演出とキャラクターの食い合わせが…『マクベス』

Dock Xでサイモン・ゴドウィン『マクベス』を見てきた。 www.youtube.com ウォーターフロントの倉庫みたいな場所での上演で、お客は舞台裏から兵士(スタッフが扮しているわけだが)が見張っている通路を通って客席に入るという変わった作りの劇場である。冷…

真面目な法廷もの~『死刑台のメロディ』(試写)

エンニオ・モリコーネの特選上映で4Kリマスター英語版が上映される『死刑台のメロディ』を試写で見た。有名なサッコ&ヴェンゼッティ事件の映画化である。 www.youtube.com 全体的に真面目な法廷もので、イタリア系の移民で左翼であり、英語にも訛りがあるニ…

音楽はいいが…『ラ・カリファ』(試写)

エンニオ・モリコーネの特選上映で日本で初めて映画館上映される『ラ・カリファ』を試写で見た。 企業家ドベルド(ウーゴ・トニャッツィ)と、夫を労働争議で亡くした活動家イレーネ(ロミー・シュナイダー)が不倫関係になってしまうという話なのだが、正直…

アイルランド現代美術館

キルメイナム刑務所のすぐそばにあるアイルランド現代美術館にも行って来た。無料で入れる。こんな建物である。 中庭と美術館の建物 第一次世界大戦以降のヨーロッパ政治と芸術に関する展示と、デリーの映画ビデオワークショップグループなどについての展示…

キルメイナム刑務所ツアー

休日なのでキルメイナム刑務所のツアーに行って来た。キルメイナム刑務所はアイルランドの独立運動家が多数収監されていた刑務所で、イースター蜂起のリーダーの処刑も行われたので、アイルランド史にとっては非常に重要な場所である。現在は刑務所としては…

映像を活用したひとり芝居~『ドリアン・グレイの肖像』

ヘイマーケット劇場で『ドリアン・グレイの肖像』を見た。言わずと知れたオスカー・ワイルドの古典小説をキップ・ウィリアムズが翻案・演出したひとり芝居である。2020年にシドニーで初演されたプロダクションの再演だそうだ。オーストラリアの女優サラ・ス…

80年代ノスタルジア~Just for One Day

ライヴエイドについてのミュージカルJust for One Dayをオールドヴィックで見た。 www.youtube.com 現代の若者に歴史としてのライヴエイドを解説する…という枠に入っており、現代の若者からツッコミが入ったり質問が出たりしつつ、ライヴエイドがいかに大変…

World Burlesque Games (2) Variety Crown, International Crown, Innovation Award

ワールド・バーレスク・ゲームズ2日目を見てきた。2日目は Variety Crown、International Crown、Innovation Awardである。Variety Crownは参加者が3名であんまり面白くなかったように思う。他部門についてはけっこう中東欧系のショーガールが多く出演してい…

World Burlesque Games (1) International Newcomers

ロンドンでワールド・バーレスク・ゲームズを久しぶりに見た。ブッシュホールで4/5-6にわたって2日間開催される。1日目はInternational Newcomers(国際新人賞)のコンペティションである。『インディ・ジョーンズ』とか『トップガン マーヴェリック』などを…

『プリシラ』のレビューをTokyo Art Beatに書きました

ソフィア・コッポラ監督の映画『プリシラ』のレビューをTokyo Art Beatに書きました。以前『ユリイカ』に『マリー・アントワネット』論を書いたことがあるのですが、ソフィア・コッポラ映画のちゃんとしたレビューを書くのは久しぶりです。 www.tokyoartbeat…

面白いが時代を感じさせるところもある古典の読み替え~『ウィキッド』

『ウィキッド』をロンドンのヴィクトリア・アポロ劇場で見た。日本でもやっていた作品だが見たことがなく、初見である。『オズの魔法使い』の西の悪い魔女をヒロインにした古典の読み替え前日譚である。 西の悪い魔女ことエルファバが倒された後、良い魔女グ…

手ブレがキツい~『ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ』(試写)

『ラジオ下神白―あのとき あのまちの音楽から いまここへ』を試写で見た。 www.youtube.com 東日本大震災の原発事故で被災した福島の方たちが住んでいるいわきの下神白で行われた「ラジオ下神白」プロジェクトについてのドキュメンタリー映画である。故郷の…

テンポのいいエンタメスリラー~『貴公子』(試写、若干ネタバレあり)

パク・フンジョン監督の新作『貴公子』を試写で見た。 www.youtube.com フィリピン人の母と韓国人の父の間に生まれ、母子家庭で育ったボクサーのマルコ(カン・テジュ)は病気の母の面倒を見るため、裏社会で危ない橋を渡りながらなんとかお金を稼ごうとして…

好みが分かれそうな…『クラユカバ』(試写)

『クラユカバ』を試写で見た。神田伯山が声をあてる探偵・荘太郎が集団失踪事件を操作するというアニメ映画で、レトロな美術が特徴の作品である。たぶんこういう雰囲気の作品が好きな人にはものすごくハマるのだろうと思うのだが、私はそこまででもなかった。

好みの点ではあんまり…『クラメルカガリ』(試写)

『クラメルカガリ』を試写で見た。『クラユカバ』のスピンオフということで同じ世界観で展開する。ビジュアルはけっこう面白いところもある…のだが、ありがちな少女ものみたいな感じで『クラメルカガリ』よりもあんまり印象に残らなかった(こういうのが好き…

本日よりダブリンに引っ越しました

本日よりダブリンに引っ越しました。明日からいろいろ手続きです。

下剋上とはいえ、けっこうキツい話でもある~『中村仲蔵~歌舞伎王国 下剋上異聞~』(配信)

源孝志作、蓬莱竜太演出『中村仲蔵~歌舞伎王国 下剋上異聞~』を配信で見た。 www.youtube.com 有名な歌舞伎役者で、歌舞伎一門の出身ではないものの出世して日本の舞台芸術史に名をとどろかせることになった初代中村仲蔵(藤原竜也)の伝記ものである。伝…

ロンドン(6)ウィリアム・モリス・ギャラリー

ウォルサムストウにあるウィリアム・モリス・ギャラリーに行って来た。ウィリアム・モリスが非常に若かった頃に家族の家だったところで、後に出版業者のエドワード・ロイドのものになったらしい。現在は美術館で、無料で入れる。 ロイドパークという公園の端…

ロンドン(5)サンボーン・ハウスとレイトン・ハウス

サンボーン・ハウスとレイトン・ハウスに行ってきた。このふたつの博物館は数年前に大幅に改修されて2022年に新規お披露目となった。レイトン・ハウスは学生時代に行ったことがあってお気に入りの博物館なのだが、サンボーン・ハウスは初めて行った。ホラン…

「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」連載を書肆侃侃房に引き取っていただくことになりました

wezzyで連載していた「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」ですが、wezzy閉鎖に伴い、書籍版の版元である書肆侃侃房に引き取っていただくことになりました。引取手が見つかってよかったです。書籍版に再掲されていないものについては全てこちらで公開されてい…

やさしさに向き合えるようになるまで~『アイアンクロー』(試写、ネタバレ)

『アイアンクロー』を試写で見てきた。既に公式サイトに推薦コメントを書いているのだが、とりあえず簡単に感想を書いておこうと思う。 www.youtube.com アメリカのプロレス界で有名な一家であるフォン・エリック一家を追った伝記ものである。父親のフリッツ…

クロアチアのきれいな景色に気持ち悪いストーリー~『インフィニティ・プール』(試写)

ブランドン・クローネンバーグ監督新作『インフィニティ・プール』を試写で見た。 www.youtube.com 舞台はどこか東欧あたりのリゾート地と思われるリ・トルカ島なる場所である。ものすごくきれいなところなのだが、観光客は外に出ることもほとんどできず、な…

ロンドン(5)ウェルカム・コレクション"The Cult of Beauty"

ウェルカム・コレクションで展覧会"The Cult of Beauty"を見てきた。古今の美に対する崇拝をいろんな図像や物品から考えるものである。ジョセフィン・ベイカーが初めて肌色を黒っぽくするのを流行らせ、ベイカーの名前がついた化粧品(日焼けオイルなど)が…

ロンドン(4)ハートフィールド

イースターの日は図書館なども休みなので、ハートフィールドにあるくまのプーさんの森に仕事で使う写真を撮りに行って来た。ロンドンから鉄道とバスを乗り継いで2時間くらいである。 ここがくまのプーさんショップであるプー・コーナー。 プー・コーナーの看…

悪くないが、好みかというと…『キャバレー』

プレイハウスで『キャバレー』を見てきた。レベッカ・フレックナル演出で、キャストを変えながら何度かやっているものである。 www.theplayhousetheatre.co.uk CABARET at the KIT KAT CLUBというタイトルになっていることからもわかるとおり、キットカット…

ロンドン(3)テート・モダン"Yoko Ono: Music of the Mind"

テート・モダンで"Yoko Ono: Music of the Mind"を見てきた。けっこう気合いの入った回顧展で、参加型の作品もある。無料スペースにはウィッシュトゥリーもあるのだが、これは基本的には日本の七夕の応用だと思うんだけれども、オノ・ヨーコの美術と日本の風…

ちょっと強引な気もするが、キャスト陣はよかった~『ブルックリンでオペラを』(試写)

『ブルックリンでオペラを』を試写で見てきた。 www.youtube.com ブルックリンに住むオペラ作曲家のスティーヴン(ピーター・ディンクレイジ)と潔癖症の精神科医であるパトリシア(アン・ハサウェイ)のカップルが主人公である。スティーヴンは長期にわたる…

ロンドン(2)テート・ブリテン"Sargent and Fashion"

テート・ブリテンで"Sargent and Fashion"展を見てきた。おしゃれな女性の肖像画で有名なジョン・シンガー・サージェントと服飾に焦点を当てた展示である。エレン・テリーの有名なレディ・マクベスの絵が出ているというので見に行ったのだが、この肖像画でテ…

ロンドン(1)テート・ブリテン"Women In Revolt!"

今日からロンドンに出張している。5年ぶりの海外渡航でいろいろ緊張しているのだが、まずはテート・ブリテンで"Women In Revolt!"を見てきた。1970年代から1990年代のフェミニズムとアートを扱った展覧会で、非常に内容が豊富で面白かった。パンクやブラック…

しょうもないロマコメ~『アイリッシュ・ウィッシュ』(配信)

Netflix配信のセント・パトリックス・デーのホリデイロマコメ『アイリッシュ・ウィッシュ』を見た。 www.netflix.com 編集者のマディ(リンジー・ローハン)は担当をつとめているアイルランド出身の小説家ポール(アレクサンダー・ヴラホス)に恋をしていた…