瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山本禾太郎『抱茗荷の説』(2)

 昨日の続き。
 本書はかくまでに稀覯本で、ネット上に書影はもちろん、実見しての記事も見当たらないのです*1
 探偵小説マニアの探索に関しては、ミステリー情報のサイト「小林文庫」の掲示「小林文庫の新ゲストブック/過去ログ 2001年01月01日〜2001年06月30日」に、次のようなやりとりがありました。
 まず、小林文庫オーナーの「No.134 (2001/02/13 01:50) title:重ねて、ご協力のお願い」の最後に「リストを入力していて、疑問に思ったことを何点か…」として4項目挙げるうちの3項め、

 ・ 熊谷書房版『抱茗荷の説』山本禾太郎、『蔦の家殺人事件』矢作京一は、本当に出版されているのですか?
   中島河太郎さんの蔵書なら、ミステリー文学資料館をチェックすれば良いのでしょうが…

とあります。文中のリストとは「熊谷市郎氏関係 出版物リスト」です。これに対して日下三蔵(1968.2.21生)が「No.158 (2001/02/16 19:41) title:お礼とお詫び」と題する書込みの中で、

> 小林文庫オーナーさま
 
>熊谷書房版『抱茗荷の説』山本禾太郎、『蔦の家殺人事件』
>矢作京一は、本当に出版されているのですか?
 
これはどちらも出ているはずです。前者は、数ヶ月前に入手/したのですが、もう出てこない(泣)出てきたら、奥付など/書き込ませていただきます。

と応じました。しかし結局「出てこな」かったらしく、リストの最終版「熊谷市郎氏関係 出版物リスト(2003年08月24日更新)」でも、「熊谷書房(戦後)」のところに「抱茗荷の説|山本禾太郎|〔昭和〕21〔年〕|B6 94頁」とあって、判型と頁数は明示されていますが、「発行者/発行所/装幀」は空欄になっています。「発行日(昭和)」欄に月日の記載もなく「注記/確認(情報提供)」欄には「中島河太郎編 「日本探偵小説著書目録」/『探偵小説の饗宴』山下武著('90年青弓社)P186に書影あり」とあって、結局、奥付に関する情報提供はなされないまま終ったようです。
 さらに桜の書込み「No.161 (2001/02/17 12:08) title:古書目録にありました」に、

 平成八年(1996)五月の「古書目録 芳林文庫古書目録 探偵趣味」3号/には、p34を見ますと
 
1231 『抱茗荷の説』 熊谷書房 山本禾太郎  昭和21 18,000
1237 『蔦の家殺人事件』 熊谷書房 矢作京一 昭和22  5,000
 
後者は、もう一度、その年の十二月の、4号にでています(p56)。

とあって、平成8年(1996)に誰かが購入しているのですが、その後、この本について所蔵者から何らかの情報が公開されることはなかったようです。
 山下武(1926.4.3〜2009.6.13)の蔵書は2013年4月24日付「山下武『20世紀日本怪異文学誌』(14)」に触れたように散逸したようです。明治古典会の目録に出ているでしょうか。時期的に見て平成12年(2000)頃に日下氏の入手したものはこれらとは別でしょうから、平成に入ってから古書籍商に3度*2は出たことになります。そしてどこか愛書家の筐底に大切に保管されているのでしょう。(以下続稿)

*1:10月3日追記Twitterに存在していた。10月3日付(08)に引用します。

*2:草稿では「3冊」としていたのですが、平成8年(1996)に古書店目録に出たものと日下氏が入手したものが同じだった可能性もあるので「3度」にしました。さらに云えば、山下氏の蔵書が市場に出たのかどうか、出たとして時期は没後なのかどうか。死ぬまで蔵書を全く処分しなかったのか、何らかの事情――まとまった金が必要になったことで、用済みの本を処分しないといけなくなる蔵書家も少なくはないのです。ですから、確証がない限り断言は出来ません。ここでは1つの説として「3度」として置きます。