Hatena::ブログ(Diary)

Commentarius Saevus このページをアンテナに追加 RSSフィード




2010-01-13

メタ映画としての『サンセット大通り』

| メタ映画としての『サンセット大通り』を含むブックマーク メタ映画としての『サンセット大通り』のブックマークコメント

 はなこさんのところで、「メタ映画」が話題になっていた。


 …で、ここでいう「メタ映画」とは、単なる「映画についての映画」ではなくて、「『メタ映画』、というのは多分、物語世界俯瞰する視点が映画内にもう一個用意されている、映画のことだろうか」という定義らしい。ただし、はなこさんのところではコメント欄も含めて『主人公は僕だった』、『ユージュアル・サスペクツ』、『トゥルーマン・ショー』、『ルック』、ゴダールスパイク・ジョーンズ、『8 1/2』、『インランド・エンパイア』があがっているので、たぶんある程度「映画」とか「見ること」がテーマになっている映画じゃないと「メタ映画」とは見なせない気もする。


 で、たぶんこれならチャーリー・カウフマン関係の映画とか、あとトリュフォーの『アメリカの夜』なんかも入るだろうと思ったら、ウィキペディアメタ映画とかメタフィクションの項目がたっていて、どっちも入っていた。あとは『リビング・イン・オブリビオン』、『血を吸うカメラ』、『トリストラム・シャンディ』などがあがっているのだが、『スクリーム』はたしかになるほどなぁと思う。


 …で、このはなこさんエントリを見て私が一番「これぞメタ映画では?」と思ったのが、ビリー・ワイルダーの『サンセット大通り』である。

 『サンセット大通り』の冒頭場面。いきなりプールに殺害された語り手ジョーが浮かんでるとこから始まる。

D

 

 これは私が今まで見た映画の中でも最も(いい意味で)いやらしい映画ひとつだと思うのだが、なんで私が「これってメタ映画っぽい!」と思ったかというと、とりあえず語り手が死人ジョー・ギリス(ウィリアム・ホールデン)で、冒頭場面では既に殺されていて「自分、なんで死んだんだ?」っていう話を回想するという点で非常に「全体を俯瞰する」視点があると思うからである。この映画では、死んじゃったせいなのかかなり冷静な語り手になっているジョー・ギリスと、回想された過去の中でのたうちまわっているジョー・ギリスはたぶん完全に同じ人というわけではない。死んじゃったおかげで一歩引いた語り手としての特権的な地位が保証されている上、自分が実際に見てないものについても語ることができるようになっており、それがなんとなく全体的にすごいディタッチメントというかなんというかクールな雰囲気を作っていると思う。


 もうひとつこれがメタ映画っぽいと思うのは、これは意識的に映画についての映画として作られているからである。ジョー・ギリスは売れない脚本家なのだが、人生のあらすじはどんどん自分の手から離れていって、人生の主役は落ちぶれたサイレント映画の大スター、ノーマ・デズモンド(グロリア・スワンソン)にとられてしまう(人生でも脇役は永遠に脇役であるらしい。ワイルダー東欧生まれのユダヤ人なのだが、アメリカ育ちのスタッフばかりだと考えつかなそうなお話である)。ノーマを演じるスワンソンは本当にサイレント映画の大スターだった人だし、ノーマを取り巻く「過去映画スター」役は全員本物の「過去映画スター」(エーリッヒ・フォン・シュトロハイムとかバスター・キートン)だし、本人役で業界人も結構登場している。最後はノーマが完全におかしくなって妄想現実の区別がつかなくなっちゃうのだが、そんなノーマを落ち着かせて警察の手にゆだねるため、ノーマの執事で昔は映画監督だったマックス(エーリッヒ・フォン・シュトロハイム)が映画の撮影をしているフリをして、殺人の話を聞きつけて集まってきたテレビカメラの前でノーマを歩かせるというオチになる(このマックスは昔ノーマの夫だったとかいうあたりが大変『春琴抄』っぽくて谷崎ワールドだ)。


 とても有名な最後の場面。

D


 この映画デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』、ポールモリッシーの『ヒート』、ロバート・アルトマンの『ザ・プレイヤー』、テレビドラマデスパレートな妻たち』、去年のヴェネツィアビエンナーレ北欧チームの展示「コレクターの死」なんかにも影響を与えていて、ある意味メタフィクションひとつモデルになっているのかもしれない。


おまけ:メタフィクション映画ふたつをマッシュアップしたメタメタ映画のニセトレイラー、『8 1/2マイル』。監督フェデリコ・フェリーニ音楽エミネム

D

 …管理人は『8 1/2』も『8マイル』もどっちも見てないんだけど、このトレイラーはどっちも見てない人でもクスっとするな。これ以降にいろいろ作られたマッシュアップトレイラーにはもっと破壊的に可笑しいやつもいっぱいあるけど…


トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/saebou/20100113/p1