博士が100にんいるむらの広がり
先日ご紹介した秀逸な童話「博士が100にんいるむら」は、ネット上で大変な広がりを見せたようです。童話を制作した方か、それとも他の方かは存じませんが、この童話について言及したサイトを集めたアンテナを眺めると、その数がどれほど膨大かが分かります。
同時に、この童話で使った統計を調べた方も出てきて、あの童話の数字が結構いいかげんだったことも明らかになったようです。あの童話の博士は、実際には博士課程満期退学者も含まれているし、8%の自殺・失踪者は、実際には進路不明者だったとのことです。
あの童話ではどの統計を使ったかが明示されていなかったので、私を含め、おそらく多くの方が数字そのものについては半信半疑だったにも関わらず、そこにリアリティーを感じたのは、児童小銃さんが指摘していた、
例の童話をみて「ありそうな話」と感じた人はたぶんストックの感覚(何年間かの間に見聞きした自殺した人、連絡とれなくなった人の割合)と比較してしまっているのではないかな
という事実認識によるものではないと思います。それよりも、院生自身の「自分は将来、こうなるのではないか」という不安、あるいはそれ以外の人々の博士課程の学生の末路はこうであってもおかしくないという認識が、あの結末と上手く合致していたからでしょう。
自殺や失踪まで到らずとも、博士課程の学生、特に人文系の学生のその後が、極めて厳しいことは事実ですから、そのような事実認識が、悲惨な末路を想像させるのは、自然なことではないかと思います。そして、そのようなネガティブな未来予想が、今回の童話にリアリティーを与えたのではないでしょうか。
それにしても、世知辛いですね。