瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

美内すずえ『ガラスの仮面』(37)

・単行本第18巻113頁文庫版第11巻143頁)1コマめ、ト書きに見える「ジェノバ大使とロレンツオの君」は、単行本第18巻112頁文庫版第11巻142頁)7コマめのビアンカ(マヤ)の台詞「ジェノバからロレンツオさまのお姉さまと大使どのがやってこられる…」からして、「ジェノバ大使とロレンツォの君」とあるべきである。名前は「ルチア姫」。――それにしても、この単行本第18巻113頁文庫版第11巻143頁ビアンカが「2重の罠」に嵌められる場面、2コマめのト書き「ビアンカは薬を飲まされ体の自由がきかなくなっていたのだ」といった辺りは、マヤが現実に嵌められた罠に重なり過ぎていないか。
・単行本第18巻134頁文庫版第11巻164頁)5コマめ、「女海賊ビアンカ」終演後、月影先生は青木麗と水無月さやか(ともに「劇団つきかげ」団員)にマヤについてコメントする。4コマめから始まっているのだが省略。

月影先生:「あれだけの動きとセリフ…/演技の間は平静を装っていたけれど体の中は汗びっしょりだったはずだわ/観客に舞台裏はのぞかせられない/役者自身もね/今頃はぶっ倒れているはずよ」


 「体の中」は変だろう。「衣装の中」とかでないと。
・単行本第18巻143頁6コマめ、マヤは「好評だったんですとて」と古語みたいに喋っているが、文庫版第11巻173頁では「好評だったんですとても」に修正されている。
・単行本第18巻136頁文庫版第11巻166頁)1コマめでは「修行場」のルビ「しゅぎょうば」だったが、単行本第18巻147頁文庫版第11巻177頁)4コマめでは「しゅぎょうじょう」となっている。
・単行本第18巻148頁5コマめ、

月影先生:「わたしがなぜここへはいったか…!/なぜあなたやみんなから離れたか…/まだわかっていないようね マヤ……」

とある。これは別に問題ないのだが、同じコマが文庫版第11巻178頁では、

月影先生:「わたしがなぜここへはいったかか…!/なぜあなたやみんなから離れたか…/まだわかっていないようね マヤ……」


 すなわち、最初の吹き出しが「わたしがなぜ/ここへはいった/か…!」となっていて、なぜか2行めの下に「か」を追加して、衍字にしてしまっている。これなども、昨日(前回)単行本第18巻63頁文庫版第11巻93頁)3コマめについて指摘した、文庫版が単行本を改悪しているケースである。理由の推測も出来ないこともない。昨日は単行本の改変意図を理解出来ずに、機械的に初出時に戻したのだろう、との思い付きを述べたのだが、こうなって来ると、考えがあって変えたのではなく、単行本での改訂に気付かず、誤りが残ったままの生原稿をそのまま使ったのではないか、と考えられそうだ*1。文庫版が単行本の使い回しでないことは、同じ頁の横幅が(原寸では単行本の方が長いが)縮尺の違いを考慮に入れると文庫版の方が広い(頁は小さいが収録されている絵の範囲は単行本より広い)ことからも、明らかなのだが。
 だとすると《単行本からの改悪》ではないな。正誤情報が文庫版化に当たって共有されていなかったため、ということになろう。だから「こんなの突っ込んでどうすんだ?」と言われかねない詰まらん間違いでも、こうしてブログに示して、参考に供して置きたいのだ。

*1:単行本第18巻143頁文庫版第11巻173頁)6コマめのような、文庫版で正されているところは、単行本が初出誌の誤りを訂正し損ね、文庫版化に際しての校正で訂正されたところと思われる。