『逃げ恥』 〜 充実の最終回


第一回を見た直後の印象では、「家事とは?」を追究していくドラマなんだろうなという浅はかな期待で以下のようなツイートをしていたのですが(だから「恋愛的な要素に興味なし」と書いた)、回を追うごとにテーマは家事そのものという狭い範囲の事柄ではなく、夫婦関係についての幅広い考察を重ねていくドラマであるということが見えてきて、良い意味で期待を裏切るすばらしい作品でした。


『逃げ恥』を三週遅れで見始めた。思っていたよりしっかりとした主張がありそうな予感がしていて、どういうメッセージでまとめて行くかにとても興味がある。(恋愛的な要素にはあまり興味ないけど)
最終回まで見ないとまったく評価ができないタイプのドラマ。
https://twitter.com/saitokoichi/status/792640194264522752


雇用関係から始まった契約結婚からやがて愛情が芽生え…というアウトラインだけを見ていると「一風変わった恋愛もの」でしかなくて、ガッキーかわいいよねとか恋ダンスがいいとか毎回のエピソードがおもしろおかしくて!という楽しみ方で終わってしまうのですが(そういう楽しみ方ももちろんありだと思います!)、夫婦関係ってある意味すごく難しく複雑面倒なものなんだけど、そんなすべてのことにひとつひとつ正面からまじめに、あきらめずに向き合っていくことによって、人間は一人でないということに気づき、そして、周りのすべてのものに感謝する、という話だったんだとぼくは勝手に受け止めてます。


別な観点からは、物事を損得や勝ち負けといった主観的で表面的な基準だけで捉えているうちは、恋愛は本物にはならず孤独が続くし、夫婦生活は1+1ではなく1対1のままお互いを思いやる真の心は生まれない、というメッセージもあったかな、とも感じました。恋愛については風見さんが後半で気づいたポイントだし、夫婦生活については(まさに本ドラマの主題ですが)津崎夫妻が理系な姿勢で理詰めし続けた結果(このアプローチ自体は滑稽でしたが、本質をあぶり出すために必要な手法でした)見えてきた方向性だったりします。


とりわけ最終回は、非常に多くの要素とメッセージと登場人物それぞれのストーリーが盛り込まれており、連ドラとしてはかなり密度の濃い、見ごたえのあるものでした。と同時に、この最終回を最高に盛り上げるためにそれまでの10回に渡るエピソードが毎週周到に紡がれていたんだと感じ、全体の構成力もすばらしかったな、と感嘆。この手のドラマにありがちな「色々考えてみたけど結局愛がすべてだぜ!」なんていう安易なまとめ方もせず、最終回でしっかり締めくくったと思います。


ふたりの今後について、必ずしも「結婚(=婚姻届けの提出)」という "カタチ" にこだわる必要はないのではないかという、社会の枠にとらわれない関係の継続が示唆されていましたが、ここはあえてこの二人ですから、外的な縛りや制約の中で新たな発見や学びを続けてほしいなー、と個人的には思いました。夫婦生活は、婚姻届け(=夫婦関係の合意書)の提出という手続きを踏んで様々な制約や受益が生まれる一方で、今回のドラマで描かれていたように「結婚は、夫婦間の "約束事(=契約)" の上に成り立っているわけではない」という、矛盾というか複合的な状態だと思っているのですが、そんな状況の中で平匡&みくりが何を見つけるのか、とても興味があります。

  • 「結婚」は "点" であるが「夫婦生活」は "線" である
  • 人生は面倒なものである
  • 相手の態度から学びを得る、自分の行動を省みる大切さ。謙虚さと思いやりと。


数時間遅れで逃げ恥最終回見たけど、これだけ密度の濃い連ドラ最終回は久しぶりと思ったし、それまでの十のエピソードすべてがこの最終回にまっすぐつながっていたという構成も見事としか言いようがない。すばらしい!!
https://twitter.com/saitokoichi/status/811244221390680064


いろいろ気づきがあった、良いドラマでした。最終回はもうあと3回くらいは見直そうかな。