デジタルかそれとも銀塩写真か決断

2016年のミニラボ銀塩写真の状況をお話する前に20世紀と21世紀の分岐点が重要で業界団体がアナログ銀塩写真プリンターの製造中止を決定しました。混乱と不安の中、今後はデジタルカメラに移行しデジタルプリンターを選ぶか?業界から退場するか?マーケットが無くなる訳で自立的に細々とやって行くか?という分水嶺に立たされました。

やりたいことと提案型ビジネス
王道のデジタルプリンターを選択したならば、将来が約束されたようなセールストークでした。それ以前にAPSの5社連合が導入したAPSの基準を満たす為のごたごたを経験をしていましたので、そのセールストークには懐疑的でした。必要最低限でも昇華型のプリンター・APS用ネガマスク・フィルム現像機の改良・APSデタッチャーetc約250万円の出費です。


フィルムをないがしろにしたピクセル設定
デジタル機のスペックをチェックした時ネガフィルムをデジタルスキャンをしたLサイズの画素が150万画素で2Lサイズで300万画素で更に大判のプリンターのインターフェイスで150〜200万画素です。
その根拠が肉眼の認識で300万画素で良いという事でした。例えばネガの場合はトリミングだったり自在に可能であるにも拘らず、肉眼レベルで良いというのは解せないし、当時最低でも800万画素のインターフェイスならば自身の気持ちが動いたかもしれない。デジタル変換時のジャギーだったりエンハンサーetcについても少しは克服出来たと思う。しかし業界団体は一番使われているLサイズ150万画素を技術レベルを天秤にかけ実行した訳です。

激減する写真店
デジタル機に移行し写真屋は激動の時代に入り結果は投資した金額も回収も出来ず惨憺たるものでした。全国で25,000店あった写真店が6,000店をきって5,000店台とも言われています。写真プリント業界は専門性があり国内のメーカーによる提案型ビジネスで4〜5社の中から何処のメーカーを選びますか?というものです。

21世紀初頭デジタルプリンター一式グレードに差ははありますが、当時1,800万円程ですからそれまでは右肩上がりで推移しましたが、売り上げは1997年がピークのようです。1980年頃ミニラボをやっていたらビルが建っていたかもしれませんが、実感的には単に店の立地条件だったり、他のファクターであったり、業界の提案書に描かれてあるものとはほど遠いものです。

フィルムが好きで焼いているから他人が見れば苦労と思っても続けられる
フィルムが好きなので、Lサイズで150万画素には承服出来ず現在もフィルム寄りに立ちQSS23型を2と1/2個いちで部品を取りながら銀塩写真を焼いているうちにQSS23型全国で一台だけになりました。


フィルムは専門性が必要で継続して続けられているもので、古い時代のフィルムの色合いを覚えていなければ、現在のフィルムに活かせない。今となってはタングステンフィルムがある事や昼光色フィルムだけではないし、120・220 4×5というように種類も多い訳です。ユーザーが減ってくると一本のフィルムに蛍光灯・Led・タングステン・昼光色の下で撮影され、しかも撮影から現像まで時間が経っていてプリントが難しくなります。撮影後直ぐ現像をしないで時間が経過してしまうと潜像が時間経過とともに電子的に変化して鮮鋭度が落ちマゼンタ系が変化する傾向になります。


プリンターやフィルム現像機の宿命的構造
フィルム現像機も銀塩写真プリンターもある定量の処理を毎日や一週間位に消費して薬液が一順して安定出来ているモノです。街の写真店にはフィルム現像機が置かれていても実際は動いていなかったり、フィルムは仕上りに時間がかかります。と言われる所が多くなっています。そのような店では集配の基幹ラボに現像をまかしています。フィルムを定量処理しなければ薬液の品質が維持出来ません。ですからウチでは頻繁にコンストを流して薬液の状態を検査してプリントしています。特にアナログ銀塩写真はデリケートなモノです。プリントの処理量と薬液の補充量の関係は銀塩写真プリンターも同様の事が言えます。また安定的維持をする為でしょうが、インターネットで馬鹿安値にしたりチケット性にして特典で囲い込んだりしている訳です。


フィルムユーザーの世代の継承
お店には、フィルムカメラの使い方を孫に教えて欲しいというお客様とかこられますが、社会の中でフィルムの世代継承の為の企業努力はどうでしょう あまり力を入れてこなかったというよりもスルーしてきたという感じではないでしょうか?フィルムは古くさくて魅力的ではない。といわれればそれまでですが、米国ではB&W銀塩写真のユーザーは熱心なユーザーが多いと米国在住の写真家から聞いております。
アナログの魅力が音楽で再認識されていても、写真の世界では、デジタルのアプリケーションソフトで『なんちゃって銀塩的なもの』で、済ましてしまう傾向にあり、フィルムユーザーの世代の継承を怠ったからではないだろうか。フィルムをデジ焼きしたものとネガを焼く銀塩写真は違います。
2010年から子供達にリユースフィルムカメラでフィルム写真を教えるという活動を『銀塩の絆』でやってはいるんですが、、、中判の安くなったフィルムカメラをオークションで探したり、お爺ちゃんのカメラを譲り受けたり、、、求めたら道は開けるでしょう。ケータイのアプリで簡単な露出計でもネガフィルムならけっこうつかえます。休んでいるフィルムカメラの眼を覚まさせる事が出来るのは貴方です?中判はフィルムの種類が減少していますが、アップサイクルでブローニーフィルムに35mmフィルムを巻いたActive Flmを使えば中判カメラは無駄にならないで済む筈です。特徴はISO1600とか800とかブローニーフィルムとしては売られていないフィルムで撮影が出来るので視界が広がります。従来のものとは違うアプローチで写り方も違います。ブロー二ーのスローライフな写真生活をはじめてみませんか。

子供達は暗室で自分で撮影したフィルムでセイフティランプの明かりの中から画像が出てくると、感動の声を上げます。この感動と体験が重要で、このようなボランティア活動ができるのも、26年前に小平市に移転した頃からこの施設を利用しない手はないという事で、アルバイトスタッフの武蔵美の学生に勧めたり、卒業制作をプリントした学生達もいます。このような施設を小平市が維持している事が、ボランティア活動には欠かすことができません。子供達に銀塩写真体験を通して写真の面白さ味わって欲しいと思うし、私自身も十歳の時父からそのように、経験させてもらい現在の仕事に繋がったのかと思います。写真には一定の知識が必要です。大人がある程度はじめのとっかかりを子供達に提供してやる事は、アナログな銀塩写真の面白さを伝える事になります。博物館や美術館でやられるものとは違うアプローチで写真の面白さを伝える事ができる筈です。リユースの素材を使って子供達にフィルムを作るところからやってもらい古いベーシックなカメラや・写ルンですでトライしたら、レンズ・カメラのの構造が理解しやすくこの方法であれば楽しく写真体験が出来ます。