DESIGNEASTのこと

10月2日のナサニエルさんと椿さんとの対談(山崎亮さんモデレート)
DESIGNEAST TALK01 Nathaniel Corum ×椿昇 モデレーター 山崎亮


どちらもある場とそこに存在する問題との関連が強いプロジェクトを行ってはいるが、面白かったのが建築家のナサニエルさんは「どんなプロジェクトを行ったのか」の方を重点的に話し、一方でアーティストの椿さんは「それがなぜそこで行われたのか」ということまでを話してくださったこと。この差は建築家とアーティストとの差を一面で示しているかもしれない。


さて、この違いがどういうことかというと、椿さんの話では「どこでどんな問題を見つけたか」ということが具体的に想像しやすかった。言い換えると「なんでそこでそうしたのか」が想像しやすかったのだ。個人的にナサニエルさんに、引いては「建築でもって世界の社会問題を解決する」Architecture For Humanity(AFH)に聞きたかったのはこういうところだった。いわば「社会問題」といっても可視化されているものといないものとがあって、後者の「問題」がどこにどのように存在しているのかをいかに発見していくか、というリサーチの方法論が聞きたかった。


ということでこれを後で聞いてみたら、端的にこんな旨の答えを返してくれた(マリーゴールドさんも聞きたかったらしく、一緒に聞いていた)。マイクロペイメント&コメンタリーのシステムが整備されていること(「キックスタート」とかかな?)を前提に、要求の声がより多いところから優先順位をつけていく、とのこと(だったと思う)。対話の中でもこのあたりのことはもっと詳しく話したかったみたい。脊髄反射的にシビアだなと思うかもしれないけど、こうした合理的判断のシステムは「社会問題の解決」を本気でやっていくためには必要なことなのだろう。この辺りの話は元建築学徒、現紛争屋である伊勢崎賢治氏による「国際貢献のウソ」に詳しい。


国際貢献のウソ (ちくまプリマー新書)

国際貢献のウソ (ちくまプリマー新書)

建築学生のハローワーク」にも彼のインタビュー載っています。どっちも面白い。


日本とは大違いだ...などとくよくよする前に考えてみると、こうした意見集約と集金システムの構築は現在的な情報インフラとの相性が抜群にいい。最近よく聞く「ナントカ2.0」の「2.0性」ってこういうことでもあるんじゃないか、と思う。だとしたら、「建築の社会性」も大事だけど、むしろこういうシステムが構築可能でしかもちゃんと回ってる(らしい)というところに希望を見て、自分たちにあった武器の組み立て方をまず考えてみてもいいんじゃないかと思った。


実際に現場で使われるロー&ハイのテクノロジーもものすごく興味深いし、これがすなわち「解決すべき問題」の発見に通じるわけではないけれど、それとはまた別のレベルで、AFHがこのようなテクノロジーを背景にしたシステムを構築しているという事実は現在的だしより一層注目すべきポイントだと思ったのだった。