モーグルW杯トランブラン大会堀島優勝!!

堀島優勝!!
今シーズン、五輪を前に展開がドラマチックすぎませんか?!
13連勝中のミカエル・キングズベリーを、まさか堀島がストップかけるとは!!
しかも、女子の方でも、ジャスティンが優勝し、五輪金メダル争いの行方が、ますます分からなくなっていく展開に!

前回の振り返り

いつものブラボースキーコラムで、ディアバレー大会の振り返り
北米2連戦で、平昌でメダルを争う顔ぶれが見えてきた ジャパンチーム最悪のシナリオが避けられる(ブラボー!!モーグル)

女子では村田愛里咲が今季初めて決勝に進出。決勝では8位となり、平昌五輪派遣推薦基準をクリアする。ソチ五輪での負傷から4年、長いトンネルを抜けることに成功したのだ。これで、ジャパンチームから女子の五輪代表がゼロという最悪の事態だけは避けられそうだ。

おっと、村田が代表入りの基準満たしてたのか。伊藤に気を取られて、前回チェックしそびれてた。
上位グループについてもまとめられている。

男子は6戦全勝のミカエル・キングスベリー(CAN)が600点と、2位以下に周回差をつけ独走。2位4回のドミトリー・レイヒャルド(KAZ)が360点でこれに追随している。また、200点台のマット・グラハム(AUS)、遠藤、チェ・ジェウ(KOR)が第3グループ的に固まっている様相だ。

優勝2回、2位2回のジャエリン・カーフ(USA)が頭一つ抜き出て420点でトップ。ペリーヌ・ラフォン(FRA)、ブリテニー・コックス(AUS)、アンディ・ノーディ(CAN)、が300点台で第2グループを形勢。さらに、ユリア・ギャリシェバ(KAZ)、ディアバレー2連戦で連日3位となったモーガン・シルド(USA)が200点台で続いている。

レンブラン大会

レンブランって聞いたことないなーと思ったら、やはりW杯開催は初めてらしい
しかし、カナダ・ケベックのスキー場らしいのだけど、カナダモーグルのメッカっぽい
今季初優勝となったジャスティンにとっては、地元だったようだ。

Justine Dufour-Lapointe (CAN) thrilled the crowd in her home province with her first victory of the season, only for Ikuma Horishima to shock that same crowd just minutes later by ending Mikael Kingsbury’s 13 win streak with an incredible performance.
Dufour-Lapointe back on top and Horishima halts Kingsbury in Tremblant - FIS-SKI

堀島は、incredibleなパフォーマンスと評されている。
レンブラン大会を経て、総合成績的には、
女子では、ジェリン・カウフ436点、アンディ・ノーディ385点、ペリーヌ・ラフォン382点
男子では、ミカエル・キングズベリー680点、ドミトリー・レイヒャルド420点、マット・グラハム304点
となっているようだ。


日本の五輪代表については

フリースタイルスキーモーグルで男子の堀島行真、遠藤尚原大智西伸幸、女子の村田愛里咲の平昌冬季五輪代表入りが20日、確実となった。全日本スキー連盟は22日に五輪代表を発表する。
カナダのトランブランで同日実施されたワールドカップ(W杯)で、国際スキー連盟(FIS)の五輪枠ランキングの対象大会が終了。全日本スキー連盟が「世界選手権とW杯で8位以内の成績を1回以上」などと定めた五輪派遣推薦基準を満たした5人が代表入りする。世界選手権でメダル獲得の実績がある30歳の伊藤みきは派遣推薦基準に届かず、4大会連続の代表入りを逃した。(共同)
モーグル堀島、遠藤ら、女子は村田が平昌代表確実(毎日新聞)

女子

1 DUFOUR-LAPOINTE Justine 1994 CAN
2 NAUDE Andi 1996 CAN
3 GALYSHEVA Yulia 1992 KAZ
4 JOHNSON Tess 2000 USA
5 ROBICHAUD Audrey 1988 CAN
6 DUFOUR-LAPOINTE Chloe 1991 CAN
https://data.fis-ski.com/dynamic/results.html?sector=FS&raceid=10435

地元カナダがスーパーファイナルをほぼほぼ独占
そんな中、きっちり表彰台に乗っているガリシェヴァ、さすがです
ジャスティンは、確実かつ速さのある滑りで優勝したようだ
おっと思ったのは、ノーディでバックフルを飛んでいる。女子でバックフルというのはあまり見たことがない。
リザルトをざっと見てみたところ、今大会で女子で他にバックフルを飛んでいるのは、ノーディと村田だけっぽい。

“I want to cry but I can’t stop smiling,” an ecstatic Dufour-Lapointe said following the awards
Dufour-Lapointe back on top and Horishima halts Kingsbury in Tremblant - FIS-SKI

「I can’t stop smiling」ってすごいな。映像見ても、ジャスティンが表彰台で小躍りしているのが分かる。
五輪にも当然ながら意欲を燃やしている。

女子は2人が決勝1回目に進み、伊藤さつき(豊田鉄工)が11位、村田愛里咲(行学学園教)は16位だった。(中略)
住吉輝紗良(北海道・倶知安高)伊藤みき北野建設)星野純子(リステル)冨高日向子(白馬ク)は予選を突破できなかった。
スキーW杯モーグル、堀島が初優勝 昨年の世界選手権2冠(日本経済新聞)

というわけで、すでに上述した通り、村田が代表入りできた一方で、伊藤みきが代表入りを逃した。

男子

1 HORISHIMA Ikuma 1997 JPN
2 KINGSBURY Mikael 1992 CAN
3 REIKHERD Dmitriy 1989 KAZ
4 CHOI Jae Woo 1994 KOR
5 BENNA Anthony 1987 FRA
6 GAGNON Marc-Antoine 1991 CAN

堀島ぁぁ!
攻め攻めの滑りではないか!
速いし、キレもあるし!

Horishima’s combination of tightly controlled speed and perfectly executed, moon-scraping jumps earned him the highest score achieved by any athlete in any moguls event this season - 93.88

やっべーまじかよ、堀島、今季の最高得点か
今調べてみたら、今季はこれまでカルガリー大会のミックの89.55が最高だったらしいので……ってええ?! 
さて、この映像では、順位の順で編集されているが、実際には堀島はファイナルを2位突破しているので、スーパーファイナルの走順は、堀島→ミックだった
ミックが明らかに焦らされたのが分かる
ミドルセクションで、明らかにミックらしからぬミスをしてしまっている。

Dropping last, Kingsbury was able to put down the best time of the day - no small feat considering that Horishima is perhaps the fastest man in moguls. However, Kingsbury’s speed came at the expense of his control, and some breaks in form during the middle section of the course(...)
Dufour-Lapointe back on top and Horishima halts Kingsbury in Tremblant - FIS-SKI

スピードは、堀島が19.65秒、ミックが19.50秒とミックの方が速かったのだけれど、ターン点では、堀島が55.50点、ミックが54.80点、エア点でも堀島がミックを上回っていた。
再び、ブラボースキーコラムを見てみると

キングスベリーとレイヒャルドの差はエアで、2人がフルアタックしてノーミスでゴールしても、その部分で点差が開いてしまう。大きなミスが無い限り、平昌での絶対王者の勝利は固い!?
北米2連戦で、平昌でメダルを争う顔ぶれが見えてきた ジャパンチーム最悪のシナリオが避けられる(ブラボー!!モーグル)

確かに、ミックが、バックダブルフルと1080を飛んでいるのに対して、レイヒャルドは1080と720なのである。
一方の堀島は、ミックと同じで、バックダブルフルと1080を飛んでいる。
今大会でいうと、この組み合わせを使っているのは、ミック、堀島、そして16位のカナダの選手の3人だけだ。
エアについては、こんな話も

遠藤尚の話 (エアで大技の)ダブルフルツイストにトライできたことは大きな収穫。エアの点も少し上がってきた。課題がちゃんと見えて、五輪前の試合を終えたという感じ。気を抜かずにここからやっていくだけ。
W杯モーグルで堀島行真が初優勝 遠藤尚は7位(日刊スポーツ)

リザルトを早速確認してみたら、確かに遠藤、バックダブルフルを使っていた模様。前大会までは、バックフルと720だった。

堀島は予選を3位で通過。16人による決勝1回目は2位で突破し、上位6人の2回目は開幕6連勝のミカエル・キングズベリー(カナダ)を抑えた。キングズベリーは93.27点で2位。決勝1回目で敗れた遠藤尚(忍建設)は7位、四方元幾(愛知工大)は12位、原大智(日大)は13位。西伸幸(マンマーノフーズ)と藤木豪心(立命大)は予選落ちした。
スキーW杯モーグル、堀島が初優勝 昨年の世界選手権2冠(日本経済新聞)

堀島コメント

“On this course I felt like I needed to ski fast and go big, and that’s what I was able to do today,” said Horishima through his coach as interpreter, “I wanted to try and match the skiing of Mikael Kingsbury today and I was able to do that. Now before the Olympics I am going to train and focus on winning the gold medal.”
Dufour-Lapointe back on top and Horishima halts Kingsbury in Tremblant - FIS-SKI

◇堀島行真の話 狙っていた部分はあった。ほっとした気持ちが大きい。自分に合ったコースだったので、その中で(良さを)出していけた。(ピョンチャン冬季五輪では)しっかりと自分ができる滑りをつくっていきたい。
W杯モーグルで堀島行真が初優勝 遠藤尚は7位(日刊スポーツ)

−勝因は。
「ここのコースはエアの高さがあり、結構高く飛んでもそのままコブに入れる。自分に合っていた」
−決勝2回目に臨む時の心境は。
モーグルは(予選、決勝と合わせて)3本そろえないといけない。しっかりと気持ちを落ち着かせて最後決めるという気持ちでいった」
−世界選手権優勝後は低迷していた。
「周りの期待に応えておきたいという思いもあった。ここで1番になっておけば周りも安心して見てくれるかなという気持ちで、しっかりここは(優勝を)取りたいなと思っていた」
−平昌五輪に向けて。
「準備だったり、試合の感じだったり、気持ちの持っていき方をイメージして、残りの時間を大切にして金メダル目指して頑張る」
【W杯初勝利の一問一答】堀島「ほっとした気持ちが大きい」/モーグル(サンスポ)

今大会は中盤のコブ斜面が短く、攻撃的な堀島の滑りとも好相性。「このコースではスピードとエアの大きさが必要だと思っていた」と第1エアのダブルフルツイスト(伸身後方1回宙返り2回ひねり)で段違いの高さを見せると、その後のターンをミスなくまとめ、第2エアのコーク1080(体を水平に傾けての3回転)でも高得点を稼いだ。その滑りが直後のミカエル・キングズベリー(25=カナダ)にもプレッシャーを与えた。
(中略)
五輪前最後のW杯となる今大会で、絶対王者にストップをかけて初優勝。「狙っていた部分はあった。ホッとした気持ちが大きい」と語り、「キングズベリーと競り合うこともできた。しっかりと練習して金メダルに向けて集中していきたい」と意気込んだ。
モーグル堀島絶対王者止めた!今季最高得点でW杯初優勝(スポニチ)

スロープスタイル・ハーフパイプ・スキークロスW杯

スロープスタイルW杯スノーマス大会

最後の斜めにカットされたキッカーが面白い
スロープスタイルは、北欧とかイギリスとかが強かったりするんだよなー

女子

1 KILLI Johanne NOR
2 VOISIN Maggie USA
3 ATKIN Isabel GBR

男子

1 RAGETTLI Andri SUI
2 DAHL Ferdinand NOR
3 BRAATEN Oystein NOR

8位に日本人選手がいる。山本泰成。

【スノーマス(米コロラド州)時事】フリースタイルスキーのワールドカップ(W杯)は13日、米コロラド州スノーマスで男女スロープスタイル第4戦が行われ、男子は16歳の山本泰成(尾瀬ク)が84.80点で8位に入り、全日本スキー連盟の定める平昌五輪の代表派遣推薦基準を満たした。アンドリ・ラゲットリ(スイス)が95.00点で優勝した。
 日本勢が予選で敗退した女子は、ヨハンネ・キルリ(ノルウェー)が91.60点で制した。 (2018/01/14-11:24)
山本が8位=W杯フリースタイル

明日には、マンモスマウンテン大会の結果も出てますかねー

ハーフパイプW杯マンモスマウンテン大会

女子

1 SIGOURNEY Brita USA
2 BOWMAN Maddie USA
3 LOGAN Devin USA

1位のSIGOURNEY、女子としてはかなり高い

男子

1 SMAINE Kyle USA
2 FERREIRA Alex USA
3 YATER-WALLACE Torin

男子マジやばい
3位のYATER-WALLACEは最後の2つでぶん回してきたなーって感じ
2位のFERREIRAは、2つ目のゆっくりしたクロステールグラブがめちゃかっこいい。あと、4つ目のコークスクリュー? 何?
1位のSMAINEは、最初から最後までずっと高さでててすごいんだけど、3つ目のオクトパスグラブっぽいの何? 足組み替えてた?

スキークロスW杯Nakiska大会

難コースだったのか、女子も男子もクラッシュしてる

女子

1 NAESLUND Sandra SWE
2 BERGER SABBATEL Marielle FRA
3 BARON Alizee FRA
4 SERWA Kelsey CAN

クラッシュがあって1位独走状態
13位に日本の梅原
ダヴィッドまだ現役なのか、16位にいる

男子

1 ECKERT Paul GER
2 WAHRSTOETTER Christoph AUT
3 BISCHOFBERGER Marc SUI
4 DRURY Kevin CAN

男子も派手なクラッシュがあった
巻き込み事故があると、クロスゲームっぽいなって感じがするけど、レース序盤であったので、展開的にはちょっと面白みに欠けるところがあった。

スロープスタイルW杯マンモスマウンテン大会(1/22追記)

男子も女子もやっぱ優勝する人はちげーなー
今回は、ジブセクション終わって、最初のキッカーになるクォーターパイプの使い方が、見てて楽しかったところかも

女子

1 SJAASTAD CHRISTIANSEN Tiril NOR 1995
2 BURMANSSON Jennie-Lee SWE 2002
3 CLAIRE Caroline USA 2000

なかなか同じ人が表彰台載らないし、北欧系多いから、名前が覚えられない
4位のダールストームくらいか名前知ってるの
あ、あと、9位にハーフパイプにも出てるローガンがいる
14位に日系カナダ人のツボタ
日本からも1人出場してるんだな、桐山菜々穂

男子

1 HARLE Teal CAN 1996
2 RAGETTLI Andri SUI 1998
3 McEACHRAN Evan CAN 1997

1位のHARLE、ジブがすごかったし、クォーターパイプがかっけー
2位はスノーマスで優勝してた人か
知っている名前というと、7、8位のクリステンセンとかGOEPPERとか
男子の日本人は、山本泰成か

橋本陽介『物語論 基礎と応用』

タイトル通り、物語論入門
理論編と分析編とに分かれており、後半の分析篇では実際の作品が数多く紹介されている。


理論編では、プロップ、バルトからの流れをおさえつつ、ジュネットの『物語のディスクール』を中心に説明されている。
この本のポイントとしては、日本語ではどうかという説明があるところだろう。
物語論の話だと、自由間接話法がどうたらというのをよく聞くのだが、個人的にいまいち分かっていなかったところだった。
まずそれがどういうものなのか改めて分かった点と、日本語にはないので、翻訳ではうまく表されなかったりして、どういうニュアンスが落ちてしまうのかということが書かれていた点が、よかった。
物語論の基本的な考え方と、それが英語と日本語とでそれぞれどのように実現しているのか、という点で比較できる。
それから、物語論に対する批判を紹介し、物語論がどういうものであって、どういうものではないのか、という、メタ的な説明にもページが割かれている。


後半は、使われる具体例が多様
シン・ゴジラ』『シュタインズ・ゲート』『この世界の片隅に』などといったタイトルが目立つが、森鴎外村上春樹などの日本文学、ガルシア=マルケスなどの海外文学、タルコフスキーなどの海外映画も登場するほか、やはり筆者の専門が中国文学ということもあって、中国文学からの例も多い。
よい作品案内になっていて、色々読みたくなって困るw

はじめに――「物語論」とは何を論じるのか
第1部 理論編
第一章 「物語」の形態学
第二章 物語に流れる「時間」
第三章 視点と語り手 
第四章 日本語の言語習慣
第五章 ノンフィクションは「物語」か
第六章 物語論への批判
第2部 分析編
第七章 「おもしろい展開」の法則
第八章 叙述のスピードと文体
第九章 登場人物の内と外
第十章 さまざまな語りの構造
第十一章 「物語」のこれから
おわりに――人間だけが物語る

物語論 基礎と応用 (講談社選書メチエ)

物語論 基礎と応用 (講談社選書メチエ)

第一章 「物語」の形態学

プロップ、ブレモン、バルト
物語論の系譜や、「物語」という用語についての説明もなされている

第二章 物語に流れる「時間」

ジュネットの『物語のディスクール』の解説だが、後半からは、筆者が「物語現在的語り」というものに着目して、森鴎外芥川龍之介を例に、回想という枠組みを取りながらも、現在の語りとなっていることを分析している
日本語の小説において、現在のことでありながら、「た」が使われる経緯を、二葉亭四迷ツルゲーネフの翻訳などから見ていく。
なお、日本語の小説において、「た」を使う形と使わない形が織り交ぜられるが、それにはちゃんと基準があるそうで、そのことについては、『物語における時間と話法の比較詩学―日本語と中国語からのナラトロジー (叢書記号学的実践)』を読め、とのことだった

第三章 視点と語り手

引き続きジュネットの『物語のディスクール』より、「叙法」と「態」
叙法:ミメーシスとディエゲーシス、焦点化
態(vois=voice=声):語り手について


ところで、「審級」ってinstance(「決定する権限をもつ機関」という意味)の訳語なのかー
物語世界と語り手のいる世界が異なることについては、「語りの水準」という言葉が使われている。
高行健『霊山』から、物語(第一次物語言説)とメタ物語(第二次物語言説)という物語の水準同士の関係や、混ざり合いといった例が紹介されている。
それから、自由間接話法の話

第四章 日本語の言語習慣

自由間接話法に相当するものが日本語にはない、という話から、ヨーロッパ言語と日本語とでの、語り手の違いが論じられる。
ジョイススタンダールの日本語訳、あるいは逆に、安部公房村上春樹の英語訳を参照しながら、それぞれの言語の語り方の違いによって、どのような「誤訳」が生じてしまったかを見る。
日本語は、登場人物とより一体化した語り方になる、という特徴がある。

第五章 ノンフィクションは「物語」か

物語論での「物語」の定義は、概ね「時間的な展開がある出来事を言葉で語ったもの」
(中略)次のような特徴があることもわかった。
1 物語現在が現在となる。
2 自由に登場人物の内面に入ることができる。

ノンフィクション、ルポルタージュ歴史小説もこういう特徴をもった物語文が出てくるよね、という話
ところで、清塚『フィクションの哲学』でも、フィクションについて似たような特徴を見て取っていなかったっか。

第六章 物語論への批判

第七章 「おもしろい展開」の法則

シン・ゴジラ』や『エヴァンゲリオン』などから、ノーベル文学賞受賞作家トニ・モリスンの『ビラウド』、特殊な時間展開の例としてメキシコの作家フアン・ルルフォの短編小説などを紹介している。

第八章 叙述のスピードと文体

前半では、省略した展開によって、ユーモラスさを生み出す例として、カフカや、カフカに影響をうけたという余華の『血を売る男』などが論じられている。
後半では、『百年の孤独』ガルシア=マルケスの文体が分析されている。
新聞記事的な文体で、出来事の叙述を中心にした、客観的で速度の速い語りをする。
一方で、修飾語を用いた描写をすることで、膨大な情報量を組み込み、密度の濃い文となっている。
魔術的リアリズムとは、「(私たちの文明から見て)ありえないことをごく当然のこととして、客観的に書く」という文体である。
ところが、中国でガルシア=マルケスが輸入された際、魔術的リアリズムの定義が誤って受容された。つまり「現実を幻想的にする」ものだととらえられてしまった。
その誤解に影響を受けたのが、莫言だという。
莫言はむしろ、現実にありえることを、誇張して描写していくことで魔術的な雰囲気にしていく。出来事の叙述よりも感覚的な描写が多く、語りの速度も速くない。

第九章 登場人物の内と外

シュタインズ・ゲート』『逃げるは恥だが役に立つ』『めぞん一刻』をあげながら、男性視点、女性視点の物語を、男性(女性)作者−男性(女性)読者の男性視点とか、女性作者の男性視点とかいった形で分類していく


また、内面を直接書かないことで、逆に引き立てるような作品
クリストフ『悪童日記』の客観的な書き方
マンスフィールド園遊会」の自由間接話法を用いた感情表現(日本語には訳出できない、語りの審級の曖昧さによる、微妙な感情表現というものが説明されている)
あるいは、『この世界の片隅に』における間接的な感情表現

第十章 さまざまな語りの構造

語り手の個性や価値観が、語りの中にあらわれているものとして
太宰治ヴィヨンの妻』、フォークナー『響きと怒り』、ウィンターソン『オレンジだけが果物じゃない』、ナイポール『ミゲル・ストリート』


語りの構造そのものが特殊なものとして、
ボルヘス「八岐の園」、アレナス『めくるめく世界』

第十一章 「物語」のこれから

Twitterのネタツイと、ロシアのアネクドートを並べて紹介している。