Googleのガバナンス

梅田望夫さんのエントリーで面白いのがあった。

私が面白いと思ったのはこの部分である。

もっとはっきり書けば、こういうことだ。「圧倒的にすぐれた俺達に任せて、何もわからんお前たちは黙ってろ、株を10年持ち続けていれば絶対に儲けさせてやるから、短期で株が下がってもガタガタ言うな」というのが、Googleの株主に対する姿勢である。姿勢だけならばまだよいのだが、その姿勢を、「創業者が一般株主と違う種類の株式を持つ(議決権が10倍)」ということで制度化・固定化してしまったところに大問題がある、と僕は相変わらず考えている。

私の立場を先に述べると、「大問題」はないと思う。むしろ「大歓迎」である。

なぜか。

それを述べる前に少し整理する必要がある。特に梅田さんの立場だ。

  1. 梅田さんは歴史における経路依存が非常に大きな要因になっていると考えているか
  2. 1が「非常に大きな要因になっている」という場合、現在アメリカのネットビジネスで進んでいるシナリオを梅田さんが好ましいと考えているか

を知る必要が実はある。

私は、経路依存というものが歴史に大きく影響すると考える立場で、現在日本のネットビジネスで進んでいるシナリオを好ましいと考えていない立場である。アメリカのことはよくわからないが、Googleがこのようなガバナンスを敷いたことから、日本と同様であるのだろうと考えている。ただしここの推論が甘いのかもしれない。

日本のネットビジネスにおける経路依存の分岐点は2つあった。一つは広告モデルによってユーザーが、PCクライアントではお金を払わないということが常識化したこと。もう一つはネットバブルが00年4月にはじけたおかげで、それまでに資金調達(IPO)した企業とそうでない企業との間にものすごい資金的な格差がついてしまったことだ。

一つ目については、GoogleAdsenseというとんでもなく洗練された仕組みを考えてくれたおかげで、少し状況が変わってきた。でも2つ目は難しい。あがってしまった経営者たちにはもはやビジョンはなく、お金で面白いつまりアクセスの多いサイトを買っている。これはまだ結論は出ていないが、やがて資本の力でこれらの面白いサイトの面白さが消されるのかもしれない。

この2つ目のポイントを考えると、「短期的なキャピタルゲインを狙う奴らは黙っていろ」というGoogleのやり方は実に私には正しく見えてくるのだ。

もちろん、ここには私のイデオロギーがある。情報の価値というものの一つのあり方をGoogleというせっかくビジョンと戦略と人材とオペレーションが揃った企業が出てきたのだから、是非とも彼らにもっと顕在化させて欲しいというわけだ。ただ実はGoogleのビジョンというのは見せかけのビジョンなのかもしれない。それも私には実はわからない。

私の見立てだと、梅田さんは1の答えは「非常に大きな要因になっている」と認識しており、2は「どうとも思わない」というものだと思う。彼はなんていっても私以上に観察者だから。ということを推測するに、Google Fundみたいなやりかた、あるいは社債というやり方を本来選択するべきで、ガバナンスのあり方で問題を解決するのはおかしいというのが梅田さんの本心なのかもしれない。

次回お会いすることがあったら話してみたいポイントである。