和の力 2012夏(3)練習試合 自覚生まれた
「しまっていくぞ!」
「オー!」
練習着やアンダーシャツ、中学時代の所属チームのユニホームが守備につく。主将に決まったばかりの捕手の鶴ケ島清風、木村真司君(2年)が気合を入れると、ちょっと間をおいてかけ声が続いた。
6月17日。連合チームは初めて練習試合をした。相手は日高高校。試合は終始、押され続けた。
3回表0―5の守備。ピンチの連続に田島智裕監督(26)が声をかけた。「集まってもいいんだぞ」。木村君は審判にタイムを告げ、投手の鶴ケ島清風、中山裕貴君(1年)のところに駆け寄った。
「声をかけろ」「ボールに集まれ」「踏ん張れ」
田島監督が諭すような口調で指示を飛ばし、選手がうなずいた。
4回表からは鶴ケ島清風の原周平君(2年)が投げた。相手打者を見逃しの三振に仕留めると「ナイスピッチング!」。越生選手が守る内野から大声が飛んだ。「その声援が大事なんだよ」。田島監督が顔をほころばせた。
原君は4回裏にチーム初安打を放ち、初得点を飾った。生還した鶴ケ島清風の斎藤徹弥君(1年)はベンチで手荒い歓迎を受けた。
試合中、選手と一緒に喜び、「楽しんで、目立って下さい」と励まし続けた田島監督。好守備があると「自分で守るという自覚が生まれたかな」と目を細めた。
◇大敗「これでいいはずはない」
結果は3―31の完敗。
越生の山本智也君(1年)は「負けは悔しいけど楽しかった。もっと練習して、しっかりプレーしたい」。木村君は「全力でやれた。でもこれでいいはずはない」と顔を赤くした。
試合後、田島監督は選手たちに語りかけた。「相手に影響されることなく、自分たちのプレーをして下さい。成功すればうれしいはず。出場できなければ味わえなかった気持ちです。お互いに感謝し、次に生かして」
「悔しかったですか?」と問いかけたのは石塚和成教諭(23)。「君たちはすぐに忘れるから、今の気持ちを忘れないように。明日から練習して次のステップにしましょう」と話した。
その石塚教諭の手に下がっていたのは、コンビニの袋二つ。中には、おにぎりの袋や飲み終えたペットボトル。相手校が提供してくれた更衣室から持ってきたのだという。「ナメてますね。自分の家にゴミを置かれたら嫌でしょ? 次から覚えておいて下さい」と、最後に語気を強めた。
チームは6月19日の抽選会で、7月14日午前10時から新座柳瀬と初戦を迎えることが決まった。
朝から緊張していた木村君は「もらったチャンス。でもやるからには勝ちたい」と意欲を見せた。
◇成川和希選手(鶴ケ島清風1年)
試合ができて楽しい。出場する以上は、何ができるか考え、全力を尽くす。
◇斎藤徹弥選手(鶴ケ島清風1年)
初めて練習試合をした時、2校で本当のチームを作りたいと思った。
◇戸田篤人選手(鶴ケ島清風1年)
下手なので、できることからチームに貢献したい。みんなで勝ちたい。
◇なるほど 埼玉高校野球
◎県内の全日制公立高校で、野球やサッカー、剣道など運動部で活動している生徒の数
2007年…5万2584人(47.5%)
2009年…5万1438人(46.2%)
2011年…5万1302人(45.5%)
(県保健体育課調べ)
(朝日新聞埼玉版)