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2015-03-07

[]小森健太朗+遊井かなめ編著『声優論 アニメを彩る女神たち〜島本須美から雨宮天まで〜』

ここ最近、声優にはまりつつあるものの、そんな詳しいわけでもないので、まあ読んでみた

自分もなんか書いてみたくなるよって意味では面白かった。


序論 声の現象学から声優論へ/小森健太朗

声優史概説/夏葉薫

第1章 島本須美日高のり子──八〇年代を象徴する二人の女神、それぞれの三〇年/遊井かなめ

第2章 島津冴子石原夏織──声に呼ばれるキャラクター、声が喚起するストーリー/遊井かなめ

第3章 林原めぐみ──アブジェクシオン装置としての綾波レイ/町口哲生

第4章 宮村優子雨宮天──ジェリコの壁はいかにして崩れるか?/遊井かなめ

第5章 川上とも子──生と死のあわいから天使の声が現れる/小森健太朗

第6章 桑島法子──ポストエヴァ時代精神/夏葉薫

第7章 堀江由衣田村ゆかり──神話の中の二人/夏葉薫

第8章 水樹奈々高山みなみ──歴史に咲いた二輪の花(ツヴアイ・ウイング)/遊井かなめ

第9章 釘宮理恵──釘宮病、発症したら出口なし/町口哲生

第10章 名塚佳織井口裕香──祈ること、求めること/夏葉薫

第11章 沢城みゆき──その声は、何を指し示すのか?/遊井かなめ

第12章 平野綾──ハイパーボリックなキャラクターと戯れて/町口哲生

第13章 広橋涼中原麻衣──〈ソラッカボイス〉と〈オタオタボイス〉/小森健太朗

第14章 喜多村英梨──数奇な運命と二つの傑作/夏葉薫

第15章 花澤香菜──三次的な声の文化におけるミューズ/町口哲生

第16章 井上麻里奈──井上麻里奈と〈空気系〉作品群の相性/小森健太朗

第17章 悠木碧──役を作らずして作るの境地/小森健太朗

第18章 阿澄佳奈──聖と魔が交錯するところ/小森健太朗

第19章 スフィア──声優ユニットの謎/夏葉薫

第20章 艦これ声優論──声の宝物庫(シソーラス)としての『艦これ』/深水黎一郎

あとがき 宮村優子論から声優論へ/遊井かなめ

しょっぱなから、小森健太朗現象学の話をしてトバしている

夏葉薫によるもの、それから2人を比較しているものは、論として読みやすいし面白いと思う。


夏葉の堀江・田村論、名塚・井口論、喜多村論では、『アイドルマスターXENOGLOSSIA』をそれぞれ作品論として取り上げている。

夏葉は、それぞれの声優を特徴付けて、それをキャラクターと結びつけて論じている。

あるがままに凛然とクールな堀江と熱くドラマチックな変化で魅せるの田村による、(後半になって春香と対峙しわかり合えないままの)雪歩と(前半に春香とぶつかりあうが打ち解けていく)伊織、

祈りの名塚、求めの井口による、(真美との再会、テンペスタースとの和解を祈る)亜美と(インベルというロボットをも恋人として求め世界を肯定する)春香。

あるいは、事務所を変転していった喜多村とネーブラへの感情について立場を変転させる真とを重ねあわせたりしている。

といった具合。


遊井による比較論では、宮村と雨宮を比較したものが、わかりやすくてよかった。

〈壁〉をどういう声で作り、どうコントロールするのか(声の高さによる宮村と、声の硬さによる雨宮)

応用できる概念や枠組みを作るという意味でもよかったと思う。


一方、概念を作るという点では、小森が色々やっていたように思う

「ソラッカボイス」とか


帯に、批評×声優とあるけれど、個人的には、声優を批評する上で求めるのは、声をどのように言い表すかの語彙

自分がボカクリとかフミカとかで音楽について書いていた時も、音・音色についての語彙というのが一番欲しかった

まずは、どうだったか記述するところから始まると思うのだけど(現象学ってよく分からないけど、現象学も近いところがあるのではと思う)、曲のこのタイミングでこういう音が鳴っていたとか、このセリフのこの言葉がこういう声で発せられていたとか、そういう記述のための語彙。

音楽であれば楽譜・楽理、声だったら発声法についての語彙とかがあるのだろうけど、個人的にはもっと音色・声色のことを書きたい。自分が惹かれるのはそういうところだし。

このタイミングでこのディストーション・ギターのフィードバックの音がいいんだ、とか、このグリッチノイズがじりじりと後ろで不規則に刻んでいるのが脳裏に残るんだ、とか

このセリフの息を吸ったときに裏返った感じの声がぐっとくるんだ、とか、怒鳴り声をあげたときに濁ったようになるのが癖になるんだ、とか

まあ、そこまでミクロに記述するのってかなりの労力が必要で大変だけど

そもそもその記述のための語彙がなかなか難しい

で、そういう記述のあとに、価値判断なり枠組みなり概念なりが出てくるのかなあとは


小森・遊井は、そういう意味では、わりと声質について記述しようとしているところは結構あったような気がする。

推進的な声、硬い声、上昇的な声、(口から喉にかけての発声の位置が)下ないし奥の方に下がっている声、など


ただ、声質の話だけでなくて、当然のことながら演技・演じ方の話が入ってくるし、さらに演じたキャラクターがどのようなキャラクターだったかという話も入ってくる。というか、おおむね後者の方が多い。

これこれこういうキャラクターであり、だからそのキャラクターをうまく演じた声優の声や演技は、これこれ、みたいな感じになっている。

それはそれで1つの論じ方だけど、声優論というよりキャラクター論になってしまわないか。


夏葉は、そういうミクロな記述をしようという傾向は全然なく、作品単位で論じているところが多いのだけれど、しかし、この中で一番、声優について論じている文章になっていると思った。

「求めの井口」とか、そうやって声優の特徴をずばっと言ってしまっているからだと思う。文字数が限られた中で論じるという点でも、うまく効いている。

声質をミクロに記述する語彙ではないのだけれど、でも、語彙としては一番豊富なやり方だなとも思った。


町口哲生は、林原、釘宮、平野、花澤と有名どころをおさえているのだが、正直あまりよくなかった。

声優について論じるというよりも、その声優が出演している作品を論じるものになっており、その作品論も思想用語・批評用語が乱れ飛ぶばかりで。論の進め方も、大体出演順に並べてるだけで、あんまりまとまってない。


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