「この世界の片隅に」鑑賞(ネタバレあり)

何かアニメ映画観たいなぁと思っていたんですが、「君の名は」を観るには相当出遅れ感があったので迷っていた所、富谷の方で昨日からこの映画が上映開始になっていたようなので朝早くに行って観て来ました。
本来「この世界の片隅に」は仙台のミニシアター系の映画館で昨年の11月から封切されていたんですが、口コミで評判が広がり、上映館数が増えて昨日も富谷の109シネマズで追加上映が始まったというわけです。
改めて封切された映画ってのは天邪鬼な自分にはジャストなチョイスだと思って、ドライブついでに何の気無しに観たわけですが…


これ、しっかり「戦争映画」ですね。


話は広島県呉市を舞台に、太平洋戦争を生き抜いたある一家の日常を主人公のすずの目線から切り取ったお話です。
別に主人公が銃持って戦うという事は一切無いんですが、戦時中に於ける女性から見た日常をしっかり描き、戦争の悲惨さも苦痛も苦難もじっくりと描き込んでいたので「アニメ映画」と言うより「戦争映画」として評価すべきだと判断しました。
なので思いがけなくこういうのを観ちゃったという感じでしたね。
戦争映画を直近で観たのは「アメリカンスナイパー」だったので、まぁそろそろ観るには頃合だったかもしれませんので。
そんなわけでほのぼのとした絵柄にある意味で騙された感はありますが、良いか悪いかと言われればもちろん良かったです。
前半は本当に70年以上前の日常とその当時ならではの常識を描いていますが、すずが空襲の被害を受けて右手を失ってからは戦争の悲惨さに話がシフトします。
のほほんとしていたあのすずに悲劇が降りかかるって事自体衝撃的でしたけど、今まで絵を描いたり家事をしてきた、その日常の象徴が無くなった事でバランスが崩れる様は下手な戦争の狂気を描くよりもリアリティがありましたね。
しかし家族の支えを経て自分を取り戻し、最後はちゃんと戦争を乗り越えてみせていた事にこれ以上無い安堵を覚えましたし、その苦労を見ていた分「良かったなぁ…」と思えて目頭に涙が浮かんでしまいました。
何たって話の舞台が原爆落とされた広島でしたから、心の何処かで何時死んでしまうのか気が気じゃなくて、ハラハラしてましたし。
しかしその不安を露骨に感じなかったのはすずや北条家の人々の苦難に負けない陽気さがあったからでしたし、それが隠れ蓑になったお陰で複線も衝撃的な展開にも素直に驚けたので、構成もしっかり練られていたんだと思います。
ただまぁ、色々映画的な御託を述べては来ましたけど、この映画を観て一番心に迫った事は「これが日本人の誰にとってもご先祖や家族が体験してきた事の一部」だと思える事ですよね。
自分もばあちゃんの畑の草取りを手伝ってた時に空襲の話を耳にタコが出来る位聞かされましたけど、この映画を観てそれにリアリティが付加されましたので。
ばあちゃんはお使いの途中で土手に隠れて空襲を免れたそうで、生きて勤め先の飛行場へ戻って来た時は同僚達から「良く無事だったな」と言われたらしいんですが、劇中みたいに爆風だけじゃなく爆弾の破片とかも掻い潜って生き延びていたんでしょうかね…。
そう思うとさっさと家に帰って仏壇に手を合わせて苦労を労いたい思いに駆られてしまいました。
けどそんな孫が家に帰って実際に仏壇に手を合わせた後にやった事は、艦これで部隊を遠征に出した事なんですけどね。
まぁ、艦船や戦車をエンターテイメントに転化できるほど世の中は平和になったと言えるかも知れませんが、「この世界の片隅に」という映画は間違いなく当時を語る教材となれる映画なので是非観て欲しいですし、一過性の物ではなく残っていって欲しい作品だと思います。
ちなみに映画館では人気過ぎてパンフレットが売り切れていてガッカリしましたが、帰り道で公式ガイドブックが手に入ったのでこれをパンフレット代わりに読もうと思ってます。

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

この世界の片隅に 劇場アニメ公式ガイドブック

今夜は映画の余韻に浸って過ごしたいですね。