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2012-07-27 【200】キリ番記事までどんだけ足止まり

デジタル時代のアイデアの育て方〜『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』

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idea Photo by Enri67I tell, I know and I wait

no title主催の@rashita2こと倉下忠憲氏のご著書です。

メディアマーカー献本PRを通じて著者様からいただきました。

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IMG_1478 Photo by s_locarno

お願いして、サインをしていただきました。何というミーハー根性。

なかなか忙しくて本を読んでいる暇も無かったので、読了まで時間がかかってしまったのですが、先日、ようやく読み終わったので、僭越ながら書評を書くことで、本をいただいたことに対する感謝の意を表したいと思います。

アイデアは誰にでも育てられる

この本を通じて倉下さんが読者に訴えかけていることは、「アイデアや発想は誰にでも育てることができる」ということです。

人から感心されるような素晴らしいアイデアや発想で今の状況を打破したい。そんな風に考えたことは、日々、忙しく懸命に仕事に取り組んでいる人であれば、一度や二度はあるのではないでしょうか。しかし、現実にはいいアイデアなんて、その辺りに転がっていることはなく、結局、忙しい人は忙しいままに過ごしていき、日々に流されて生きていってしまっているのではないでしょうか。そうして、思うわけです。「いいアイデアなんて浮かばない。地道にやるしかない」と。

しかし、挑戦的な言い方をすれば、それはアイデアを持てない現状からの緩やかな敗走です。もし、自分がアイデアを持つことに対して希望を抱いたのであれば、その希望を実現することこそが本当に自分が望んだことなのですから。

そんな二律背反で退っ引きならない現実に救いの手を差し伸べてくれているのが、この倉下氏の『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』であるのです。

アイデアや発想という言葉を聞くと、無から有を生み出すイメージを持たれるかもしれません。あるいは高いIQの人や天才と呼ばれる人だけの限られた行為に感じられるかもしれません。そういったイメージのせいで、クリエイティブな作業から距離を置いてしまっている人もいるでしょう。

しかし実際は、畑に種をまいて、その成長を待つような簡単な行為です。種も仕掛けもちゃんとあります。それに、誰にでもできる行為です。

(p.13)

倉下氏は、本書で一貫してアイデアや発想を「育てるもの」だと主張し続けます。「種をまいて成長を待つ。」や「種を育てるための畑や道具を持つ」などの比喩は、非常に直感的でわかりやすいですし、「育てる」という行為だからこそ、手順を踏み、丁寧に行っていけば誰にでもできるという説得力にもなっています。

アイデアの地層を作ることができるか

倉下氏は、アイデアを「誰にでもできるスキル」としているのと同時に、アイデアを育てるための「考具」の存在としてのEvernoteの価値を述べています。

Evernoteは時間的蓄積効果をもたらしてくれます。

(中略)

自分の情報データベースとしてEvernoteを使い続けていけば、自分のアイデア畑を地層化していくことができます。(p.48)

地層に眠る化石燃料が、化石燃料になるために用意されていたものではなく、時間を経ることによって別の価値を持つようになったのだという比喩で倉下氏はアイデアの地層を掘り返せる状態にすることの重要性を述べています。

誤解なきように補足するのであれば、倉下氏は「良質なアイデアをとっておくこと」をアイデアの地層化と呼んでいるわけではありません。よいアイデアだけを溜めていき、必要な時に手品のように取り出すことが出来れば、確かにアイデアマンになるという意味では理想的かもしれません。しかし、そのような天才的な作業を無責任に述べるようなことを倉下氏はしません。倉下氏が述べていることは、以下の表現に集約されます。

…年月を重ねる中で、私たちが得ているものはたくさんあります。その時には価値が見出されなかったものも、時間の経過と経験の蓄積によって、まったく別の価値が生まれることもあります。(中略)必要な時に、昔の自分の体験を引き出せるようにしておくこと。これが「アイデア地層」作りです。表現を変えれば、過去の自分を味方にするための方法といえるかもしれません。(pp.209-210:強調は引用者による)

つまり、自分自身のオリジナルな体験こそがアイデアを生む大きな力になるということです。言い換えれば、私たちの体験に優劣はなく、誰にでもアイデアや発想のチャンスがある貴重な「地層」たり得るということです。アイデアというものが誰かの専売特許のように独占されるものではなく、誰にでもできるのだという筆者の一貫してぶれない主張が感じられます。同時に、アイデアを出せないで苦しむ人たちへの優しさのようにも感じられます。

この「発想できない苦しさ」に対する優しさは、本書の中で一貫して貫かれています。発想に苦しむ人にとっては、非常に心強い処方箋になること間違いないでしょう。

すべてはここからはじまる

この記事を書くに当たって他のブログの書評にも目を通しました。その際に、面白い書評があったので紹介します。

古今東西の知的生産に関する良質のブック・アプリガイド

もし、引用や参考文献が、単なる「〜がこう言っていた」に留まるのであれば、それはあまり説得的ではありません。しかし、著者の使い方は、古今東西の発想法、アイデアについての名著のうち、コアとなっている部分を、ここぞと言うところで引用しているのです。私も職業柄「論文の書き方」や「発想法」についての本を多数読んでいますが、本書に掲げられているものはいずれも名著です。そして、それについての的確な批評がついているのです。このことは、この本が発想法やアイデアについて初めて学ぶ人にとっても、ある程度学んだ人にとっても、良質のブックガイドでもあることを示しています。そして、デジタル機器に疎い人にとっては、そのような選書ができる人が選んだアプリガイドでもあるわけで、信頼感が違います。

温故知新の誠実な一冊!倉下忠憲『Evernoteとアナログノートによるハイブリッド発想術』 - カフェパウゼをあなたとより引用。強調引用者

なるほど、倉下氏の教養を示すだけではなく、この本の参考文献は、世にあるアイデア術、発想術に関わる名著のブックガイドになっています。

論文を書く際には、参考文献を芋づる式に遡り、何度も引用される文献…すなわち、その道では押さえなければならない文献について、自力で時間を掛けて発掘していきます。もちろん、それそれで重要な作業ではあるのですが、目の前のアイデア不足に苦しむ人間にとっては、自力で名著を探していくことすら辛いはずです。

その意味でも、本書を入り口として、歴史的名著へと足を踏み入れていくことができる参考文献の作りは、注目に値しますね。

気持ちが変われば、行動が変わる

この本の一番大きな力は、前述の通り、倉下さんのアイデアを出せないで苦しむ人に対する優しさであると感じています。

例えば、歴史的な名著として梅棹忠夫氏の『知的生産の技術』という本があります。

知的生産の技術 (岩波新書)
梅棹 忠夫
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しかし、悲しきかな。この『知的生産の技術』は、論文を書いたり、普段からアイデアの訓練をしたりしている人にとっては、なじみやすいのですが、そういうことと無縁な人にとっては、かなり突拍子の無い、自分に縁遠い話に感じられてしまうようです。傍証というわけでは無いですが、『知的生産の技術』って中学入試、高校入試では割とよく目にするんですが、子どもにとっては何を言いたいかなかなか伝わらないで苦戦する文章のようですし、たぶん、初心者には辛い一冊なんでしょう。

良くも悪くも筆者が高いところで鎮座しているのです。苦しむ人たちはあがめるしか無いのです。

それに対して、倉下氏の今回の著作は、苦しむ人々へと救いの手が差し伸べられているのです。確かに、梅棹氏の著作などを読んでいる人間からすれば、物足りなく感じる内容かも知れません。しかし、倉下氏は苦しむ人々を置き去りにすることなく、アイデアという楽しみの入り口となり、読者をより高みへと導いているということができそうです。

アイデアに苦しむ人、日々の生活を変えたい人は、一度は手に取ってみていい良作です。

良い本を献本でいただけたことを感謝します。

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