宇宙は何でできているのか、重力とは何か、強い力と弱い力

実際には、「強い力と弱い力」(昨年11月)⇒「重力とは何か」(昨年12月)⇒「宇宙は何でできているのか」という順番で読んだけれども、私のように高校から文系で、素粒子論とか宇宙論のことをあまり知らない人は、この反対に「宇宙は何でできているのか」⇒「重力とは何か」⇒「強い力と弱い力」の準に読んでいくと、全体を俯瞰するところから細かいところに入っていけるんじゃないかと思う。

「宇宙は何でできているのか」では、冒頭にギリシャ神話に出てくる「ウロボロスの蛇」(自分の尻尾を飲み込んでいる蛇、世界の完全性を表すシンボルとのこと)という概念で宇宙研究(10の27乗の世界)と素粒子研究(10のマイナス35乗の世界)が結びつくのかを例えている。そして宇宙を構成するものの話(原子以外のものが宇宙の96%をしめている!)から、究極の素粒子を探す話、4つの力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)と流れて最後に「いかに多くのことがわかっていないか」の説明がある。宇宙研究と素粒子研究の現在の鳥瞰図を説明している感じ。

一方で大栗先生の2冊の本は、ぞれぞれ「重力」と「強い力」、「弱い力」についてその周辺概念(一般相対論、量子力学)や、それぞれの研究の展開の歴史が生き生きと描かれている。「重力」については元理論や超弦理論、「強い力」、「弱い力」については素粒子の発見やその素粒子を結びつける力について書いている。湯川秀樹の自伝『旅人』にある、

未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅行者である

という言葉を引いているが、研究者たちが先人の成果を道しるべにしながら、ある時はその先を進み、ある時はこれまでとは違う道に進んで、新しい理論(超弦理論標準模型)を作り上げた歴史が描かれている。

「重力とは何か」のあとがきには、

本書を書くときに思い浮かべたのは、卒業以来会っていない高校の同窓生でした。私とは違う道に進み科学からは遠ざかっているものの、好奇心は相変わらず旺盛で、筋道だてて説き起こしていけば理解してくれる。そんな友人に三〇年ぶりに再会して、私が大学で勉強し、大学院で研究を始め、今日まで考えてきたことを語るつもりで書きました。

とある。まさにそういう友人のような感じで読むことができた。

宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)

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重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る (幻冬舎新書)

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強い力と弱い力 ヒッグス粒子が宇宙にかけた魔法を解く

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