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2016-01-29

アポなしで斎藤緑雨が凸してくる、世にも恐ろしい明治文壇〜『書く女』

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 世田谷パブリックシアター永井愛の『書く女』を見てきた。樋口一葉黒木華が演じる。

 一葉がひどい貧乏暮らしの中で半井桃水に師事したり、他の作家たちと関わったりしながら才能豊かな作家として開花し、死んでいくまでを描いた作品である一見、書いてばっかりの地味な芝居のように見えるが、遅筆だった一葉が独創的な「書く女」になっていく様子を多角的に描いており、全く飽きさせない。

 一葉はとにかく問題だらけのところで書いている女性である。まず明治の家制度では一葉は戸主なので、自由結婚もできない。師匠の半井桃水に惚れているが、実は才能は一葉のほうが上だし、戸主同士で結婚もできないし、さらに桃水の遊び人疑惑もあってなかなか一葉は安心できない。またまた一葉の母親というのは生活力ゼロ文学のことを理解しておらず、政治的にも保守的で一葉みたいな知性を持たないウザい母として時には批判的に、時には愛情をこめて描かれている…のだが、いくらよいところもある人だとはいえ、実際こういう母親がいたら娘はかなりつらいだろうと思った。一葉が作家として成功してくるとだんだん文壇で支持者が増え、一葉にお熱をあげる男性文人たちも出てきたりするのだが、良い人たちだとはいえ、劇中で一葉が言っているように、女性である一葉を褒めるだけで鋭いツッコミをしてきたりはしないのでちょっと物足りないところもある。そんな逆境でも一葉は書く女としてひとり立った、というのが非常に心に残る展開と演出になっているし、黒木華の演技もいい。

 この芝居はなかなか政治的な芝居でもある。日清戦争によるナショナリズムの高まりのせいで、自由精神執筆をしたい作家たちにとっては書きづらい時代がやってきているという暗い世相が描かれているのだが、このあたりは日清戦争に仮託して現在の状況を諷刺する演出が行われていたと思う。さらに非常にフェミニスト的なところがあり、斎藤緑雨がやってきて一葉の作品に含まれている男性中心社会への批判を指摘するところは、文学研究している者としては物凄く面白かった。この劇中で斎藤緑雨がやっているような精読に基づく微妙解釈というのは文芸批評醍醐味だし、さらイヤミな口ぶりながらもフェミニスト批評みたいなこと(ちょっとひねくれてはいるが)をちゃんとやっていて、どこまでが史料に基づいたものなのかはわからないが実に良かった。

 しかしながら、このお芝居に出てくる明治文壇というのは恐ろしい世界である。どのくらい史実に忠実なのかはわからないのだが、少なくともこの劇中では、お前の作品文句があると言って斎藤緑雨レベルの批評家が、電話でもメールでもブログでもツイッターでもなく突撃訪問してくるのであるブログ文句を言われ現代のほうが、直接会って喧嘩しなくていいだけだいぶマシだと思ってしまった。ほんとにあんな感じで訪問していたの?

 

2015-11-21

小田嶋隆「触らぬフェミに祟りなし」を芸術史の観点から批判する

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 『新潮452015年11月号の「言論不自由特集小田嶋隆「触らぬフェミに祟りなし」(pp. 41-46)という記事寄稿されているのですが、この記事には演劇研究者(及びフェミニスト)としては見過ごせないレベルの調査不足、あるいは舞台芸術の軽視があると思ったんでツイッター連続ツイートしたところ、togetterにまとめられたようです。ひとことで言うと、この記事においては「戦争ラブな男とはHしない女たち」批判をしているにもかかわらず、おそらくちょっと舞台美術古代ギリシャ史のどれかをかじった人なら組織名を聞いただけでピンとくるであろう元ネタアリストパネス古典的喜劇『女の平和』に一切触れていないということをツイートしました。なお、リンク先にあるオーブリー・ビアズリーの『女の平和』の挿絵はたいへん有名なものですが刺激が強いので(!)閲覧注意です。

 「戦争ラブな男とはHしない女たち」の文化史的コンテクスト

2015-08-15

Get ye flocks off, get ye flocks off, honey〜『ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム』

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 『ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム』を行きの飛行機の中で見た。 

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 主人公はひつじのショーン。ショーンと仲間たちは農場主を眠らせてバカンスをとろうとするが、ひょんなことから農場主が寝ているトレイラーが暴走して街まで行ってしまう。農場主を連れ帰ろうとしたショーンたちも街に出かけるが、なんと農場主は記憶喪失を患ってショーンたちのことをすっかり忘れていた…ショーンたちは農場主と一緒の田舎での暮らしを取り戻すことができるのか?

 大きな街に行って戻ってくるというだけのたいへんシンプルな作りで、セリフがほとんどなくてサイレント映画みたいな演出で笑いを醸し出すようにしている。この間見た『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』なんかのプロットが異常に複雑だったことを考えると、こういうシンプルな話だけで笑わせてアクションでハラハラさせてちゃんと感動もさせるという作りはかえって洗練されて見える(既に何人がそう指摘している人もいるが、行って帰ってくるだけのプロットやセリフに頼らない作りは『マッドマックス怒りのデス・ロード』に似てるかもしれないが、あれよりもかなり笑いがある)。ストップモーションアニメで動き回る動物たちのかわいらしさと表情の豊かさは全く折り紙つきで、さらにストップモーションアニメの性質をふんだんに生かした突拍子も無いアクションや展開も笑える(ひつじたちが人間に変装して動物捕獲人を騙すあたりのドタバタぶりとかはなかなか実写では出ない味わいだろうと思う)。個人的には、ショーンがうちの田舎にいっぱいいるサフォークで、農場と街の関係もうちの故郷と旭川みたいな感じなのがウケた。

 ひとつ気になったのが、どういうわけだかショーンがバスで街に行く場面でプライマル・スクリームの'Rocks'が使われていたことである。全体的に音楽の使い方は上手で、ここも効いていたと思うのだが、何か気になる。あの意味はいったい…?ちょっと『ワールズ・エンド』の'Loaded'の使い方を思い出したんだけど、プライマル・スクリームって自由と冒険を表す音楽なんだろうか?

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2015-06-21

フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(3)フェミニスト批評編

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 一昨日の「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(1)物語・ノンフィクション編」と「フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(2)理論・学術・専門書編」に続いて、最後に「フェミニスト批評編」をやろうと思う。フェミニズムの文学批評は(というかよくできた批評研究書というのはたいていそうだが)、普通に読んでいるとわからないような話の深い層を解き明かしてくれるものなので、別にフェミニズムにそんなに興味がない人であっても、本を読んだり演劇を見る時によりおもしろく考える助けになるのでとてもオススメだ。ただ、今回は文学演劇以外の批評、つまり映画、美術、テレビなどを対象にしたものや、クィア批評に該当するものは便宜的に入れないことにした(こういうものはたぶんそれだけで5冊別に選んだほうがいい)。あと、日本語訳がないものとアンソロジーは除外したので、ブラックフェミニスト批評などが入らなくなってしまったのがとても残念だ。


・ヴァージニア・ウルフ『自分だけの部屋』川本静子訳、みすず書房、2013。

 古典を読みたいという人向け。80年以上前に書かれた古典的著作であるフェミニスト批評のみならずフェミニズムの古典とされている著作である女性ものを書くためには収入と自分だけの部屋が必要だ、というかなりミドルクラス中心的な話からはじまるのでちょっと受け入れにくいという人もいるかもしれないが、おそらくフェミニズムの古典の中ではこれは最も軽妙で機知に富んだ読みやすいもののひとつだと思う。ウルフはふだんはかなり難解で洗練された小説を書く大作家なのだが、このエッセイは小説にも見受けられる反逆の精神はそのままでずっとリラックスして一般向けに書いているので、ウルフ入門としてもいいかもしれない。

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・エレイン・ショーウォーター『女性自身の文学―ブロンテからレッシングまで』川本静子他訳、みすず書房、1993。

 歴史に興味がある人向け。英国の女性小説家に焦点をあてたフェミニスト批評である女性男性のペンネームを使って著作を出していた時代から、先人の業績のおかげもあって女性として小説を出せるようになった時代まで、様々な切り口で女性の書き手たちの業績を再評価し、女性小説家の歴史を書いて見せる。タイトルは上にあげたウルフの著作にひっかけたものだ。

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・キャスリーン・グレゴリー・クライン『女探偵大研究』青木由紀子訳、晶文社、1994。

 ミステリに興味がある人向け。フェミニスト批評ではSFとかミステリ、ファンタジーといったジャンル小説の研究もかなり盛んで、この研究書はミステリに出てくるプロの女性探偵のみに焦点をあてたフェミニスト批評である。誰でも知ってるような有名探偵から、誰も知らないようなマイナー作品まで、ミステリの発展の歴史をふまえながら分析をしていく様子はとても面白い。

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・ジョアナ・ラス『テクスチュアル・ハラスメント』小谷真理訳、インスクリプト、2001。

 これ、原題はHow to Suppress Women's Writingということで、ハウツー本みたいなタイトルになっている。内容はいかに文学史において男性の権威を用いて女性の書き物を矮小化、簒奪してきたかということの歴史的検証である。軽い語り口で読みやすい本だが、内容は女性作家に対するかなり悪質な批判から、もっと微妙ちょっと考えないと気付かないかもしれないものまで、いろいろ含まれている。現在でもこの手の女性作家に対する嫌がらせはしばしば行われており、この本の訳者の小谷真理はその問題直接の被害者である*1

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・サンドラ・ギルバート、スーザン・グーバー『屋根裏の狂女―ブロンテと共に』山田晴子、薗田美和子訳、朝日出版社、1986。

 これもフェミニズム批評の金字塔と言われているものだが、その理由のひとつとして、フェミニズムの文学研究の中から出てきた極めて独創性のある業績だという点がある。いろいろな批評史の本などで言われているが、文学批評理論というのはフェミニスト批評も含めて他の分野、例えば精神分析とかフーコーとかデリダとかから理論を天下りみたいに持ってくることで成立しているというものも結構ある。しかしながらこの著作はそういう外部の理論にあまり頼らず、文学研究生え抜きの読解技術とフェミニズムそのもの問題意識が切り結ぶところからそのまんま出てきたもので、非常にオリジナリティがある。ここで示されている精密な読解を参考にすれば、ブロンテが3倍は面白くなること請け合いだ。

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 さて、これでシリーズ終了なわけですが、私がリストを作るとどうしても文学歴史に偏るので、哲学系とか社会系とかでもフェミニストで本が好きな人は是非選書リストとか作ってほしいです。あと、もし希望があれば映画とか「女性史」とか「もっとたくさん小説をリストしろ」とかも可能な限り受け付けます。

*1:ちなみに、このエントリを作るきっかけとなったこちらのまとめで、フェミニズムの本をすすめるとかいう話なのに「その前にこれを読まないとわからない」的な調子で(おそらくフェミニズムに対してたいして興味もコミットメントもない人が)ロールズやセンをすすめてくるというあたり、私は『テクスチュアル・ハラスメント』の中でしばしば分析されている、男性の影響によって女性の業績を過小評価すること(「彼女は書いたが、男性に助けてもらった」)に通じる発想があると思う。「フェミニズムをやるためにはあれもこれも全部やれ」というのは、まあこのへんとかにもあるように、フェミニズムが何か他の思想(多くの場合、男性中心的な側面をフェミニズムに批判されているような思想)の派生物であるかのように扱う軽視や男性的と考えられる権威へのすり寄りの表れであったり、あるいはフェミニズムだけに対してやたらに過剰な知識を求めるいわゆる「マウンティング」であったりするのだが、まあフェミニズム以外の分野で(すごく学際的な議論をやってる場ならともかく、とくに初学者に対して)こんな要求がどの程度行われているかを考えるとその動機は実に怪しいものだ。昔はマルクスだったと思うのだが、最近はロールズなんだろうか。しかしマルクスやロールズやセンは大変重要だと思うし、必要があれば読んだほうがいいと思うが、別にそれを読まないとフェミニズムについて学べないようなものではないだろう。

2015-06-19

フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(1)物語・ノンフィクション編

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 最近炎上していたこのまとめがとにかくひどい。

クソフェミ「まずは本を読め!」俺ら「どの本を?」のテンプレに答える本当にフェミニズムが学べる5冊の本

 とりあえずこのまとめのひどさはいくつもあるのだが、

・タイトルに「クソフェミ」というのが入っている時点で、フェミニズムを侮蔑する気が全身から汗のようににじみ出ている。真面目に謙虚さと疑いを持って学ぶ気はないようだ。

・そもそもフェミニストが「まずは本を読め」というのをテンプレ的に言ってくるという状況があまり想像できないが、それはともかくとして他の専門分野で妙なことを言うと「本を読んでから言え」と言われるのは当たり前なのに(宇宙、地震や火山、医学、歴史など)なぜフェミニズムだけこんなにウザがられているのか理解できないし、また関心があるという人に本をすすめるのは別に普通である

フェミニズムについて知りたいくせにいきなりロールズやセンをすすめてくるのが意味不明で、男性の思想家の権威でフェミニズムを陰らせようというよくある差別かと警戒してしまう。しかも、フェミニズムについて知りたい人にフェミニズムがテーマじゃない本をすすめているので読むほうだって困るだろう。

・ロールズやセンみたいながっつりした本をすすめた後でいきなりジェンダーの入門書をすすめるとか、まともな選書としてはあり得ない。あげられている『ジェンダー論をつかむ』は大学などで教科書としてよく使われている良い本だと思うが、入門書というのは初学者が読むものなので、初学者への教育方法とかに関心がない限り、たぶんロールズやセンを読み切ってこれからしっかり考えるぞーという人に教科書を薦めてもつまらないだろう。

 と、いうことで、こんなおかしなブックリストが学生などに真に受けられてしまうと困るので、フェミニズムに真摯に関心を持とうとしている人(はなからバカにするつもりの人たちは何を読んでも身につかないと思うが)に個人的におすすめしたい本を5冊、紹介したいと思う。これは三回シリーズになる予定で、一回目は「物語・ノンフィクション編」、二回目は「理論・学術・専門書編」、三回目は「フェミニスト批評編」になる予定である。できるかぎりやさしく、わかりやすいものを選ぶようにするが、ちょっと好みが入って偏るのは許してほしい。私の思想に合致しているかよりは読みやすいか、初学者にすすめられるか、バラエティがあるかを重視している。

 まず、今日は「物語・ノンフィクション編」をやろうと思う。私はフェミニズムに興味があるとか知りたいという人には、まずはいわゆる「フェミニズムについての本」ではなく、より女性の体験とか考えを個人的に、また場合によっては感動をもって理解できるような文学作品や映画をすすめることにしている。なぜなら私は何よりも芸術の力を信じているからであり、よくできた芸術作品は「力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女のなかをもやはらげ、猛き武士の心をも慰むる」(『古今和歌集』仮名序)ものからである。優れた芸術作品は、いつもの自分を離れて他の立場になって考えたり、他の見方をもってものごとを考えたりする知性を与えてくれるものだ。

 そういうわけで最初は軽い気持ちで手を出せそうな読み物を5編、紹介しようと思う。最初はがっつり古典的作品とかばかりにしようかと思ったのだが、自伝やノンフィクションが好きという人も世の中には多いので、そういうものも入れることにした。私の専門のせいで英語圏に偏ってしまうのはちょっと許してほしい。


・マーガレット・アトウッド『侍女の物語』斎藤英治訳、早川書房、2001。

 SF的なものが好きな人向け。カナダの作家、アトウッドの小説である。ユートピア/ディストピア小説は様々な政治的思考を背景に発展してきたものだが、この作品フェミニズムを軸として女性にとっての悪夢のようなディストピアを描いている。女性が完全に自由を奪われ、聖書原理主義に基づいて管理される近未来社会舞台に、子どもを生む機械としてある司令官の家に配属された女性オブフレッドの抵抗を描く小説である

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・アリス・ウォーカー『カラーパープル』柳沢由美子訳(集英社、1986)。

 オーソドックスな小説が好きな人向け。アフリカンアメリカンのフェミニスト作家、アリス・ウォーカーの長編小説。1930年代頃のアメリカ南部の田舎を舞台に、貧困家庭の娘セリーが凄まじい虐待と差別を受けながらも他の女たちとのつながりによって人生を取り戻す様子を描いた作品である。人種差別と女性差別を克明に描いた作品なので(内容はかなり悲惨である)、アメリカでは図書館で最も検閲された本のひとつと言われている。面白いことに、書簡体という非常に伝統的な形式で描かれている。

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・ヘンリク・イプセン『人形の家』(複数翻訳あり)

 演劇が好きな人向け。19世紀末にノルウェーで書かれた戯曲だが、いまだに力を失っていない。仲むつまじい夫婦が主人公なのだが、夫が妻を自分と対等に扱っていなかったことが綻びるように明らかになっていった結果、取り返しのつかないところまで夫婦が破局してしまうという恐ろしい泥沼の家庭劇に、女性の人権、人間の意志の自由への希求を織り込んだ作品である

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・マララ・ユスフザイ、パトリシア・マコーミック『マララー教育のために立ち上がり、世界を変えた少女』道傳愛子訳、岩崎書店、2014。

 ニュースや国際情勢などに興味ある人向け。女子教育は選挙権と並んでフェミニズムの最も大きな関心事のひとつだが、これはそうしたテーマについて考えるきっかけになる本だと思う。マララ・ユスフザイは女子教育を推進するためブログなどの活動をしていたら政治的暗殺の標的になったということで、若くして大変な苦労をした人なのだが、この本はとても平易でかつあまり暗くならない感じで書かれているので、読みやすいと思う。

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・シェリル・サンドバーグ『LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲』川本裕子、村井章子訳、日本経済新聞出版社、2013。

 ビジネスに興味がある人向け。フェイスブックCOOであるシェリル・サンドバーグの自伝+ビジネス本で、女子労働についてフェミニズム的視点を持って書かれたビジネス本がベストセラーになったというのは画期的なことだと思う。非常にホワイトカラー志向の本なので抵抗もあると思うが、とにかくこれでもかこれでもかとデータや統計を出して女性が置かれている状況についてプレゼンするというスタイルは説得的かつ明確なので、読みやすさについては保証できる。

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シェリル・サンドバーグ
日本経済新聞出版社
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