の星取。
39歳で幕内へ返り咲いた安美錦、勝ち越し敢闘賞を受賞。
甘いんじゃないかって気もするが、これも大相撲なんだ。涙目、涙声の受賞インタビューを聴いていると、よかったって思えるもの。

初三役の阿武咲は、勝ち越して三役の地位を守った。
私が贔屓する醜男・御嶽海は9勝を挙げた。解説の北の富士、「三役の風格が出てきたな」と語る。確かにそう思う。
が、御嶽海が今日、嘉風を破ったので、嘉風、来場所の三役陥落が確実となってしまう。ウーン、致しかたなし。
嘉風と小結で負け越した琴奨菊、このふたりが空いた来場所の三役には、東西の前頭筆頭の玉鷲と貴景勝が上るであろう。

日馬富士、稀勢の里、鶴竜、高安、照ノ富士、・・・、・・・の休場。何て歪な場所であったことか。

表彰式前の国歌斉唱。
土俵の向こうに理事長の八角はじめ協会のお歴々が並んでいるが、貴乃花の顔は見えず。巡業部長はやや閑職、もともとこの場には立ち会わなかったのかもしれないが。

八角の挨拶。

白鵬の優勝インタビューとなった。
白鵬、こう語りだす。
「まずこの場をお借りして、場所中に水を差すことになってしまいましたことを、力士代表としてお詫びしたいと思います」、と語りだす。
「私は15歳で来日し、62キロの少年が・・・」、とも。
心憎いよ、白鵬のこの語り出し。情緒に訴える、速攻の張り差しだ。

さらに白鵬、こう語る。
「この土俵の横で誓います。場所後に真実を話し、膿を出しきって、日馬富士関と貴ノ岩関を再びこの土俵に上げてあげたいなと思います」、と。

白鵬、さらにこう語る。
「みんなで万歳三唱をやりましょう」、と。
解説の北の富士、「万歳三唱はやりすぎ」と言っていたが、白鵬、観客の心を掴んだ。

皆さん、白鵬に合わせ万歳三唱をしている。
白鵬、力士代表としてばかりでなく、いや、それ以上にモンゴル力士の盟主として、場合によっては引退に追いこまれるかもしれない日馬富士と貴ノ岩に援軍を送った。
明日、横審が開かれる。明後日には理事長・八角がスポーツ庁長官の鈴木大地に今回の騒動の報告をしなければならない。その後には、全力士への八角の講話がある。30日には協会の理事会がある。
しかし、その解決に協会はもたもたしている。

白鵬の張り差し、先制攻撃とも言える今日の挨拶、それらすべてに影響を及ぼすことであろう。