前世紀のコンシューマライぜーション


Facebookが「Workplace」で仕事場にまで乗り込んで来ることが話題になっているようですが、ふと、インターネット夜明け前にコンシューマライゼーションを体験していたことを思い出しました。インターネットがまだみんなの手元になかった20世紀のコンシューマライゼーション、それは、パソコン通信のCUGを活用したビジネスコラボレーション環境のことであります。


1990年代初頭、ぼくはパソコン通信にちょっとだけ熱中していました。パソコンを電話回線につないでモデム同士のハンドシェイクを待ってID、パスワードを入れるとそこはもうパソコン通信世界。電子メール、掲示板、フォーラム、ソフトウェアの流通などを各パソコン通信業者が独自のサービスとコンテンツで牛耳っていた時代です。NECの『PC-VAN』、アスキーの『アスキーネット』、その他、、、そしてぼくが泳いでいたニフティの『NIFTY-Serve』という具合に、業者の数だけパソコン通信世界がありました。


そして、一般消費者が利用していた標準サービスとは別に、各パソコン通信業者はCUG(Closed Users Group)と呼ばれる「特別会員向けサイト」サービスを設けていました。標準サービスの仕組みをそのまま使っているのですが、決められたIDでログインした人だけが利用できる、閉じた空間です。


当時、社内ネットワークはメインフレームオフコンに専用端末をつなぐためのものであり、パソコン同士がネットワークを介して情報を共有したり連携したりなんてことはできない時代でした。その辺のことはすべてアナログ…基本、紙でやります。今の形の電子メールもグループウェアも、何にもないです。そんな時、パソコン通信という存在について「楽しい」という消費者的な見方ではなく、「これは業務に役立つ」と考えた人がいたのですね。CUGの社内利用、業務利用です。私が新卒でお世話になった内田洋行もそういった先進的な考えを持つ社員がいた会社の一つでした。


コンシューマライゼーションが "企業の情報システムで一般消費者向けのIT製品やサービスを利用すること" と定義されるのであれば、このCUGの業務利用はまさに、前世紀にたしかに存在したコンシューマライゼーションです。消費者向けで始まったサービスは「個人」を中心に設計され、また、ユーザビリティーも高いので、およそ人が関わる場所であれば様々な応用が利くことは自明。企業においても「人」が中心の業務に適応性が高いことは当然と言えば当然です。


ちなみにCUGはパソコン通信インフラに乗っているわけなので、オフィスからCUGを使うときは電話回線を通じて外のネットワークとつなぎます。当時は、社内の情報共有、流通、コラボレーションをするために社外のネットワークにつなぐことについて不思議な感覚を持っていましたが、これって、クラウド時代になると何の違和感もないですよね。