21世紀版『スパイナル・タップ』〜『俺たちポップスター』

 『俺たちポップスター』を見てきた。コメディグループ、ザ・ロンリー・アイランドを中心に制作された音楽モキュメンタリーである。基本的にはこの手の音楽モキュメンタリーの古典『スパイナル・タップ』にかなり似ているのだが、パロディの対象となっているのはヒップホップと最近のアイドル音楽、及びそれに関連するコンサート映画やドキュメンタリーだ。

 主人公のコナー(アンディ・サムバーグ)は子どもの頃から音楽の才能があり、幼友達のオーウェン(ヨーマ・タコンヌ)とローレンス(アキヴァ・シェイファー)とともにスタイルボーイズというヒップホップグループを結成する。グループは一世を風靡するが、ステージ上でケンカをして解散。ソロになったコナーはオーウェンをDJとして引き抜き、ローレンスは農家をはじめる。コナーはファーストアルバムが大ヒットするが、セカンドアルバムはサイテーの出来でマーケティングにも失敗。コナーは再浮上できるのか…

 全体的には今の音楽業界のバカげた宣伝や、しょうもない歌詞の曲が流行っている様子などを諷刺している。いろいろなミュージシャンのエピソードをパロったと思われるネタがたくさん詰め込まれていて笑えるし、また登場する曲がどいつもこいつもそれはそれはヒドくて笑える。メロディはともかく、歌詞がどれもムチャクチャで、テーマじたいがヒドいか、あるいはシュールレアリスムの自動筆記かと思うようなつながりのないものを並べただけの歌詞だ。ローリング・ストーンズは『メイン・ストリートのならず者』の「カジノ・ブギー」で、偶然性の実験みたいなやつで言葉を書いた小さい紙をランダムに拾って歌詞を作ったらしいのだが、まあそんな感じの歌詞である。それをマイケル・ボルトンとかアダム・レヴィーン、ピンクみたいな豪華ゲストと一緒にろうろうと歌い上げるもんだから笑ってしまう。ザ・ロンリー・アイランドとは昔から一緒に仕事をしているジャスティン・ティンバーレイクが料理人の役でゲスト出演しており、明らかに一番歌がうまいのだが、鼻歌を歌って「歌はプロにまかせとけ!」とか言われるあたりも笑ってしまう。