2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

本と音源を組み合わせて音楽史を独習できる!〜『西洋音楽史I:バロック以前の音楽』

ルシアン・ジェンキンズ『西洋音楽史I:バロック以前の音楽』小林英美、田中健次監修、松山響子翻訳(学研、2010)を読んだ。四巻まで日本版が出ている音楽史シリーズの最初の巻らしい。西洋音楽史I―バロック以前の音楽 (NAXOS BOOKS DISCOVER)posted with ama…

明日から学校で使える入門書〜ジェリー・ブロトン『はじめてわかるルネサンス』

ジェリー・ブロトン『はじめてわかるルネサンス』(ちくま学芸文庫、2013)を読んだ。はじめてわかる ルネサンス (ちくま学芸文庫)posted with amazlet at 13.10.31ジェリー ブロトン 筑摩書房 売り上げランキング: 109,164Amazon.co.jpで詳細を見る これはオ…

風俗小説は古くなりやすい〜ヴィタ・サックヴィル=ウェスト『エドワーディアンズ―英国貴族の日々』

ヴィタ・サックヴィル=ウェスト『エドワーディアンズ―英国貴族の日々』村上リコ役(河出書房新社、2013)を読んだ。 エドワーディアンズ ---英国貴族の日々posted with amazlet at 13.10.29ヴィタ・サックヴィル=ウエスト 河出書房新社 売り上げランキング: 9…

理想を食い物にし、差別を勢いづかせるニセ歴史〜ロナルド・H.フリッツェ『捏造される歴史』

ロナルド・H.フリッツェ『捏造される歴史』(原書房、2012)を読んだ。歴史学者が書いた、「ニセ歴史の歴史」本である。捏造される歴史posted with amazlet at 13.10.29ロナルド・H. フリッツェ 原書房 売り上げランキング: 63,314Amazon.co.jpで詳細を見る 扱…

自己顕示欲と鼻血〜『クロニクル』(ネタバレあり)

『クロニクル』を見てきた。既に話題の映画なのでもうあらすじは書く必要ないし、どこが面白いとか言う必要すらないのかもしれないと思うのだが、シアトルを舞台に超能力が使えるようになった高校生三人の青春の光と影(というか爆発というべきか)をPOV(とも…

三菱一号館美術館「名品選2013 近代への眼差し 印象派と世紀末美術」

三菱一号館美術館で「名品選2013 近代への眼差し 印象派と世紀末美術」を見てきた。20世紀後半から20世紀はじめくらいまでのパリの美術を展示するもので、学芸員がふだんからちゃんと気合入れて仕事しています!というのがわかる展覧会だった。ただ、うちは…

演出は野心的だけど、もっと色気を!〜新国立劇場『エドワード二世』

新国立劇場でクリストファー・マーロウの『エドワード二世』を見てきた。すごく野心的な演出だしつまらなくはなかったと思うのだが、イマイチ乗れないところが多かった。 とりあえずこれは有名戯曲でデレク・ジャーマンの映画も出てるし、既にバンクサイドロ…

オゾン流芸術受容論を現実の政治とリンクさせる〜フランソワ・オゾン監督『危険なプロット』(ネタバレあり)

フランソワ・オゾン監督の新作『危険なプロット』を見てきた。 お話の舞台はフランスのリセ。退屈気味のフランス語教師ジェルマン(ファブリス・ルキーニ)は作文の才能がある貧しい家庭の生徒クロード(エルンスト・ウンハウワー)に個人指導をすることにする。…

おばちゃまが主役で、恋愛も家族もないけど幸せに美味しい〜『大統領の料理人』

『大統領の料理人』を見てきた。 内容はどうってことないグルメ映画…というか、料理人オルタンス(カトリーヌ・フロ)の、エリゼ宮でミッテラン大統領の専属料理人としてつとめた二年間と、次の職場である南極基地の料理人としての勤務の最終日を並行して描く…

Repreに清水知子『文化と暴力:揺曵するユニオンジャック』の書籍紹介を書きました

表象文化論学会のニューズレターRepre 19に清水知子『文化と暴力―揺曵するユニオンジャック』(月曜社、2013)の書籍紹介を書きました。レビュー記事はこちらです。文化と暴力―揺曵するユニオンジャックposted with amazlet at 13.10.22清水 知子 月曜社 売り…

愛より自分が大事〜『わたしはロランス』

グザヴィエ・ドラン監督、メルヴィル・プポー主演の『わたしはロランス』を見てきた。久しぶりにすごいヘヴィなフランスの恋愛映画で、ストーリーや演技はとても良かったと思うのだが、半端にヌーヴェルヴァーグ+キューブリックみたいな撮り方と音楽の使い…

インタラクティヴパネルがパリの地理と人間関係を整理する〜ブリヂストン美術館「カイユボット展」

ブリヂストン美術館で「カイユボット展」を見てきた。あまり期待していなかったのだが、展示の仕方に工夫があり、楽しめた。 ギュスターヴ・カイユボットの絵画自体は写実的な印象派という感じで、マネっぽかったりモネっぽかったりルノワールっぽかったり、…

蜷川演出『唐版 滝の白糸』〜テンション不足か?

蜷川幸雄演出『唐版 滝の白糸』を見てきた。上京中の父のおともで観劇。 あらすじは非常に要約しにくいもので、若い男アリダ、アリダを昔誘拐しかけて刑務所に入り、そこから出て来た銀メガネ、アリダの兄と心中をはかって一人だけ生き残り子育てをしている…

働いたら負け、現代思想家には死を、そしてただ手を動かしてアートを〜『ムード・インディゴ うたかたの日々』

『ムード・インディゴ うたかたの日々』を見てきた。 私、1968年にフランスで映画化された『うたかたの日々』を高校生の時に見てなんて変な映画だ…と思った覚えがあり、今回もなんてったってミシェル・ゴンドリー監督なのですごく変な映画を期待していったの…

これこそが本当の「水からの伝言」だ!〜「中谷宇吉郎の森羅万象帖」展

京橋LIXILギャラリーで「中谷宇吉郎の森羅万象帖」展を見てきた。 ひと部屋だけの小規模展示だが、写真を中心に雪博士として有名な中谷宇吉郎の研究資料が多数出品されており、さらに岩波科学映画も見られる展示会で入場料は無料。雪の結晶の写真が単純にき…

エフェメラや雑誌類がたくさんあるのがいい〜「華麗なるステージの軌跡 宝塚歌劇展 −輝き続けて1世紀−」

日本橋高島屋で「華麗なるステージの軌跡 宝塚歌劇展 −輝き続けて1世紀−」を見てきた。 百貨店美術館の展示ということで、まあスキャンダルとかはなく(戦争協力の話は少しある)ひたすら華やかな資料を使って宝塚の歴史をきれいにまとめる、というものなのだ…

商標の出しゃばりっぷりに辟易〜「ピーターラビットTM in Ginza〜絵手紙120周年」

銀座ソニービルで「ピーターラビットTM in Ginza〜絵手紙120周年」展を見てきた。展示自体は結構少なく、前に同じところでやっていた「リサとガスパール」展よりもしょぼかった気がする。 そしてなんといってもびっくりしたのはやたら上付きTM(トレードマー…

楽しい喜劇だが、ドタバタに走りすぎな気も〜Dステ『十二夜』

Dステのオールメール『十二夜』を見てきた。笑いが多くて楽しく見られる喜劇だが、ちょっとドタバタに走りすぎでうまくいってないところもある気がした。 とりあえず、この間見たアイドル舞台の『ハムレット』が結構ひどかったので、女性に人気のある若いイ…

『ロミオとジュリエット』のけっこうしっかりしたゾンビ版翻案〜『ウォーム・ボディーズ』(少しネタバレあり)

『ウォーム・ボディーズ』を見てきた。 もう最近は古典をゾンビ化するのが大流行しており(すでに以前書いたように古典をゾンビものにするっていうのは1940年代からあるのだが)、オースティンの『高慢と偏見』やらイオネスコの『犀』やらもゾンビものになって…

ハロウィーンのバーレスク〜MIDWEEK BURLESQUE vol.3 -Early Halloweeeeen Party!

MIDWEEK BURLESQUE vol.3 -Early Halloweeeeen Party!に行ってきた。いつも舞台はひとりで行くのだが、今回は「1人では行けないが行ってみたい」という友人の希望にあわせて「バーレスクに行ってみる会」というイベントを作ってみたところ、どういうわけだが…

神戸の旅(3)異人館界隈後編

さて、お茶もすんだのでさらに散策を続ける。 こちらは風見鶏の館。 阪神大震災で壊れたらしいのだが、長期間かけて修復したとか。 ここに住んでいたトーマス一家は故郷ドイツに一時帰国した最中に第一次世界大戦が勃発、財産のほとんどを日本に置いたままド…

神戸の旅(2)異人館界隈中篇

まず坂をのぼっていったところにあるのがプラトン装飾美術館というイタリアふうの異人館。 メイドさんがいたりとか、かなりキッチュな美術館である。 旧中国領事館。 北野外国人倶楽部。ふくろう小物を使ったインテリア。 山手八番館。 内部は博物館になって…

神戸の旅(1)異人館界隈前篇

さて、鹿児島のシェイクスピア学会の次はいろいろ用事があって神戸へ。 観光できる日が一日あったのでとにかく街へ。これは三宮駅前のトマソンとしか思えない、歩道橋に設置された信号機。 まずはカフェ・ド・パリで昼ごはん。 とりあえずは北野の異人館界隈…

鹿児島(3)天文館〜城山方面+食物

さて、学会最終日に城山方面から天文館まで散歩をした。 まずはバスで西郷洞窟へ。 まあ、ただの洞窟である。 敬天愛人の碑が設置されているトンネル。 鶴丸城跡を散策。 西南戦争の跡地。 西郷像。 医学院跡。 天文館。 永田シロアリ。この看板が目抜き通り…

鹿児島の旅(2)異人館界隈

仙巌園のそばにある異人館も散策した。 これは仙巌園のすぐわきにある薩摩切子の工房。 中を見学できる。 昔の窯の遺跡らしい。 橋にまで薩摩切子。 異人館。中は撮影できない。 この時の桜島の様子。

鹿児島の旅(1)仙巌園(磯御殿と猫神神社)

さて、週末は日本シェイクスピア学会で鹿児島に行っていた。早めについて観光したのだが、鹿児島に降り立った瞬間サイレントヒルが出現。 桜島が爆発的に噴火しているため、この視界を遮る霧みたいなのは全部火山灰。コンタクトレンズの眼に入るし、のどもえ…

重要告知三種

本日は重要告知が三つ。(1)博士号取得のお知らせ 本日(UK時間だと昨日)、キングズ・カレッジ・ロンドンの博士号の書類処理が終わって、おおっぴらに博士と名乗っていいことになりました。これで一人前のジェダイです!あとは納本と卒業式出席がありますが… (…

キレイに見えるため要る努力〜『世界一美しい本を作る男 シュタイデルとの旅』

『世界一美しい本を作る男 シュタイデルとの旅』を見てきた。紙から装丁まであらゆるところにこだわった美しい本を作ることで有名なドイツの出版社、シュタイデル社のボスであるゲルハルト・シュタイデルが世界を飛び回りつつ本を作る様子を撮ったドキュメン…

ビートルズのメンバーに会ったことのある人々に取材する〜『ビートルズと私』

『ビートルズと私』を見てきた。ビートルズのメンバーに会ったことある人たちを取材するというドキュメンタリー映画である。 ビートルズ全員に会ったことがあるスタッフやミュージシャンなどをはじめとして、解散後にビートルの誰かに会った人とかファンとか…

呪!アメリカ政府閉鎖記念〜でも母性ネタは勘弁『エリジウム』(ネタバレあり)

ニール・ブロムカンプ監督、マット・デイモン主演の『エリジウム』を見てきた。あまり評判がよろしくないので期待していなかったのだが、アメリカ政府が閉鎖された日に見るにはふさわしい映画だった。 設定は人口爆発で荒れた地球に下層階級が取り残され、ス…