パラリンピック(5) 走る。

堪え性がなくなった。4月になってしまった。パラリンピック、あと少し。
アルペンやスノボーも面白いが、ノルディックも面白い。ただ走るだけ。その面白さ、陸上のマラソンと同じ。マラソンというもの、ただ走るのを、時として飯も食わずトイレにも行かずにただ見ている。2時間以上も。
何が面白いのかって言っても、ただ見ているのが面白いのだからしようがない。
ただ走るスキーノルディックもそう。

スキージャンプの葛西紀明はオリンピックに8回も出場、「レジェンド」と呼ばれているが、パラリンピックにも「レジェンド」がいるそうだ。
長野パラリンピックから6回出場のスキーノルディックの新田佳浩。
新田佳浩、ピョンチャンでも男子スプリント・クラシカル(立位)で銀、10kmクラシカル(立位)では金をとった。
新田佳浩、強い。身体も心も。


たしか9日目。スキーノルディック男子10kmクラシカル(立位)。10キロ、2.5キロのコースを4周する。
新田佳浩、左腕を切断している。障害の度合いを示すファクターは91%。ストックは右腕一本。
新田佳浩、スタートしたすぐ後転倒した。しかし新田、冷静に対処し持ち直した。さすが「パラリンピックのレジェンド」である。
ところで上の写真、既に半分は経過、5.72キロまで来ている。
新田佳浩、トップのウクライナの選手に11.7秒遅れの2位につけている。

ほぼ3分の2が経過した6.76キロ地点。トップのウクライナの選手には、やはり11秒以上の差がある。
残り1周でもトップとの差は11秒であった。しかし新田佳浩、ここから猛チャージをかける。これまでの厳しいトレーニングを思うと、ゴールまでのあと少しの時間なんてとギアをあげる。

新田佳浩、フィニッシュ。
時間は24.06.8秒。それまでのトップであるウクライナの選手を8.7秒上回った。

新田佳浩、1位。優勝である。

新田佳浩、2位のウクライナの選手と抱き合う。
おそらく永年にわたり2人は死闘を続けてきたのではないか、と思う。勝ったり負けたり、とよきライバルとして。ともに障害を負いながら。
そういうようなことを思わせるってことが、パラリンピックの素晴らしさ。

1、2、3位、障害の度合い・FACTORは、ほぼ同じなんだ。

メダルの3人。
みんな同じような障害を負っているんだ。

パラリンピック最終日、スキークロスカントリー男女混合リレーがあった。
これが面白い。
日本の第1走者はレジェンド・新田佳浩、2位で次へつないだ。
日本の第2走者、第3走者は女子選手。ともに頑張り2位を守り、アンカーへ。

この選手、ストックを持っていない。
日本のアンカー・川除大輝である。
川除大輝、若い選手。17歳である。両手に障害がある。で、ストックを持たず両腕を振って前へ進む。

各国の選手がゴールする。

日本はウクライナ、カナダ、ドイツに次いで4位であった。

兄貴分というか親父役のような新田佳浩を中心に日本のリレーメンバー、抱き合う。
最後のリレー、各国さまざまな障害を持つ人が出てきたような気がする。中には視覚障害の選手もいたような思いがある。
さまざまな障害のある人のリレー、これぞパラリンピックであろうという思い、強い。