第20回文化庁メディア芸術祭(3) あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。

天井から枠(フレーム)がぶら下がっている。

フレームは12個ある。
他にプロジェクター、ビデオカメラ、パソコンで構成されている。

フレームは、鏡のフレーム、スクリーンのフレーム、素通しのフレーム。

アート部門新人賞のこのような作品である。
メディアインスタレーション、作家は津田道子。
それにしても不思議なタイトル。「あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。」って。
作家・津田道子が<自由間接話法の典型的な英文に由来している>、と記しているが、それがこのような日本文になるのであろう。なお、英文では、”You would come back there to see me again the following day.”。
これも持って回った文言だが、作家・津田道子が言わんとしていることは、「翌日」と「そこ」→「今」と「ここ」の関係。主体と客体と言ってもいい。
現実とバーチャルでもあるし、1年前に登場したトランプ現象でいえばリアルとフェイクとも言える。
私は幸運であった。
私が行った日には、作家・津田道子のギャラリ−トークがあった。ギャラリートークは4時45分から。3、40分、他の作品で時間を潰していた。

戻ってくると、作家・津田道子はマイクを手にしている。
「あなたのこと、撮ってもいいですか?」、と訊いた。「いいですよ」、と返ってきた。「あのー、私は雑駁なブログをやっているのですが、そこにあなたを載せてもいいですか?」、と訊いた。作家の答えは、「どうぞ」。

作家・津田道子のギャラリートークが始まる。
この場面でも幾つものフレームが見られる。

現実とバーチャル。

フレームは3つある。
鏡のフレーム、スクリーンのフレーム、そして素通しのフレーム。
「空間」という概念が浮かんでくる。
飛んでいるんだ、作家は。
空間を。

このフレームは何であろう。

作家・津田道子、ロープを取りだした。

素通しのフレームに通し引っぱる。

皆さん、向こうの方を見ている。

どのフレームに何が出てくるか。

それがよく分からないんだ。
だから、皆さん・・・
それはそうと、このロープの件は、私の頭ではよく解らなかった。

ギャラリートークも終わりに近づく。

それにしても30代半ばの津田道子、存在感がある。
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3、40分のトークの後、津田道子、上着を脱ぎすてた。
津田道子、メディアアーティストであり、パフォーマーでもある。

12のフレームの中にいつどこで現れるのかは、分からない。それが楽しみ。
私も楽しんだ。

津田道子、アート部門で日本人でただ一人の新人賞を取っていた。
東京藝大大学院で映像メディア学を専攻した津田道子、国内のみならず海外のあちこちで個展やパフォーマンス、インスタレーションを行っている。
その津田が新人賞とは、いささかの違和感を覚えるが、文化庁、国のレベルではそうなんだろう。
その内、そう遠くない日にこの世におさらばするであろう私、今年も文化庁のメディア芸術祭を楽しんだ。能天気に。