Hatena::ブログ(Diary)

日々の記録 Twitter

2016-07-22

東京どこに住む? 住所格差と人生格差

この本も東京βとともに発売当初から電子書籍が出るのを待っていたけれど、出る気配がないので新宿南口の紀伊国屋書店で購入。東京β以上に関心を持って読んだ。

東京中心部(中心の5、6の区)への一極集中、食と住の近接という現在起こっていることを確認し、東京中心部への一極集中の背景や人が都市に住む理由を考察する。フード左翼とフード右翼でも感じたが、参照している本にも興味のあるものが多い。

全体の中で「なるほど」と思ったのは以下の3つ。

第1は土地の持つ意味の変化について。

土地があれば安心。それを貸すだけで生きていける時代もあったが、それはすでに崩壊しつつある。その中で、いかに柔軟な考えを持って、土地を離れることができるか。住む場所を変えることができるかは、これからの日本人にとって大きな意味を持つ能力ということになってくるのだ。

さらにここから話が発展して、現在は「土地」ではなく「住む場所」が資本になっているのではないか、さらに発展して「教育が、富裕階層がその優位性を維持するためにもっとも有効な「資本」になっているのだ」という指摘。

第2は第二次安倍内閣は「地方創生」に示されるように、橋本政権・小泉政権以来の「都市への集中」から歴史的な地方分散に舵を切ってしまったのではないかという指摘。私自身は「地方創生」は今のところある種のガス抜き、掛け声だけという感じがしているが、これが本格的に地方分散に向かってしまわないかどうか、注意は必要だと思う。

第3はアルビン・トフラーの予測の中で、都市化に関する予測が外れた理由について。

まずは、輸送コストが下がったときに起こることの予測を誤った。輸送コストが安くなることで、確かに工場や倉庫や配送センターなどは、都市を離れて地方に分散した。だが、知識集約産業の場合、その分散によるコスト削減効果を働かない。むしろ、現代のソフトウェア産業などにおいては「産業の知識集約度が高ければ高いほど、その産業は小さなエリアに集中する」のだと前出の経済学者であるハーフォードはいう。トフラーは、工業における産業集積の効果は把握していたが、脱工業化の時代に集積がさらに重要になるとは思わなかったのだ。

追記

7月20日にKindle版が出ていたみたい。

2016-07-15

東京β 更新され続ける都市の物語

速水氏の本はどれも読んで面白いので、この本も海外出張時からSession 22のインタビューPodcastで聞いたりしてKindle版が出るのを待っていた。しかし、なかなか電子書籍が出る気配がないので、南部アフリカからの出張からの帰国後、もう直ぐ売り場が小さくなってしまう新宿南口の紀伊国屋書店で購入。ここで書籍を買うのはこれが最後だったかもしれない。

映画、TVドラマ、小説などの文学作品で東京の各所がどう取り上げられてきたかと辿る、「都市をメディアとしてみるという見方で書いたもの」。取り上げられているのは、東京湾岸、副都心(新宿と臨海副都心)、東京のランドマーク(タワー)、水運都市としての東京、新橋、羽田空港。

この中で最も「都市をメディアとしてみるという見方」で東京の移り変わりを生き生きと描写できていると感じたのは、この本の約三分の1を占める東京湾岸。もう昨年の夏になるが、久しぶりに豊洲から勝鬨橋のあたりまで歩くことがあって、いつの間にかタワーマンションが林立している景色に驚いてしまった。

その驚きはきっと、筆者の以下の表現とつながるものだなと感じた。

かつては「不安」「不穏さ」の代表だった東京の臨海地域が、日常生活の舞台として自然に選ばれ、美しい光景として描かれるようになった。また、ここでの川沿い、新しい橋や高い建物が立ち並ぶ埋立地の光景は、新しく生まれてくるものを育む背景として描かれている。これからも湾岸の埋立地気を、ポジティブな意味合いを持って美しく描く作家の登場によって、実際の東京の湾岸地域もそのイメージを新しく変えていくことになるだろう

2016-07-02

総理

面白くて一気に読んでしまった。現役首相の政策形成に関する話をこんなふうに読むことができることがすごい。今年春のクルーグマンの国際金融経済分析会合のメモでも安倍内閣の政策決定過程を垣間見ることができたが、この本は経済(2014年秋の消費税増税の延期)だけではなく、対米外交(オバマ政権とのやりとり)もリアルに扱っている。

著者は、

反安倍勢力も、あるいは親安倍勢力も、安倍政権がどのように国家運営に向き合い、何を悩み何を目標としているのかをほとんど知らず、知ろうともしない人が大多数である。事実に基づかない論評は、批判も称賛も説得力を持たない。結果として、安倍政権に対して繰り返される論評の多くが、特定のイデオロギーを支持し特定の政治集団に属する勢力による、プロパガンダと断定されてもしょうがない中身となる

と言っている。それはその通りだと思う。合わせて、安倍晋三という個人の考えていることと、安倍政権を異なるものとして考えなければいけないと思うけれど、そういうふうにできていない中での批判も多いと思う。かといって私自身も安倍政権の政策を最適なものと考えているわけではなく、

今のところ安倍のような、国家像を明確に提示するリーダー候補はほかに見当たらない。どういう絵を描くか以前に、絵描きのライバルがいないのだ。安倍の絵のトーンが気に入らなくても、ほかの絵を選ぶ選択肢がないというのが今の日本の政治状況なのである。

という著者の言葉がそのまま当てはまるような状態なんだろう。

田中先生が

『日本会議の研究』はここ数年の疑問には答えてくれた。どんな組織なのか。でもそれ以上ではない。あれ読んで安倍政権のことはほとんどわからない。むしろいま出ている『総理』が結構驚く内容。日本会議の一億倍ヤバい組織があることがよくわかるw。まあ、財務省のことだけど

とツイートされているけれど、確かに第3章に書かれている財務省の活動は凄まじいものがある(よくこの文章のまま出版できたなと思う)。でもその一方で、

だからこそ、財務省は多くの主要な政治家を籠絡し、懐柔し、恫喝して目的を果たしてきた。しかしそれは一概に批判されるべきことではない。そうした財務省の習性と能力を把握した上で、そのエネルギーを正しい方向に振り向け、国益を追求し実現するのは政治家の仕事なのである。

と書いている。第4章の対米外交のところでもそうだけれども、単純な追随ではなく、自らの考えに基づく方針を持ち、それに向かうように資源を動員すること、少なくともこの20年くらいは(もしかしたらもっと前からずっと)できていなかった、単純な追随できたことからの脱却することを見ているのかもしれないと思った。

総理 (幻冬舎単行本)

総理 (幻冬舎単行本)

戦後経済史は嘘ばかり

経済学を勉強していれば戦後の経済の流れを一通り知っている気になっている。しかし、以前に学んだこと、本で読んだことは間違っていることも多く、それが現在の経済の見方や対策の仕方を誤ったものにしてしまっていないか、というのがこの本の書かれた理由だと思う。

私自身が「そうだったのか」と思うものをいくつか取り上げると、

  • 傾斜生産方式が一定の役割を果たしたことは確かだが、それは「アメリカからうまく援助を引き出すことができた」という点だと評価されている
  • レーガン政権は「小さな政府」を標榜して、歳出削減を目指したので反ケインズ的な政策と見られがちだが、実際には典型的なケインズ政策
  • 1973年2月から制度上は変動相場制になったが、プラザ合意までは裏の介入で円安誘導されていた状態だった

というあたり。

それから戦後の経済の流れを把握するのについて重要だなと思うのは、原因と結果をきちんと把握すること。この本では「失われた20年」の原因としてよく取り上げられていたものに

  • 不良債権
  • バランスシート不況
  • IT投資、デジタル化の遅れによる生産性の低迷
  • ゾンビ企業の生き残り

があったが、これらはデフレの結果であって、失われた20年の原因ではないことを説明している。同じように「終身雇用」は高度経済成長の結果であって、終身雇用がなくなってきたから企業の成長が滞っているわけではない。原因と結果を逆に捉えているために今すべき経済対策についても考えを誤ってしまう例は多いと思う。

2016-06-21

最速の仕事術はプログラマーが知っている

この人の本は、実践としてのプログラミング講座を手に取ったことがあったけれど、最後まで読むことができなかった。だからどうしようかなと思ったが、いく村先生のこのツイートを見て読んでみる気になった。

「最速の仕事術はプログラマーが知っている、という本を書いてください」  本書の企画を聞いたとき、「なんて傲慢なタイトルの本だろう」と思いました。

と著者も言っている。この本全体に書かれていることもプログラマーでありかつ、経営者であるからこと書けることだという感じ。本の前半はプログラマー部分、後半は経営者の発想が大きい感じがする。

  • 日本語入力はローマ字ではなくかな入力かシフトJISを使う
  • 長文の作成はテキストエディタでMarkdownを使う
  • 紙の文書でもリンクを貼る
  • 情報の整理は見出しのつけ方

あたりは実践していきたい。

2016-06-19

重版出来

普段、ほとんどTVドラマは見る機会もないし見られないけれど、4月から火曜10時にTBS系列でやっていた『重版出来』は、わざわざジンバブエやナミビアなど日本から離れたところからインターネットで追っかけで見る価値のあったドラマだったと思う。

今週の火曜日にドラマは最終回を迎えてしまい、土曜日に「原作はどんなのかな?」と思ってAmazonをチェックしたら第1巻のKindle版が無料だったので読んでみたらやはり面白く、結局この週末で第7巻まで読んでしまった。

第7巻まででドラマのストーリーとほぼ同じ展開だったけれど、ちょっと違うところも出てきている。扱っているのはコミック雑誌の編集部だけど、本を好きな人はみんな楽しめるんじゃないかな?本を作り、読者に届ける人たちへの応援歌になってきている。

重版出来!  DVD-BOX

重版出来! DVD-BOX