ミュンスター再洗礼派研究日誌 このページをアンテナに追加

2018-04-01

[] 多宗派併存都市ノイヴィートでの調査 22:44  多宗派併存都市ノイヴィートでの調査を含むブックマーク

私は2月26日から3月10日までドイツ西部ライン川沿いの都市ノイヴィートで史料調査を行っていました。今回の調査の目的は、近世ノイヴィートに関する史資料の閲覧・入手です。ノイヴィートは人口6万5千人の小都市で、はじめて都市名を聞いたという人も多いかと思います。

では、何故私がノイヴィートに調査に来たのかというと、17〜18世紀に異なった宗派に属する住民の共生や争いについて知りたいからです。1653年に作られた新造都市ノイヴィートで支配的な教会は改革派でしたが、建造間もない時期からルター派カトリックユダヤ人再洗礼派の一派メノー派も居住していました。

18世紀半ばにはさらに霊感派とヘルンフート兄弟団も市内に移住してきたので、市内には7つの宗教集団が併存することになりました。そのため、近世において、異なった信仰をもつ人々たちがどのように関係を結んでいたのかを知るには格好の対象だと思い、関心を持ちました。

しかし、単に興味を持つだけでなく、本格的に調査し始めたのには、いくつかの理由があります。一番大きな理由は、共編著『旅する教会 再洗礼派宗教改革』をはじめとした自分の原稿で書きながら色々と気になることがあったためです。

元々私がノイヴィートのことを知ったのは、新教出版社の雑誌『福音と世界』で行った連載「旅する教会」のために、現代までの再洗礼派の歴史を調べたことがきっかけでした。その時近世にメノー派が住んでいた都市について少し調べたのですが、その中にノイヴィートも含まれていました。

結局紙幅の問題で連載では扱えませんでしたが、2017年に単行本化した『旅する教会 再洗礼派宗教改革』では、ノイヴィートを含めメノー派が住んでいた神聖ローマ帝国の多宗派併存都市を紹介することができました。

ただし、調査や執筆の時間も限られ、本が扱う範囲も広かったので、十分な調査ができず残念に思っていました。帝国の都市の宗派状況については少ししか触れられなかったし、もっと掘り下げてきちんと調べたいと思っていました。

帝国の多宗派併存都市を調べたいという思いは、その後『福音と世界』2017年3月号で、やはり18世紀までの再洗礼派を取り巻く状況を描いた「曖昧になる「正統」と「異端」の境界」という原稿を書いたことで、より大きくなりました。

さらに、17〜18世紀の宗派状況を含めた「長期の宗教改革」研究を把握することは、これから自分が宗教改革研究者として研究を続けていくためにも、必要不可欠だと思ったことも理由として挙げられます。

『UP』での連載「広がる宗教改革」第二回で鍵和田賢さんが宗教改革研究の対象が、近年18世紀あるいはその後にまで広がっていることを紹介していましたが、この「長期の宗教改革」は、現在急激に研究が進んでいる分野で、私も何とか食らいつかねばと思っています。

また、大学の教員としても、17〜18世紀をもっと本格的に調べたいと思っていました。私は大学でキリスト教の通史を教えているのですが、やはり近世から近代にかけて、宗教的寛容がいかに進み、政教分離が実現したかを、近年の研究成果を取り入れながら授業できるようになる必要を感じています。

しかし、研究・教育上の関心だけでなく、現代の世界が抱える問題に近世共通する部分があると感じたこともこのテーマに着手した大きな理由だったかもしれません。

私は、『Ministry』2017年5月号の「異質な人々とどうやって生きていくのか?−宗教改革後のヨーロッパと現代」という原稿で、近世の西欧でも現代の世界でも異質な人々が混じりあう状況にうまく対応できていない点では共通しているのではないかと書きましたが、このような状況を前にもやもやし続けています。

ということで昨年からノイヴィートについて本格的に調査を始め、上廣倫理財団様の研究助成に採択していただいたため、今回ノイヴィートで現地調査を行っています。

今回の調査では、特に宗派間の争いとその解決方法に注目しています。ノイヴィートは近世宗教的寛容が実現した都市として扱われることが多いのですが、実際には様々な理由で宗派間の争いも行われていました。

しかし、近世ノイヴィートの宗教的寛容を扱う研究自体少なく、争いをきちんと分析した研究はまだ出ていないので、試しにやってみようと思いました。ただ、調査を進めてきて、ノイヴィートに関する研究が少ない理由は何となく分かってきました。一番大きな理由は、おそらく史料へのアクセスです。

近世ノイヴィートの重要史料はほとんどヴィート侯文書館Fürstlich Wiedische Archivにあります。現在利用には予約が必要、基本的に毎週水曜しか開いておらず複写もできません。もちろん利用させていただけるだけありがたいのですが、公立文書館と比べ、利用状況が厳しいのは確かです。

https://www.landeshauptarchiv.de/service/archive-im-suedwesten/?no_cache=1&tx_lhaarchivportal2010_pi1%5BshowList%5D=1&tx_lhaarchivportal2010_pi1%5BarchiveId%5D=9

また、各宗教団体、牧師司祭が持っている史料を使った研究もありますが、こちらは部外者にとって利用するハードルがより一層高いです。

さらに、ノイヴィートに関する重要な史料は、史料集として刊行されておらず、様々な文献で断片的に活字になっているだけです。大半の史料文書館で手書き文書を読むしかないので、調査を進めるのはかなり大変です。

ただし、ヴィート侯文書館史料を主に利用してボン大学で博論を出したRoland Schlüterが著書Calvinismus am Mittelrhein, 2010の序文で述べているように、文書館文書の大半はまだ利用されておらず、面白い研究をする余地が大きいのは魅力です。

ヴィート侯文書館の所蔵資料のカタログは、1911年に刊行されているので、だいたいの所蔵品は把握することができます。文書館には、手書きのカタログもあります。文書館員の方も、非常に親切で、いろいろと調査を助けてくれます。

http://opac.regesta-imperii.de/lang_de/anzeige.php?sachtitelwerk=F%C3%BCrstlich+Wiedisches+Archiv+zu+Neuwied.+Urkundenregesten+und+Akteninventar&pk=8227

ちなみに私の今回の調査で主に調べているのは、ヴィート伯の書記局長Christian Hiskias Heinrich Fischerが1777年に書いたノイヴィートの宗教状況に関する手書きの著作と、1751から53年にかけて起こった武器を持った市民行列をめぐる市当局と霊感派の争いに関する史料です。

先週水曜に文書館に行ったときには、事前に見たい史料を連絡していたので、文書館員の方がすでにフィッシャーの著作を準備してくださっていました。

しかし、市民行列に関する史料は、このテーマを扱った研究Fritz Voß, Bürgerwehr in Neuwied, 1936 に史料の出典がきちんと書かれていなかったため、文書館員の方も見つけられていません。これからの調査で史料のありかを探すことになります。

ノイヴィートの法的な発展を扱ったHans Wilhelm Stupp, Die rechtsgeschichtliche Entwicklung der Stadt Neuwied, 1959, 19f., 41f. でも、市民行列をめぐる争いを扱っていますが、やはりフォスの研究を参照しているだけなので出典は分かりません。

しかし、今回の史料調査の結果、FWA 65/11/13 という1731年から51年までの霊感派に関する史料を綴じた冊子に、この争いに関する手紙が含まれていました。時間がなくて全部確認できませんでしたが、1751年の霊感派や都市シュルトハイスWeberの手紙がありました。フィッシャーの著作の中にも、この件についての記述がありました。

それ以外にも宗派間の争いは、他宗派の信徒への中傷、埋葬、礼拝への参加、教会や学校の建造など、いろいろな理由で起こっているので、こちらも並行して調べています。

ノイヴィートやボンで、様々な文献やパンフレットも発見・入手できたので、刊行された研究や史料についてはかなりの程度収集が進みました。

今回は研究助成をいただいて調査・研究を行っているので、なるべくその成果を知っていただけるように、ノイヴィートや近世宗派状況に関する情報や文献、史料について、Twitterブログなどで紹介していこうと思っています。もちろん、最終的には学術論文としてまとめるつもりです。

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2017-09-06

[] 連載「広がる宗教改革23:10  連載「広がる宗教改革」を含むブックマーク

東京大学のPR誌『UP』で、私を含む4人の研究者で、2017年9〜12月まで四回にわたり「広がる宗教改革」という連載を行います。「広がる宗教改革」は、宗教改革500周年の今年、宗教改革研究の新しい動向を紹介しようという企画です。

第一回は、原田晶子「中世後期への拡大 中世と連続する大変革」です。近年の宗教改革研究では、宗教改革中世と近代の分水嶺だと理解するのではなく、中世後期から宗教改革期は連続していたという側面を強調するようになっています。この回では、ドイツ神学者ベルント・ハムの「中心的規範への指向」論を中心に、中世後期と宗教改革期の関係について見て行きます。

http://www.utp.or.jp/book/b313416.html

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2017-04-26

[] 日本語の再洗礼派宗教改革少数派文献リスト 21:08  日本語の再洗礼派・宗教改革少数派文献リストを含むブックマーク

少し前に、共編著『旅する教会 再洗礼派と宗教改革』を出版しました。この本は、16世紀から現代にかけての再洗礼派の歴史を概観したものです。

この本には、各章に註のかたちで参考文献がつけてありますが、基本的に、各著者が自分が直接参考にした文献を紹介しているので、各テーマに関する重要な文献を網羅的に挙げているわけではありません。また、紙幅の都合もあり、この本には詳細な文献案内をつけませんでした。

そのため、再洗礼派に関心があり、もっと色々調べてみたいという方のために、日本語で読める再洗礼派関連の文献リストを作ってみました。まだまだ網羅的なリストになっていませんが、これから暇を見て随時追加していこうと思います。

1990年代半ばまでのミュンツァー、カールシュタット、農民戦争、再洗礼派に関する文献については、『宗教改革著作集15 教会規定・年表・地図・参考文献目録』1998年、210-222頁にまとめられているので、こちらも是非ご参照下さい。

日本メノナイト教会協議会のサイトの「アナバプテスト関連図書」にも、多くの再洗礼派関連の本が紹介されています。

http://www.mennonite.jp/resources/%e3%82%a2%e3%83%8a%e3%83%90%e3%83%97%e3%83%86%e3%82%b9%e3%83%88%e9%96%a2%e9%80%a3%e5%9b%b3%e6%9b%b8/


研究史整理


再洗礼派全般


史料


再洗礼派の思想


アンドレアス・ボーデンシュタイン・カールシュタット

  • 小田部進一「初期宗教改革における新しい信徒像 : アンドレアス・ボーデンシュタイン・フォン・カールシュタットの木版画ビラ『馬車』(1519年)を手がかりにして」『神学研究』52、2005年、115-128頁。
  • 小田部進一「カールシュタットにおける改革運動の神学的契機―『聖画像の撤去について』(1525年)を手がかりにして―」『キリスト教史学』62、2008年7月、90-119頁。
  • 倉松功『ルター、ミュンツァー、カールシュタット《その生涯と神学思想の比較》』聖文舎、1973年、1981年改訂3版。
  • 田中真造、松山與志雄、倉松功、宮庄哲夫、前間良爾訳『宗教改革著作集7 ミュンツァー、カールシュタット、農民戦争』教文舘、1985年

トーマス・ミュンツァー


スイス再洗礼派


バルタザル・フープマイアー


ドイツ再洗礼派


フッター派


心霊主義

  • 金子晴勇『ルターの霊性思想』教文館、2009年、271-187頁。(ルターとミュンツァー、フランク、シュヴェンクフェルトといった心霊主義者の思想を扱った小論考。)

カスパー・シュヴェンクフェルト


セバスティアン・フランク


ミュンスター再洗礼派


下ライン地方再洗礼派


低地地方再洗礼派


メノー・シモンズ


ミカエル・セルヴェトゥス


ユダヤ人

  • 森田安一「近世ドイツ語圏に見られるトルコ人・ユダヤ人観―ルターを中心に― 」深沢克己編『ユーラシア諸宗教の関係史論 他者の受容、他者の排除』勉誠出版、2010年、261-280頁。

トルコ人

  • 森田安一「近世ドイツ語圏に見られるトルコ人・ユダヤ人観―ルターを中心に― 」深沢克己編『ユーラシア諸宗教の関係史論 他者の受容、他者の排除』勉誠出版、2010年、261-280頁。
  • 野々瀬浩司「宗教改革とオスマン帝国」新教出版社編集部編『新教コイノーニア34 宗教改革と現代 改革者たちの500年とこれから』新教出版社2017年、168-275頁。

プロイセン再洗礼派


アーミシュ


ブレザレン教会


北米メノー派


ラテンアメリカ再洗礼派


日本の再洗礼派

  • ドイル・ブック著、岡崎寛人訳『敷居が高い 日本におけるキリスト兄弟団の歩み』日本キリスト兄弟団、1991年
  • 東條隆進『日本宣教における「地方」の問題―日本キリスト兄弟団の歩みを通して―』関西ミッション・リサーチ・センター、東京ミッション研究所、1999年。

再洗礼派宗教改革少数派を扱った文学

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2017-01-22

[] 編著書『旅する教会 再洗礼派宗教改革』が出版されます 21:10  編著書『旅する教会 再洗礼派と宗教改革』が出版されますを含むブックマーク


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私が他の方々といっしょに編集・執筆した『旅する教会 再洗礼派宗教改革』という本が1月25日に新教出版社から出版されます。この本は、再洗礼派の歴史をその誕生から現代までたどったものです。一冊で約500年の再洗礼派の歴史を駆け抜ける、疾走感あふれる一冊になっています。


この本は三部構成になっています。第1部「再洗礼派の誕生と受難」は、16世紀に宗教改革が始まった後、再洗礼派が誕生し広まっていった初期の段階を追いかけます。

チューリヒで最初に信仰洗礼を行われてから、再洗礼主義ドイツオーストリア、低地地方など他のヨーロッパ地域でも見られるようになり、心霊主義終末論と結びつくなど多様な運動となりました。そうした中、公権力と結びついた教会形成を目指したバルタザル・フープマイアー、終末の間近な到来と背神者たちに対する武装蜂起を構想したハンス・フートミュンスター再洗礼派の試みは潰え、非暴力・無抵抗の立場をとるスイス再洗礼派、フッター派、メノー派が生き残ることになる過程が描かれます。

第2部「再洗礼派の諸相」では、再洗礼派の歴史の大きな流れを概観しただけではこぼれ落ちてしまう様々な側面を描き出します。

そこでは、中世後期の宗教運動と再洗礼派の関係、ミュンスター事件に見られるメディアの中の再洗礼派像、都市ケルンを中心とした再洗礼派ネットワークイタリアのラディカルたち、再洗礼派とジェネラル・バプテストの出会い、再洗礼派の賛美歌集『アウスブント』、殉教者列伝『殉教者の鑑』に光を当てます。

第3部「近代化する社会を生きる再洗礼派」では、再洗礼派内での主要な宗派が確立された17世紀から現代までの彼らの歴史を追いかけます。

ヨーロッパ社会が近世から近代に移行するこの時代に、再洗礼派を取り巻く状況は変化し、彼らの多くは最終的に故郷ヨーロッパを離れ新大陸に渡ることになりました。そして北米で地歩を築いた再洗礼派は、全世界で宣教し信徒を広げていきました。その過程で、国民国家の成立や社会の近代化、社会やキリスト教グローバル化という大きな変化に、再洗礼派がどのように対応していったかが明らかにされます。

詳しい目次は、以下をご覧下さい。


永本哲也、猪刈由紀、早川朝子、山本大丙編『旅する教会 再洗礼派宗教改革』新教出版社、2017年

 プロローグ

第1部 再洗礼派の誕生と受難

 1 偽りの教えを説く悪魔−ルターの宗教改革再洗礼派

 2 ルターから逸脱する改革者たち−カールシュタット、ミュンツァー、再洗礼派

 3 ツヴィングリの先を行く−スイス再洗礼派

 4 1528年の聖霊降臨祭に世界は終末を迎える−南ドイツでの展開

 5 財産のいっさいを共同体に供出する−モラヴィアのフッター派

 6 地上に降り立った新しきエルサレム−1530-35年の北西ヨーロッパミュンスター再洗礼派

 7 信仰の徹底を目指して−心霊主義とメノー派の形成

 8 忌避と破門をめぐる戦い−メノー派の分裂・統合の試み・アーミシュの出現

 9 自覚的信仰と予定−ジャン・カルヴァン改革派再洗礼派

第2部 再洗礼派の諸相

 1 「使徒生活」を目指す改革者たち−中世後期の宗教運動と再洗礼派

 2 メディアのなかの再洗礼派ミュンスター再洗礼派王国驚異譚

 3 緩やかに根づくネットワーク再洗礼派と都市

 4 イタリアのラディカルたち−カトリックの牙城での宗教改革

 5 信仰者のバプテスマのみを認める−再洗礼派とバプテストの出会い

 6 『アウスブント』−殉教者たちの記憶

 7 『殉教者の鑑』−メノー派・アーミシュのアイデンティティの源泉

第3部 近代化する社会を生きる再洗礼派

 1 「宗派化」の時代を生き抜く宗教的少数派−16〜17世紀の「スイス兄弟団」

 2 「忌避」に同意しない者は破門する−アーミシュの誕生

 3 近世から近代を生き抜くメノー派−プロイセンドイツロシア

 4 フッター派の500年−財産共有と無抵抗主義を守りぬく

 5 真の信仰は決して強制され得ない−シュヴェンクフェルト派の形成

 6 自由な社会の市民として生きる−アメリカカナダ再洗礼派

 7 伝統の保持、「世界」への適応−アーミシュの教育

 8 世界に広がる再洗礼派アジアアフリカラテンアメリカへの宣教

 9 戦後に生まれた再洗礼派教会−日本のメノナイトとフッタライト

 エピローグ−再洗礼派宗教改革の500年

 再洗礼派関連略年表


新教出版社のサイトでも、この本の概要を見ることができます。

http://www.shinkyo-pb.com/2016/12/21/post-1267.php

Amazon では、現在予約受付中です。よろしくお願いします。

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN//4400227251/saisenreiha-22

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2016-08-10

[] スピリチュアル好きはどんな人か 00:14  スピリチュアル好きはどんな人かを含むブックマーク

アメリカでも日本でもスピリチュアルなものは社会の中でかなり広がっているが、それを愛好するのはどのような人々なのだろうか。

小池靖スピリチュアリティセラピー文化」樫尾直樹編『文化と霊性』慶應義塾大学出版会、2012年、41頁 によれば、アメリカでの調査によると「宗教ではなくスピリチュアル」を主に探求している人々には、比較的高学歴だが収入はやや低く、友人などの社会的ネットワークが少なめという傾向があるそうだ。小池が参照している文献は Roof, Wade Clark, A generation of seekers: the spiritual journeys of the baby boom generation, 1993. なのでデータは古い。

では、日本ではどうか。日本では2008年に20歳〜59歳のインターネットユーザー 2,000人を対象として「癒しとスピリチュアルに関する調査」が行われている。調査を実施したのは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)である。

http://www2.fgn.jp/mpac/_data/8/?d=200809_02

WEBサイトにも調査結果の概要がまとめられているが、より詳しい調査結果は、有元裕美子『スピリチュアル市場の研究』東洋経済新報社、2011年 で知ることができる。

この本の記述によれば、スピリチュアル系の商品やサービスを利用したことがあるのは、男性よりも女性の方が多く、女性の中でも20〜40代が多いとのこと。雇用形態を見ると派遣社員の利用が多いそうだ。ただし、年収は利用経験に影響を及ぼしていないとのこと。著者は派遣社員が多いのは、女性に派遣社員が多いせいでもあるだろうが、専業主婦の利用が多くないので、派遣社員の職場における不安定な立場が影響していることも考えると述べている。(150頁)

この本には詳しい調査結果が載っているので、スピリチュアルについて知るためには大変有用だと思う。

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