環境のことを考えながら「ラーメンスープ」をとる その3

自給屋のみそラーメン

究極のエコロジカル皿洗いの発見

春夏秋冬四季のある日本で、温かいラーメンはやはり冬場に恋しくなる食べ物でしょう。寒い季節に一杯の温かいラーメン。ラーメンは戦後日本に普及した食べ物ですが、それはカレーライスと共に、今や日本人の国民食といえるくらい好まれております。インド・中国由来のこれらの食べ物は、仏教並みに日本に広まったものといえるでしょう。また、そこにある本来の性質を変えてしまった上で、日本人になじむようにアレンジして同化したという意味においては、仏教とラーメン・カレーライスは、日本人にとって特別なものでもあるのです。

さて、ラーメンを食べるお客さんにとっては、寒い時期にありがたいものでありますが、器を洗う料理屋としては、寒い時期ほど油が固まって洗いづらくなります。油は低温で固まる性質がありますが、哺乳動物の飽和脂肪酸はそれが顕著になります。湯沸かし器のお湯を使うにしても、食べ終わった器自体が冷えているので、飽和脂肪酸(油)がスポンジにこびりつき手にまとわりついて、その感覚自体不快に思うわけです。

湯沸かし器の温度を上げるにしても、やけどするほどの温度にはできません。そういう状況の中で、ある時、まだ熱い状態のラーメンの麺をゆでた鍋に、お客さんが食べ終わった器を入れてみました。熱いお湯の中に器を入れれば、油も浮いて洗いやすくなるだろうと思ったからです。

熱いお湯の中に油の付いた器を入れれば、ある程度油は器から離れて浮いてきますが、お湯の表面に油が浮いて、それが手やスポンジにまとわりついてきます。油がゆるくなっている分、まとわりつく度合いは大きくなります。ところが、麺のゆで汁につけた器は、そうはならなかったのです。さらに、まだ器に付いている油分も、ちょっとこするだけでびっくりするくらいよく落ちるのでした。

ただのお湯とゆで汁の違いは何か。それはゆで汁には小麦粉が溶け出しているということです。この小麦粉が油を吸着して器の油汚れを取り、さらに手やスポンジにもまとわりつかない結果になっていたのです。ただ捨てるだけでしかなかった麺のゆで汁が、宝に変わった瞬間でした。

ゆで汁の中に入っている小麦粉の量は、そもそもゆでている麺から溶け出したものですからわずかな量にしか過ぎません。もちろん大きな鍋で一杯分の麺しかゆでていなければ、その効果も弱いでしょうが、数人前のゆで汁で十分ですし、足りなければ小麦粉をほんの少し加えればいいだけのことです。

このゆで汁食器洗い法で、洗剤を使うことすら必要なくなります。もちろん大量の油汚れを、少しのゆで汁で洗うのには限界がありますが、落ちが悪くなればゆで汁(もしくは小麦粉入りのお湯)を交換すればいいことで、ゆで汁で洗った後は、湯沸かし器のお湯できれいに洗い流せば、器はピカピカです。

さらにさらに、自給屋ならではの環境対策としては、この器を洗った後の汚れたゆで汁の処理にあります。洗い物が終わったゆで汁には、器の油が吸着した小麦粉がたっぷり含まれています。科学的に考えればカロリーが高いことになります。環境的に表現すれば、BOD値*1が高いということになります。自給屋では、これをバイオガスに投入して一件落着。「一滴も」とは申しませんが、器の油とゆで汁の小麦粉は、店から一歩も外に出ることなく、バイオガスの中で分解され、ガスと肥料になります。

ここで「究極のエコロジカル皿洗い」についてまとめてみたいと思います。

  1. まず、炒め物など油が器の底にたまっているものについては、米ぬかを混ぜて吸着させて大方の汚れを取り除く
  2. 次に、米ぬかではとりきれない、器にまとわりついている油は、麺のゆで汁や小麦粉を入れたお湯の中で洗い落とす
  3. その後水やお湯で器を洗い流して洗浄完了
  4. 油を吸着させた米ぬかやゆで汁は、バイオガスに投入して分解し、肥料とする

環境に優しい洗剤は、洗浄能力が低いので使用量は結構多くなってしまいます。それすらも使わないゆで汁の皿洗いこそ、環境派の方々が実践すべきことではないでしょうか。バイオガスがなくても、庭のある方なら、使用後のゆで汁はそこにまけばいいことです。だいたい環境派洗剤も、その原料のヤシ油など、おそらくほとんどを海外に依存しているはずですから。

参考:キッチンガイドhttp://www.cocotto.net/online/topics/topics6.html

*1:BOD:生物化学的酸素要求量(BOD, Biochemical Oxygen Demand)。水中の有機物が微生物の働きによって分解されるのに要した酸素の量で示した水質の指標。単位は mg/l。