宮内悠介「薄ければ薄いほど」(『小説現代』)/オキシタケヒコ「サイレンの呪文」(『SFマガジン』)/『日経サイエンス』

宮内悠介「薄ければ薄いほど」(『小説現代』9月号)

終末医療代替医療を扱った作品
宮内作品ではおなじみの、男性ジャーナリストによる一人称視点
舞台は、北海道にある白樺荘というホスピス
そこでは代表の意向で、写真も含む一切の記録がなされておらず、また外部からの情報もできる限り遮断して生活している。
この文章は、白樺荘の住人が全員亡くなり、白樺荘自体が自治体によって処分された後で書かれている、という体裁になっている。
タイトルになっている「薄ければ薄いほど」というのは、自身も末期癌に冒されている、その白樺荘の代表の考えをあらわしている。自己を薄くしていくことで、死を受け入れる。情報を記録しない、遮断しないのはその手段である。
また、メレディが如き、薬効物質が非常に希釈された水(ただの生理食塩水なのだが)を末期患者には飲ませている。
ちなみに、「この水、メレディなのでは?」と思ったら、後半でメレディについても出てきた。
かのジャーナリストは、ALSとなり白樺荘に入居した元ポルノ女優を取材する。
希望した施設に入居できず、白樺荘にやってきた末期癌の男性や、彼らと同室の、やはり癌の女性にも出会う。
ホスピス施設に入るとは、長期的な自殺なのか
死を受け入れるようにするとはどういうことなのか、その時にそばにいて受け止めるとはどういうことなのか、そうしたことと医療や宗教はどのような関係にあるのか。
そして、代替医療終末医療にまつわることがニュースになったときにつけられていくコメントの「薄っぺらさ」
白樺荘の代表が、安らかな死というのが、医療とも宗教とも違うところ(薄くなること)に見出していったことを語るところとか、個人的にくるが、全体的に見ると彼の思想も相対化されて描かれている

オキシタケヒコ「サイレンの呪文」(『SFマガジン』2014年10月号)

今月のSFマガジンはディック特集
表紙は、SF好きなアイドル、らしい(西田藍)
あと、最初のページのマンガが野村亮馬だったよ!
オキシタケヒコの短編は、武佐音研シリーズ第3弾
第1弾は、エコーの中でもう一度」*1
第2弾は、今年の2月号のSFマガジンに収録されていたようだが、未読
今回は、武佐音研の所長の一人称で、主に彼の高校時代の回想
人間の感覚に働きかけ、行動を操ってしまう曲を巡る話
既に相方のフジとも出会っており、また第1弾にも出てきていたアーティスト、日々木塚響も出てくる。
高校時代の話が主に、とても青春な感じのする話
所長、実はかなりいいとこの家の息子らしいが、小学生だかの時に交通事故で子どもを望めない身体になったため、お金だけ渡されて縁切られたらしい。彼の声が甲高いのもそのせい。高校時代の彼は、現在と違って痩せていて、学校には通っているものの、ほとんど1人で勉強して独自のエキスパートシステムとか組んでる。親しいのは、フジだけ。
ある時、彼の管理している音楽SNSに、謎のファイルが一瞬だけアップされる。そのファイルを再生してみると、喉が渇き、次第に無性に海に行きたくなるという、音楽、あるいは呪文のようなファイルだった。
彼とフジは、その曲を作った人を探しはじめる。
人とは違うゆえに否応なしに孤独になり、世界を呪う気持ちを持ってしまう。その気持ちといかに折り合いをつけていくのか、という青春ストーリーだった。
日々木塚響のデビュー曲って「ベテルギウス」っていうのかー
あと、武佐音研の女の子、2人が高校時代に世話になった店のおじさんの親戚の子だかなんだかってのいいね
第2弾もいずれ読まないとなあ
第4弾が、最後っぽいのかな

日経サイエンス』2014年10月号

こちらはぱらぱらめくっただけで、全然ちゃんと読んでない

国際宇宙基地,日本の引き際は?

ISS、24年以降はどうするのか
文科省の小委員会→宇宙政策委員会って流れで議論しているようだが
費用対効果の問題と、外交上の問題との兼ね合いで、ISSへの参加は継続するけど、これ以上の負担は避けたいし、とかのようだ
でも、そういう外交上の都合だけでなく、日本の宇宙政策の方向性出すべきでないかとこの記事の記者は書きつつも、しかし財務省文科省に対して24年以降のことは小委員会で出すなと言っているらしい。

センサー網が実現するESP

あちこちにセンサーとかカメラとかあるし、これを可視化させる新しいブラウザができたら、みたいな話だったかと

代替現実で時間をワープ

SRシステムの話
元々、人に対して心理学的な実験をする際に、同じように説明したりしても差異が出ちゃうから、それをまるっきり同じようにすることはできないかみたいなことで作ったらしい。
仮想の質を現実に近づけるのではなく、現実の質を仮想へと近づける。
現実に比べれば粗い映像だけれど、最初に「現実ですよ」と提示しながらその映像を見せることで、人間は勝手にその質にチューニングあわせちゃう、みたいな感じの話
あと、iPhoneを箱にいれてヘッドマウントディスプレイみたいにしちゃう奴を作っていて、それで簡易SRみたいなことができるアプリを作っているらしい

銀河を操るダークウェブ

タイトルだけで、中身は全く読んでないんだけど
ダークエネルギーダークマターの次は、ダークウェブ
銀河の構造の話っぽい

プールでおしっこするな

これもタイトルだけで、中身見てないんだけど
塩素と尿が反応して毒になるらしい


小説現代 2014年 09月号 [雑誌]

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