Thunderbird は別枠で

Mozilla 財団 CEO のミッチェル・ベイカーが、自身の blog で Mozilla のメールクライアント Thunderbird の今後の扱いについて提案を行っている。
Email Call to Action
Mozilla とは別組織の Thunderbird 財団を作る。Mozilla の下部組織に Thunderbird 専門の部署を作る。Thunderbirdseamonkey のように Product から Project へ格付けを変え、コミュニティ・ベースで開発を続ける。以上、三つの案を提示している。
以前から噂は耳にしていたのだが、要するに Thunderbird を切り離して、Mozilla 財団はブラウザ Firefox だけに専心したいようだ。

  • Thunderbird の責任者 Scott の blog エントリ - Thoughts On Thunderbird
    • ミッチェルは実務家らしくしっかり根回ししてあるようで、スコットにはこの時点で不満や否定的意見などあろうはずがない。
    • いわく、Mozilla 財団の目的はブラウジングとその関連領域であって、Thunderbird が寄与出来るものはない。したがって Thunderbird の優先順位はこのところずっと低いままだった。そこでミッチェルの提案 1 3 にある Thunderbird に特化した新機構の設立を支持するとしている。(この項、修正。新機構が Thunderbird Foundation に当たるものなのか、サポート提供等を主とする Thunderbird Company なのか未だ明確ではないと思われる。)
    • Firefox と違って独自に金の卵を産まない Thunderbird であるから、最も気になるのは運営にかかる資金源である。利用者からの寄付、サポート収益、他団体からの援助の三つを彼は挙げているが、果たしてそれで上手く行くのだろうか。
    • GoogleGMail との関係、Google から Thundebird 新機構への資金提供はどうなるのかといった問題をはっきりさせないうちには、コンセンサスを形成出来はしないだろう。
    • そう、要は Mozilla 財団の財布の紐を握っている Google の出方次第で、どうとでもなるのではないか。

Konqueror は WebKit 採用へ

数日前に読んだ記事なのだが、はてブされているものの左程話題になっていないようなので、ここでも言及しておく。
The unforking of KDE's KHTML and Webkit
KonquerorKDE 2.0 以来、KDE の Web ブラウザ、ファイル操作統合環境として用いられているアプリだ。私が最初に使った KonquerorRed Hat 7.x から入れた KDE 2.2 の頃だったろうか。その頃からすれば最近の KonquerorMozillaOpera と肩を並べられる程にまで成長した。一時、成長が止まっていた時期があったが、Apple が自分たちのブラウザ Safari に使うため、Konqueror の描画エンジンである KHTML を基に WebKit を開発するようになってから、格段の進歩をとげたのは広く知られているだろう。
軒先を貸したはずの WebKitKHTML の力関係は、どう見てもじきに母屋を取られるものであった。
当初 AppleOSSKHTML に対して、有効なフィードバックをするのではないか、それは KHTML にとっても結構なことであるという楽観的な見方があった。そしてそれは Konqueror の進歩という形で実を結んだ。しかし Apple は第一に KHTML の貢献者であるのではなく、Safari の開発者である。Safari が形になってくるにしたがって、そもそも別の製品なのだから、還元出来るものは次第に減っていった。取り残されることを危惧した KDE は、ここへ来てついに KHTML を捨て WebKit を描画エンジンに採用することを真剣に検討し始めた。
そこで問題になりそうなのが、KHTML を描画エンジンに使っているブラウザである。KHTMLKonqueror 以外にも、Nokia の一部の携帯ブラウザを始め幾つかのアプリケーションに用いられている。最近ではかつて Gecko を使っていた Epiphany にも使われる方針だという。

  • EpiphanyXUL を使わず、GnomeGTK+2 をツールキットに用いているがゆえに、Linux 等では Mozilla より軽快であると一部の支持を集めているブラウザ。
  • 記事によるとグラスゴーで開かれた KDE 開発者の会合、Akademy 2007 において、KHTML の産みの親である Trolltech 社員 Lars Knoll が WebKit を Qt に取り込む作業をしていると打ち明けたことに端を発する。
  • オープンソース・コミュニティにおける開発方針の決定というのは、投票によってではなくコンセンサス(合意)の形成によってなされる。会合の後、開発者たちに無料で酒が振舞われたグラスゴーのパブでの雰囲気は、幾つかの留保点はあるものの、Webkit KPart を早期に Konqueror へ取り込もうというものだったそうだ。

ideas are shared implicitly among the core contributors, but as a project grows, it becomes more important to write down these shared values.

WebKit Project Goals