瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

柳田國男『遠野物語』の文庫本(20)

 改版四十六版(角川文庫1295)と新版初版(角川文庫13359)とを比較しつつ、その違いを記述してみたい。
 1頁(頁付なし)は扉で、11.5×7.6cmの単郭の上部に4.5×4.9cm(内寸)の子持ち枠がある。新版はやや大きいようだがほぼ同じ。子持ち枠内に横書きで、上部に「遠野物語――付・遠野物語拾遺――柳田国男」とあり、下部に鳳だか凰だかのマークと「角川文庫 1295」とある。新版は「新版遠野物語付・遠野物語拾遺柳田国男」、下部に鳳だか凰だかのマークと「角川文庫 13359」とある。マークは違っている。
 2頁(頁付なし)は左下に、縦書きで末尾に(編集部)とある編集に関する注記がある。異同についてのみ記しておく。「新字・新かなづかい」→「新字体」「漢字の一部」→「一部の漢字」「改めた。」→「改め、初版序文・遠野物語以外は新字・新かなづかいに改めた。」書き方が細かくなっただけで、本文の処理方針が変わった訳ではない。
 頁付は3頁の「目次」から始まる。「 初版序文    五/ 再版覚え書き   九//遠野物語    一三」までは一致。1行空けて「遠野物語拾遺   編輯・鈴木棠三 七一」ここの頁が新版では「七五」である。さらに1行空けて「 初版解説    折 口 信 夫 一九五/ 解 説     大 藤 時 彦 二〇〇」とあるが、新版では「 解説/  初版     折 口 信 夫 二一三/  改版     大 藤 時 彦 二一八/  新版     鶴 見 太 郎 二三九」となっている。さらに「 年 譜」二一八→二四四、「 索 引」二三一→二五九がある。
 すなわち、鶴見太郎の解説「動機の継承」(239〜243頁)が新たに加わっているのだが、それ以上に改版では1頁18行・1行42字であったのが新版は1頁17行・1行40字に組まれたことで、239頁だったのが268頁に増えたのである。2段組の年譜(作成 鎌田久子)、4段組の索引も文字が大きくなっており、それぞれ2頁と1頁増えている。
 ぱらぱらとめくってみて気付くのは、何も印刷されていない余白頁が、改版では4・8・12・70・240頁と5頁あるが、新版では4・80・269頁と減っていることである。改版の240頁に当たるのは奥付の前でここに折込地図がある。この折込地図は新版では奥付の裏、角川源義「角川文庫発刊に際して」と裏表紙見返しの間にある。記載内容は同じだが書き直されている。なお、改版では子持ち枠で枠外右上に縦書きで「遠野郷本書関係略図」と教科書体の斜体で入り、新版では単郭で左上に横書きで「遠野郷本書関係略図」と明朝体の太字で入る。新版の奥付は271頁に当たる。270頁に当たる頁に(編集部)の「不適切な語句や表現」についての3行の断り書。
 岩波文庫の改版で注意しておいた「遠野物語」の間取り図について。改版では46頁と48頁に全頁、47頁4〜14行の上部20字分の合計3図ある。新版では49・51頁と50頁右上(10行×19字)にあり、全く同じ図で縮小なども行われていないようである。ただ、新版49頁図の右上に「4」のような方位を示す記号が入っているのは、改版にはない追加である*1
 本文の比較はしていない。ただ、改版「遠野物語拾遺」の「題目」73頁14行め「前兆」に「しるなし」とルビがある。もちろんこんな言葉はないので、下に挙がっている話のうち一四五一四六二六六話の本文にあるように「シルマシ」が正しい。ところがこの「しるなし」新版78頁1行めにそのまま引き継がれ、これは新版二十一版でも同じなのである。こういった辺りから推して(いいのか?)本文には手を入れていないらしい。

*1:新潮文庫岩波文庫にもない