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2016-09-17

マシュー・ボーン版『眠れる森の美女』(The Sleeping Beauty)日本公演

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 マシュー・ボーン版『眠れる森の美女』(The Sleeping Beauty)の日本公演を見てきた。既にロンドンでの初演を見ているので感想そちらとそんなに変わらないのだが、ゴシック雰囲気に独特の色気とユーモアからめた純愛もので切ない作品だった。とにかく楽しめる作品である。ただ、『白鳥の湖』には負ける。

2014-07-24

これはおとぎ話じゃない、レイプ&リベンジアクションだ!〜『マレフィセント』(ネタバレあり)

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 『マレフィセント』を見てきた。一年に二度もディズニー映画を金払って見るなんて実に癪に障るのだが、アンジー魔女姿に抵抗できずついふらふらと…

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 この映画賛否両論あるようだが、まあ出来としては『アナと雪の女王』のほうがだいぶ良いと思うんだけど、私は断然こっちのほうが好きである。なんてったってこの映画おとぎ話のフリをしているわりにはずいぶんえぐいレイプ&リベンジアクション映画で、私が好きな『フォクシー・ブラウン』とかの女ものブラックスプロイテーション映画みたいなノリで見るべきものだと思うからである

 既にずいぶんいろんなところで解説されているが、これはディズニーアニメ眠れる森の美女』の再解釈である(私はたぶんこの映画を見たことがない)。とりあえずあらすじを書いておくと、ヒロインは翼ある妖精マレフィセント妖精の国ムーアで楽しく暮らしているが、ひょんなことから人間少年ステファンと仲良くなる。ところが世俗の欲に目がくらんだステファンは、マレフィセント敵対している人間の王ヘンリーにとりいって後継者になるため、マレフィセントを騙して翼を盗む。怒りで復讐魔女となるマレフィセントマレフィセントは王と王妃最初の娘であるオーロラ姫の洗礼パーティに出かけていって、姫が16歳になる日に、糸つむぎで指を刺して死の眠りに落ちてしまうよう呪いをかける。姫は3人の妖精に預けられて人目をしのんで育てられるが、マレフィセントは姫を見張り、なんだかんだで姫が危険に見舞われないよう尽力してやるうちに姫のことを母のように愛するようになってしまう。しか呪いはあまりにも強力で自分で取り消せない。どうするマレフィセント…ということになるのだが、最後オリジナルと違ってハッピーエンドだ。

 この映画マレフィセントが翼を盗まれるあたりが明らかにデートレイプ想像させるような描き方になっており、おとぎ話の再解釈にしてもずいぶんえぐいと思った。マレフィセントのところにしばらくご無沙汰だったステファンがやってきて、マレフィセント四方山話で懐柔し、睡眠薬入りの酒を飲ませて殺そうとする…のだが、結局元カノを殺す決心がつかずに鉄(妖精の弱点)でマレフィセントの翼を切り落とす。目覚めたマレフィセントは翼がもぎとられているのを知ってものすごいショックを受ける。これ、明らかにレイプドラッグ(相手前後不覚にさせてレイプする目的で酒に入れるドラッグ)を用いたデートレイプ隠喩で、起きた時のマレフィセントの反応も明らかに自分レイプされたと気付いた女性のそれだと思う(これは見ている最中にすぐ気付いてすごくいたたまれない気分になった)。しかしながらマレフィセントは翼をもがれた絶望の淵からサヴァイヴァーとして立ち上がり、復讐を誓って実行する。こういう、レイプされた主人公(女性場合が多いが、男性場合もある)が強姦犯に復讐をとげるまでを描く映画レイプ&リベンジフィルムと言い(『処女の泉』からキル・ビル』や『テルマ&ルイーズ』まで含む幅広いジャンルである)、これはフェミニスト的になったりまた逆に悪い意味でいろいろと「エクスプロイテーション」的になったり、両極端に振れるような複雑なジャンルなのだが、『マレフィセント』はレイプおとぎ話っぽく隠喩にとどめておいて女性虐待搾取エロティックに見せない一方、復讐はかなり徹底的に描いているという面で、非常に女性視点レイプ&リベンジ映画だと思った。単に強姦犯に復讐するだけじゃなく、他の女の助けによって最後は翼を取り戻す=つまり、全き自分の姿(integrity)を回復する、というあたりも、性暴力女性から永遠に活力を奪ってしまうようなものではないのだ、というようなエンパワーメントメッセージを感じるところがある。

 そう考えながら見ると、シャールト・コプリー演じるステファンがあまりにも救いようのないヤツなのもあまり気にならない。なんてったってこいつはレイプ&リベンジ映画強姦なのだからいいところなんかあるわけないのだ。マレフィセントからとんでもない迷惑を被ったオーロラが、最後マレフィセントをひたすら助けるようになったりするあたりはぶっ飛ばしすぎで説得力に欠ける気がするが、まあそのあたりは「女性同士の絆によってこそ性暴力が打ち倒される」ということなんだろう。最後マレフィセントがステファンを殺すのが、自衛のために勢い余って、ステファンがかなり自業自得感満載に落下して…というあたり、マレフィセント(復讐者)を悪者にしない配慮がかなりあるのがディズニーっぽいと思ったのだが、とはい最後の翼を取り戻したマレフィセントアクションはかなりすごい。このあたりのアクションオーロラとの協力を見ていると、製作陣は『眠れる森の美女』よりも『キル・ビル vol.1』や『テルマ&ルイーズ』や『フォクシーブラウン』のほうが好きなんじゃないのかという気がしたくらい、最後ヒロインアクションは強烈である

 まあしかし、結局タイトル真逆のことを書いてしまうことになるのだが、これは結局おとぎ話なのである現実世界では性暴力犯人は裁きを受けずにそのへんをうろついていることが多く、被害者女性だろうが男性だろうが、個人的復讐が遂げられることなんかもほとんどないだろう。それどころか被害者のほうが尊厳を奪われ、一生翼をもぎとられ続けることになりかねない。そういう点で、『マレフィセント』は実は何よりも徹底的におとぎ話なんだろうと思う。空想の中だけなら、復讐できる。

 ↓おまけ。フェミニストおとぎ話解釈映画嚆矢もっと評価されるべき!

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2012-12-05

マシュー・ボーン版『眠れる森の美女』(The Sleeping Beauty)世界初演!!〜オリジナルが初演された1890年から昨晩までというタイムスパンでダンスの歴史を見据えた野心作

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 マシュー・ボーンの『眠れる森の美女世界初演を初日に見てきた。言わずとしれたチャイコフスキーのバレエの翻案で、マシュー・ボーンはこれまた言わずとしれた男性が白鳥を踊る『白鳥の湖』のディレクターである。ボーンは古典をかなりしっちゃかめっちゃかに作り替えることで有名で、イギリスのみならず世界的に人気がある。

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 ボーン版『眠れる森の美女』はチャイコフスキーのオリジナルが初演された1890年から「昨晩」、つまり2012年までのタイムスパンで現代的に再解釈したいばら姫伝説を上演するというものであり、かつ幕が進むごとに踊りがちょっとずつモダナイズされていくということで(このへんは素人なのでよくわからないところも多かったのだが、たしかに明らかにステップがモダンな感じになっていくの)、ダンスの歴史にも目配りした非常に野心的な改作である

 まずは1890年の第一幕、子供がなかった国王夫妻が妖精に願掛けして王女をさずかるのだが、国王夫妻がこの願掛けのあとの感謝を忘れたせいで激怒した妖精が王女が成年になったら死ぬ呪いをかける…ものの、良い妖精(妖精っていうか、羽根が生えてるんだけどゴスくてかなり吸血鬼っぽい)の魔術で呪いが軽減される(話のディテールはちょっと自信ない、というかボーン作品では観客の想像力に残されてるところが多いのであまり決定的なあらすじというものが存在しない)。この第一幕は非常にオーソドックスなロマンティックバレエで、セットもゴシックリヴァイヴァルふうなバルコニーのついた豪華な子供部屋である

 第二幕は1911年、王女が21歳に達した時に設定されており、ファッションがかなり1910年代的になっているし、ダンスもなんか若干新しい感じになっている。王女は同年代のキュートな森番(gamekeeper、猟場の番人)と身分違いの恋に落ちており、白いスーツやワンピースに身を包んだ英国男女がたくさん出てくるという設定も含めて『チャタレイ夫人』よりは明らかに『モーリス』(1910年代が舞台)の影響が濃厚である一方、お庭でテニスをめぐる恋のさや当てというところはドビュッシーの『遊戯』を下敷きにしてるだろうと思う。王女は森番から赤い花をもらうなど2人でいちゃいちゃしているわけであるが、そこになんと例の死の呪いをかけた妖精の遺児であるゴス息子がやってきて王女を誘惑(ここ、たぶんシェイクスピアの『テンペスト』のシコラックスとキャリバンへのアリュージョンがある)。若干フラッパー風味で陽気な王女はゴス息子妖精から黒い花をもらい、呪いにやられてエクソシストみたいに痙攣しまくったあと、森番の腕の中で100年の眠りについてしまう。そこへ良い妖精がやってきて王女をいばらの城に隠し、嘆き悲しむ森番に噛みついて(!)不死の妖精にしてやる(『トワイライト』とかあのへんへのアリュージョンですな。ここでお客爆笑だった)。

 ここで100年間の幕間。

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 第三幕は現在に設定されおり、王女のいばらの城は怪談スポットになっている(観光客が写真をとりにきたりする)。脇のオキュパイテントみたいなやつで目覚めた森番(妖精になったので小さい羽根も生えたが、服はまるでそこらのロンドンのにーちゃん)は良い妖精の手引きで城に入って王女を捜す(このへんのダンスもなんかちょっと第二幕と違うのだが、イサドラ・ダンカンあたりの時代の振付を参照してるらしい)。一方、ゴス息子妖精自分のキスで王女を目覚めさせようとするができなかったので、森番をだまくらかして王女にキスさせ、目覚めた王女を誘拐。ゴス息子妖精の手下に捕らわれてショックを受ける森番。

 第四幕は「昨晩」に設定されており、舞台は赤、青、黒を基本にした照明で彩られた現代のクラブみたいなところで、ダンスは超モダン。ゴス息子妖精は王女を魔法かなんかで洗脳し、悪魔崇拝儀礼かなんかの生贄にしようとしている(ちょっとこのあたりあらすじが自信ない。生贄にして殺すつもりなのか、自分と同じ不死妖精にして無理矢理結婚するつもりなのかはよくわからなかった)。森番は師匠である良い妖精の手引きで決死の覚悟で悪魔儀礼に潜入して王女を救出、良い妖精がゴス息子妖精とバトルを繰り広げている間に王女に二度目のキスをして洗脳から救う。最後は2人が抱き合って奥に引っ込む→妖精たちがベッドの上掛けをもちこんで恋人たちの体が隠れる→再び上掛けがとられるとパペットを使った妖精の赤ちゃんを2人がつれている、というオチ


 そういうわけで話はけっこうわかりやすく、『白鳥の湖』なんかに比べればはるかに翻案がストレートだと思うのだが、全編に溢れる(たまにブラックな)ユーモアとセクシーさは相変わらずである。王女は原作のなんかもう寝てるだけみたいな受動的な女性から活動的な現代娘になっていて、このあたりボーン頑張ったなと思う(それでもまああまり王女の見せ場がないのは確かなのだが)。赤ん坊の王女はパペットで表現されているのだが、えらく活動的な赤ん坊でしょっちゅう動き回って傅育係の目の届かないところに行ってしまい、みんなを困らせるというつかみの描写はかなり笑える。大人になった王女と森番、ゴス息子妖精の絡みは露骨ではないがけっこうわかりやすくセックスを連想させるものが多くてかなりエロティックだし、王女も積極的である。あととくに笑えるのは王女を生贄にしようとするゴス息子妖精が勇み足で嬉しそうに小躍りするところで、ちゃんと踊ってるのにバカダンスみたいでとてもおかしい。こうやって笑わせておきながら最後は百年たって結ばれた男女の恋心の高まりをきちんと踊りや照明で表現してホロリとさせて落とすあたり、とてもメリハリがある。

 『白鳥の湖』に比べればオリジナリティでは劣るかもしれないが、そうは行っても文句なしに面白く独創的であることは間違いないと思うので、是非是非皆さん見てください。バレエを見たことない人でもすごく楽しめると思います。チケット結構売り切れちゃってるみたいだけど、1月ならまだ少しだけあるみたい。

 おまけ:サドラーズ・ウェルズ劇場のクリスマスの飾り付け。照明で雪を表現。

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