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医者として・患者として

2011-02-26

ベーチェット病治療薬と保険適応

| 02:16

寛解にもちこむことが難しいベーチェットの患者さんを診療しています。眼に病変はないものの、ステロイドの減量がままなりません。レミケードも選択に挙がりますが、保険適応にはならず、健康保険ではカットされてしまう可能性もあります。そう思ってあらためて添付文書上のベーチェット病に関連した効能を調べてみると以下のとおりでした。(以下のカッコ内は追記しました。代表的な内服・注射薬を選びましたので、軟膏や点眼などは、別に考える必要があります。添付文書に効能の記載がないからといって、効果が認められていないことや効能以外での使用禁止を意味しているわけではありませんので、誤解のないようにお願いします。)


レミケード(インフリキシマブ):ベーチェット病による難治性網膜・ぶどう膜炎(他の薬物療法(シクロスポリン)等の適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に本剤の投与を行う。

イムラン・アザニン(アザチオプリン):潰瘍性大腸炎クローン病(ベーチェット腸病変の記載なし)

ネオーラル(シクロスポリン):ベーチェット病(眼病変のある場合)

プレドニゾロンベーチェット病皮膚病変(眼症状のない場合)、全身性血管炎、難治性口内炎・舌炎

ペンタサ:潰瘍性大腸炎クローン病のみ(ベーチェット腸病変の記載なし)

サラゾピリン:潰瘍性大腸炎・限局性腸炎、非特異性大腸炎(ベーチェット腸病変の記載なし)

コルヒチン:ベーチェット病への効能記載なし


こうしてみると、難病センターのベーチェット病の治療指針に記載のある治療薬であっても、ベーチェット病の治療薬として保険上は認可されていないものが多いことがわかります。ベーチェット病眼病変ではネオーラル、レミケードという流れがあるものの、それ以外の病型についてはまったく取り上げられていないに等しい状況です。

ベーチェット病の腸病変には、ペンタサやサラゾピリンなど、いわゆる5-ASA製剤といわれる薬が良く処方されますし、海外でも治療として一般的です。しかし、保険上は厳密には適応になっていません。

コルヒチンなどは古い薬で、唯一の効能である痛風には、その後現れた薬が広く用いられていて、恐らく痛風に対してコルヒチンが使われることはほとんどないものと思います。一方で、ベーチェット病地中海熱、あるいは結節性紅斑など、患者数は少ないが、他に明確な治療薬がない保険適応外の使用が比率的には少なくないように感じています。

プレドニゾロンの「全身性血管炎」は様々な疾患を含む病名で、ベーチェット病もその一部と解釈できる可能性もあります。また、プレドニゾロンとサラゾピリンの「限局性腸炎」というのは、昔に使われた病名で、クローン病に近い病態を指すと個人的には理解しています。定義もやや曖昧で、ベーチェットの腸病変については、医師は敢えてこうした病名を追加したり、病状について追加説明をして、保険側も弾力的に解釈して運用されているのが現状でしょう。

保険承認、安全性の確保などの仕組みが、現実に追いついていないように思えます。海外でのデータをもとに、比較的少ないデータで承認申請ができるなど、変わりつつはあるのですが、取り扱う範囲の広範さや重要性に比べて、システムは貧弱だと言わざるをえません。

内外のエビデンスを利用して、炎症性腸疾患やリウマチなどと同様に保険診療レベルでもベーチェット病としての診療体系を明示することは意味のあることだと考えます。現実には、保険診療が受けられるかで、治療法が変わることもないとはいえません。

このためには何が必要かと考えると、患者数も少なく、薬価も安い薬を承認申請する企業はほとんどないのが実情ですから、国、特定疾患研究班、関連学会、患者団体が協力して申請し、治療の標準化アルゴリズムの作成を進めることが必要です。全国どこでも、基準に沿った、その時代で最も良いと考えられる治療を受けられるようになって欲しいと思います。

分子レベルでの病態解明や分子標的薬治療開発の研究とともに、標準的な治療が明示されることで、今病気を患っている患者の不安や迷いは軽減されます。負担の大きなお仕事とは思いますが、このためには組織的な活動が求められますので、様々な立場からの参加と協力が不可欠です。


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ganntarouganntarou 2011/02/28 15:56 はじめまして。私ganntarouと申します。
中年男性で2年前ベーチェット病と診断されました。
ひとつ、個人的な質問で恐縮なのですが、現在耳鳴りが酷い状態です。かかりつけの病院でCT、MRIを撮ったところ異常はなく、ベーチェット病によるものと診断され、ステロイドを増量して処方されました。
しかし、ベーチェット病の病状に耳鳴りはみつからなかったのですが、こういうこともあるのでしょうか。
お答えいただければありがたいです。

sakurasasukesakurasasuke 2011/02/28 21:53 ganntarouさん

はじめまして。

ベーチェットでの聴覚症状はまれではありません。頻度は明らかではありませんが、耳鳴りはみられます。自覚されない程度(検査でようやくわかる程度)の難聴は高頻度に認められるという報告もありますし、頭痛やめまいなどを併せて訴えられる患者さんもおられます。

一方で、何かしていれば忘れてしまう程度の耳鳴りを訴える方は、ベーチェットに限らず少なくはありません。特に中年以降にはそういう方が多いように思います。耳鳴りの原因となる病変としては、脳や内耳、動脈などの血管など様々な可能性がありますが、MRIは特に有力な情報を与えてくれます。

私はベーチェットの専門医ではなく、実際のベーチェットの診療経験は自分の専門領域に偏っていますし、多くはありません。ですから、患者としての自分の経験と医者として関わった患者さん、そして研究報告の中からしかお答えできません。ベーチェットを専門に診られている先生方とは、異なったお答えになることもありえますので、最終的には、主治医の先生およびセカンドオピニオンを利用するなどして専門医と良く相談されることをお勧めします。

ganntarouganntarou 2011/03/01 10:26 sakurasakuさんへ
早速のお返事ありがとうございました。
懸案のわだかまりがなくなりほっとしました。
どうもありがとうございました。

sakurasasukesakurasasuke 2011/03/01 20:56 ganntarouさん

早く良くなられるといいですね。
お大事にしてください。

2011-02-20

自分の主であるために

| 10:36

様々なお薬のアレルギーのある患者さんを診療しています。

多数のアレルギー歴のある患者さんに新しく治療することには、医師も患者さんも消極的になってしまいます。頻度の高い皮疹や1万人に一人の頻度であっても、ショックで命に関わることこともあることまで説明をするのですが、当然、患者さんはとてもご不安になられます。冷たいようですが、ここをオブラートに包んで説明することはできません。初めての患者さんやご家族からみたら、何と機械的で、他人事のように対応する医師なのだろうと思われるかもしれません。この患者さんの場合、少なくとも10回以上も病状やアレルギーについて説明して、いくつかの選択肢を示したうえで、最終的にできるだけリスクのある治療は避けて、どうしても避けれられない状況になったら、その時にはあらためて相談することになりました。

そして、避けられない日が来て、どうするか話し合いました。我々の印象としては、これまでのアレルギーの疑われるエピソードのすべてが因果関係が明確ではないことから、特に疑いの濃厚な薬だけ控えて、監視の下で行えれば治療は可能なようにも思えましたが、最重症のアナフィラキシー・ショックの可能性も否定できないこともあらためてお伝えしないわけにはいきません。その他、病気に由来する差し迫っているリスク、放置した場合のリスクなど、ご家族を含めて説明をし、さらに相談していただく時間をとった上で最終的に決断していただきました。

私自身、副作用の頻度や重症度なども知りやすい環境にありますし、それを理解する知識ももっています。それでも、自分の治療に際して、重篤な副作用は出るかでないかの二つに一つのように感じられたこともありましたので、患者さんにすればご不安になるのも無理からぬことだったと思います。

チーム全員で治療後の急性期を観察し、結果的には、これまで副作用があったといわれる薬でも副作用はなく、初期の治療目的を達することができました。治療は現在も続いていますが、薬に対する不安が大きかったようで、これらの経過を通じて治療を進めるうえでの大きな障壁がなくなりました。もっと早く治療に取り組めていればという思いはありますが、家族でもない私に、これ以外にどのような関わり方ができたのだろうかとも考えます。たとえ家族であっても、根本的には本人にしか決められないことのように思います。

新しい治療を受けるにしろ、受けないにしろ、自分と向き合い、情報を集め、できるだけ客観的に状況を理解することが、真に自分の主となるうえで大切なように思います。

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えいじえいじ 2011/02/21 12:44 先生こんにちは、先日色々聞きたい事があったのですが、取り急ぎでした。
本題ですが、彼女が3年前にベーチエット病と診断されました。
実は、先生のブログは一年くらい前に知ってたのですが、薬や病院が嫌いな私は、敢えて遠ざけていました(^_^;)。
えと、プレドニンとムコスタを約2年前から、約一ヶ月前から、コルヒチンも服用する事になって、2週間前辺りから、左側に坐骨神経痛と同じ症状が出てきました。ちなみに、彼女は6年前に腰椎椎間板ヘルニアと診断されたのですが、たまたま、コルヒチンを飲み始める2週間前くらいに数年振りに腰痛、、ヘルニア?痛を訴えて、整体に行ったんです。
で、整体で腰痛はなくなったのですが、1週間くらいまえ、突然、朝の通勤の電車内で、左足に麻痺と痛みがおきたわけです。
ヘルニアなのか、コルヒチンの副作用なのかが判断出来なく、病院で検査してもらいにいった次第です。が、無駄なレントゲン取って、ちょっと椎間板の間がツマってますね程度で原因が分からず終い、年配の医師は、副作用ではないと、でも、右耳下のリンパ節も腫れましたし、正直その医師の対応にかなり不信感を抱いてます。
副作用で左側のみ(臀部から下肢のみに痺れや麻痺)は違うとのことですが、そうなんでしょうか?。

sakurasasukesakurasasuke 2011/02/21 20:52 えいじさん

こんにちは。
彼女のことご心配ですね。

コルヒチンの副作用を気にされているようですが、正直に申し上げてお話しだけでから判断は難しいです。
一般的には、過去にヘルニアの既往があって、ある時を境に急激に前回同様の症状がでたのであれば、薬の副作用よりは、ヘルニアなどの要素が強いようには思えます。
ただ、実際に診察しているわけではありませんので、不確かなことを申し上げるのは差し控えたいと思います。

MRIなどの検査をすれば、ヘルニアについての情報は増えるのでしょうが、症状にもよりますが、直ぐに検査というより、経過を見ながら追加していく方が、不必要な検査をしないで済むこともあります。

医師は、一番可能性の高い病気の治療をしつつ、症状の重さや経過をみながら次の検査や治療を考えてゆきます。やはり主治医の先生とよく相談していただくことが大切と思いました。

早く良くなられることを祈っています。

2011-02-18

ベーチェット病におけるインフリキシマブとシクロスポリンの初期6か月間の治療成績の比較

| 00:07

Br J Ophthalmol 2010;94:284-288 doi:10.1136/bjo.2009.158840

要旨

目的:ベーチェット病の難治性ブドウ膜、網膜炎におけるインフリキシマブとシクロスポリンの有効性と安全性を比較すること。

方法:シクロスポリンとインフリキシマブで治療されたベーチェット病患者の診療記録を振り返って調査し、各薬剤(インフリキシマブ17例、シクロスポリン20例)の使用開始前後6か月のブドウ膜炎の発作回数、視力、有害事象に関する情報を収集した。

結果:治療開始前後6か月のブドウ膜炎の急性発作の頻度は、シクロスポリンでは、前6か月に 3.3±2.4回、後6か月では 1.2±1.2回であり、インフリキシマブでは、それぞれ3.1±2.7回と0.4±1.0回であった(p<0.005)。インフリキシマブ投与後の発作の回数は有意にシクロスポリンより少なかった(p<0.05)。

治療期間中の6か月では、視力の回復において両薬に有意な違いはなかった。シクロスポリン投与後、神経症状と腎毒性の出現が各1例に、一方、インフリキシマブ投与後には、アレルギー反応と白血球減少が各1例に認められた。

結論:初期6か月の治療中に、インフリキシマブが急性のブドウ膜炎の発作を減らすのにより有効であることが示された。

注:日本のある大学病院からの報告で、急性眼発作の回数を減らす効果はインフリキシマブでより高かったとする報告です。限られた症例数ですが、インフリキシマブの切れの良さを示した結果となっています。

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えいじえいじ 2011/02/20 08:02 はじめまして、都内在住のえいじと申します。

sakurasasukesakurasasuke 2011/02/20 18:29 えいじさん

こんにちは。
お寄りいただきありがとうございました。