復讐の終着点:『悪魔を見た』
復讐の終着点を見た。
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2011/08/02
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復讐とは仕返しをすることです。
「オレからこれだけ奪ったんだから、その分しっかり返せよ」というわけですね。
こうした「目には目を、歯には歯を」という復讐の論理によって作られてた映画を何本、何十本と観てきました。
そうした映像体験から学んだ、復讐をやっちゃダメな理由は3つあります。
1. 復讐の連鎖を呼び起こすからダメ(他人にまで被害が及んじゃう)。
2. 復讐する人が悪に転落してしまうからダメ(ダークサイドに落ちちゃう)。
3. 法律を破ることになるからダメ(犯罪者になっちゃう)。
だから、後は警察に任せて、復讐なんかしない方がいい、という結論になります。
が、これはほとんど机上の空論ですよね。こんな模範的な回答を実行する人はいません。警察がのろのろ捜査しているあいだに、みんな復讐行為に走っちゃいます。
彼らに共通しているのは、「(愛する人を奪ったことが)許せない」という感情的理由です。どうしても許せないんですよね。その先どうなるのか、おおよそ分かってはいても・・・。
ご存じの通り、この復讐問題にはいまだに有効な解答が出されていません。そうである以上、復讐は今後も続いていくのだと思います。
悲しいことだと思いますが、仕方のないことなのかもしれません。復讐する者は、その行為による代償を仕方のないものとして受け入れます。ただし、復讐者が仕方がないと思えるのは、2.や3.の自分自身が損するケースのみです。逆に、自分以外の人が損する1.のケースは、仕方がないと割り切ることができません。
復讐行為がエスカレートする原因は、これですよね。
本作が示すのは、その復讐の終着点。
あれには大きな衝撃を受けました。その描写を可能にしているのは復讐者です。彼が「悪」になったからこそです。
「悪」とはなにか? それは人々の幸福を破壊することです。(p.182)
復讐の始発点は決まって不条理です。
突然身に降りかかった理屈では理解できない不幸が、それまで「正義」の側にいた人間を、すっかり「悪」の側にまで落としてしまいます。
復讐を果たした後、本作の復讐者はじつに多様な表情を見せます。
達成感や喪失感や罪悪感。
複雑に絡まり合ったいくつもの感情が、悪となった復讐者のもとにやってきます。
切ないよなぁ。